2014年から2017年にかけて講談社の漫画雑誌「イブニング」において連載された、「いぬやしき」。
2017年にはアニメ化され、2018年には豪華キャスト陣とともに実写映画にもなっており、劇場で公開されました。
そんな人気作品ともいえる「いぬやしき」ですが、どんな結末を迎えたか覚えていますでしょうか。
続編がありそうな終わり方だったでしょうか。
また、物語の冒頭で登場する謎の「宇宙人」は、なんだったのでしょうか。
今回は、「いぬやしき」のストーリーを超カンタンにふりかえりながら、続編の有無、結末の賛否についてじっくり見ていきましょう。
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「いぬやしき」最終回までのお話をサクッとおさらい!
ここから最終話までのネタバレを含みます。まだ結末をご存じない方は、自己責任でお願いいたします。
衝撃的な幕切れとともに、スタートした「いぬやしき」。
人間と人間の間で様々な交流、衝突が描かれ、その中で紆余曲折ありながら、ストーリーは結末へと向かっていきました。
あの日を境に…簡潔にあらすじまとめ!
58歳で現役サラリーマンながらも、疲れ切った老人のような冴えない主人公・犬屋敷壱郎(いぬやしき いちろう)は、会社でも家庭でも冷たい扱いを受け、やっとの思いで購入した一軒家も家族からは喜んでもらえず、そこへさらに追い打ちをかけるように、胃ガンであることを診断されます。
いつ打ち明ければいいのだろう、打ち明けても、家族は悲しんでくれるのか?
途方に暮れる壱郎でしたが、飼い犬のはな子を散歩に連れて行っている時、大きなターニングポイントを迎えます。
ちょうどその場に居合わせた高校生・獅子神晧(ししがみ ひろ)とともに、宇宙人が起こした事故に巻き込まれ、一時は死亡してしまいます。
宇宙人は事故の隠蔽のために、地球をはるかに上回るテクノロジーを用いて、生前の見た目と心に加え、攻撃能力や治癒能力、飛行機能などの多様な機能を含む兵器ユニットを有した、「機械の体」で二人を復活させます。
こうして、二人は今までと全く異なる人生を歩み始めるのでした。
ぶつかり合う「存在意義」!壱郎と晧の衝突!!
機械の体となった壱郎は、日常生活の中でその体がもう自分のものではないこと、本当の犬屋敷壱郎は、もう死んでしまったということを悟ります。
何のために生きているのか?
分からなくなった壱郎はまたしても途方にくれますが、少年たちからリンチを受けるホームレスを、自身の有した攻撃機構を用いて救助し、助けてくれてありがとう、と感謝されます。
これをきっかけとして、壱郎は「これこそが自分の存在意義だ」と気づき、人助けに存在意義を見出すようになります。
壱郎と同じく機械の体に生まれ変わった晧も自身の変化に自覚し、その体の有している能力を有して、いじめを受け塞ぎ込んでいた幼馴染・安堂直行(あんどう なおゆき)が学校へ行きやすくなるよう動いていました。
しかし、晧が存在意義を見出していたのは、人助けではありませんでした。
晧は家族、友人には優しく接する好青年ですが、それ以外の人間には全く関心をもたない、ゲームのキャラクター程度にしか考えていないという、極端な二面性を持っていました。
そんな晧は、駅のホームで飛び込み自殺をする光景を目撃し、他者が死んだときや苦しむ姿を見れば、機械の自分でも生を実感できる、と気づいてしまいます。
機械になってしまった体で「生」を実感するため、日々民家に押し入っては無差別殺人を繰り返すようになります。
やがて彼の犯罪行為が世間に明るみに出て、逃亡することとなりますが、いじめられる直行を助ける晧の姿を見て、晧にひそかに思いを寄せていたクラスメイト・渡辺しおん(わたなべ しおん)に匿われることになります。
しおんの説得により晧は改心し、自身の能力を人助けのために使うようになります。
しかし、大量殺人の罪を犯した晧を捕らえるため、特殊部隊SATが晧としおんの家を特定・突入を開始し、彼女と彼女の祖母も巻き込まれてしまいます。
これをきっかけとして、晧は日本で大量殺戮を行うと宣言します。
壱郎は直行の協力を得ながら、虐殺を始めた晧を止めるべく、同じ機械の体を持つ者同士、ついに対峙します。
都内上空にて、二人は互いの有した能力を激しくぶつけ合いますが、やがて晧のエネルギー切れの隙をついて、壱郎はこの戦いに勝利し、すぐさま娘の犬屋敷麻理(いぬやしき まり)を含む、事故に巻き込まれた人々を救出。
彼が大勢の人々を救う姿はインターネットで拡散され、日本中に知れ渡ります。
翌朝、壱郎は自宅に帰って「本当の自分は死んで、今ある機械の体は偽物なのかもしれない」と打ち明けます。
しかし家族はそのことを受け入れ、その温かい言葉に壱郎は涙ながらに喜びます。
こうして壱郎は幸せな生活を送るようになります。
しかし、そんな日々も長くは続きませんでした。
誰が為に…衝撃の結末!!
幸せな日々を送る壱郎とその家族でしたが、以前から危ぶまれていた巨大隕石が地球に衝突する、というニュースが報道されます。
自身の力を使ってなんとかしてこの危機を防ぎたいと考えた壱郎は、必死に引き留める家族や直行のことを諭し、隕石に向かって飛び立ちます。
宇宙空間までたどり着いた壱郎は、兵器ユニットを活用して様々な攻撃を試みますが、隕石はあまりにも大きく、破壊どころかその軌道を修正することすらできません。
そんな壱郎のもとへ、かつて対峙ししのぎを削った晧が現れます。
晧は先の事件により親友だった直行に拒絶され、しおんに会うこともかなわず孤独になっていました。
しかしそれでも、晧は自分にも死んでほしくない人がいるといい、ともに隕石に立ち向かいます。
晧は隕石の軌道を変えることができる唯一の作戦を、壱郎に伝えます。
それは、晧が自身の目にある自爆スイッチを使い自爆することで軌道を変えるというものでした。
直行としおんのことを思いながら晧は自爆攻撃を行います。
しかし、彼の命を賭した攻撃でさえ、隕石を完全に破壊することはできなかったのです。
それどころか、中途半端に破壊してしまったためさらに隕石が生まれてしまいます。
地球にいるみんなを救う方法は、もう一つしかありません。
壱郎は涙ながらに覚悟を決め、家族の姿を走馬灯に見ながら、自爆しました。
地球の夜空を彼らの最後の光が照らしました。
この閃光の意味は、壱郎の家族と直行しか知らないまま、地球には「もとどおりの日常」が戻るのでした。
以上が、「いぬやしき」の大まかなストーリーになります。
いかがだったでしょうか。
本当はもっと語るべきシーンが山ほどあるのですが、本題はここからなので割愛。
それではここからは、この終わり方についての意見や未回収伏線について見ていきましょう。
漫画アニメ映画「いぬやしき」結末はひどい?賛否両論?宇宙人の正体は?
感動的ともいえるエンドを迎えた「いぬやしき」ですが、その終わり方に納得いっていない読者の方もいるようです。
わざわざ二人とも自爆して死なせる必要あった??
「隕石破壊するシーン、おじいちゃんの方は生き残って、晧の思いを継ぎながら生きてくっていうルートでもよかったと思う」
「なんか思ったよりベタな終わり方やなあ」
ネット上にはこんな感じの意見が寄せられていました。
最終的には報われなかった壱郎のことを憐れむ方や、隕石についての伏線が出てきた7巻あたりから、物語の結末が予想できてしまった方もいたようですね。
いわれてみれば、できる限りの善行をつくし、文字通り聖人だった壱郎のことを思うと、もう少し家族と一緒にいさせてあげてほしかったなとは思ってしまいます。
納得いかん!という声も確かにありますが、ここまで登場人物に感情移入してしまうのも。この作品の良さなんじゃないでしょうか。
終わり方もベタなオチとは言われますが、後味も悪くなくとてもスッキリした感動的なラストで個人的にはとてもいいなと思います。
未回収の伏線?宇宙人は結局何者??
「いぬやしき」の物語の発端となる事故を起こした宇宙人。
第1話で地球に飛来してきて以降、作中で彼らについて語られることはありませんでした。
物語終盤で隕石の接近が報じられたあたりから宇宙要素が出てきたので、やっとあの宇宙人がでてくるのか?と思いましたが、結局正体は判明せず。
彼らの存在が物語に大きく関与してくるのでは、と考察されている方も多かったようで、そういった方たちにはちょっと肩透かしをくらったというところもあったかもしれません。
宇宙人について確かなことは、
- 人間とは比較にならないほど小さなサイズであること
- 地球を大きく上回る科学力を有していること
- 壱郎と晧に装備させた兵器ユニットは、星を滅ぼすことができるレベルのものであること
- 地球に落下してしまったことは何とか隠蔽したかったこと
これくらいでしょうか。
1話のみの登場なのでいかんせん情報が少なく、考察のしようがありませんね…。
ひとつネットの記事で面白い考察を見つけたのですが、晧が地球で暴れまわっているという情報を聞きつけ、宇宙人たちが隕石を向かわせるよう仕向けたのかもしれないという説もあるようです。
わずか一夜であれほどまでの装備を完成させてしまう科学力ですから、隕石の軌道を操作することもできたのかもしれません。
この宇宙人に関しては特段掘り下げられることもなく完結してしまったので少し謎が残りますが、逆に考察がはかどってさらに楽しめます!
戻る日常!「いぬやしき」最終回深掘り考察!
晧と壱郎、二人の犠牲によって地球は壊滅の危機を回避しました。
しかし彼らの勇姿を世間の人々が知るはずもなく、いつもの日常が戻ります。
壱郎の息子・犬屋敷剛史(いぬやしき たけし)は、父以上に内向的な性格で、中学校で不良グループからカツアゲされるという日々を送っていました。
そんな彼も、父の最期の姿を見て勇気をもらい、グループのメンバーに反撃。
なんと彼は勝利し、空の向こうにいる父に向かってその勇姿を示しました。
そして漫画家を志すも悪戦苦闘する高校生の娘・麻理も、有名漫画雑誌の大賞に選ばれ、母のもとへ駆け寄っていくシーンがあります。
ここ、個人的にすごくいいシーンだなと思います。
今回のあらすじ内ではあまり息子や娘について触れることができませんでしたが、彼らの感情の移り変わりも見逃せないポイントです。
物語序盤で、娘の真理は父である壱郎に対し冷たい態度で接しており、壱郎がやっとの思いで建てた一軒家をみても、隣の豪邸と比較してあからさまに落ち込むという振る舞いを見せていました。
反抗期なのでしょうがないともとれるのですが、さすがに壱郎が可哀そうだなあと思ってしまいます。
また、息子の剛史においても、友達と下校中に一人で牛丼屋で食事をする壱郎の姿を見た際に、友達から「ああいう親父って何が楽しくて生きてるんだろう」と言われショックを受けるシーンがあります。
友人からそんな風に思われていると知ったら、当然、父に対しての尊敬の念とかはなくなってしまっていたでしょう。
そんな二人でしたが、壱郎が自身の力を活用して人々を救う姿、そして命を賭して地球を守った姿に、勇気づけられます。
彼の死、彼の勇気ある決断が、真理と剛史の生きる道に光を与えたといっていいでしょう。
子どもたちに父としての背中を見せ、進むべき道を示した壱郎の姿は、家族との関係に重点を置いたこの作品の最終回にふさわしいといえるでしょう。
「いぬやしき」続編は?漫画・アニメと映画で終わり方が違う!?
佐藤健、ダークヒーロー役で新たな一面『いぬやしき』 #いぬやしき #木梨憲武 #佐藤健 @inuyashiki_m https://t.co/9F83WVILt9
— シネマトゥデイ (@cinematoday) April 21, 2018
記事の冒頭で紹介したように、本作は2017年にアニメ化、2018年には豪華キャスト陣とともに実写映画化もされ劇場公開されました。
本来であれば、漫画・アニメ・映画の三作品とも同じ結末をたどるのが定石だと思いますが、「いぬやしき」はちょっとだけ違います。
「漫画・アニメ」の結末と、「映画」のあらすじが少し異なるのです。
映画版未視聴の方は、???となるでしょう。
ではどんなところが違うのか見ていき、そこから続編の有無について考察していきます。
映画版では、隕石が接近してきてピンチ!のシーンがなく、壱郎と晧の対決をラストに持ってきています。
娘の真理を守りながらの戦いに苦戦するも、壱郎は晧の体を突き破り戦いに勝利、何者かによって大量殺人鬼の晧は死亡したと報道され、今まで通りの日常がもどるのでした。
おそらく、最も熱いともいえるこのシーンをメインに持っていきたかったのでしょう。
実際、戦闘における演出はすごい迫力で見ごたえ抜群。
そして、映画のエンディング中に差し込まれたシーンに、こんな場面があります。
右半身を損傷した晧が、漫画雑誌を持って直行の部屋を訪れるのです。
晧は直行に「こわいか?」と聞きます。
対して直行は「こわいけどうれしい」「晧、生きてたんだね」と返します。
そんな直行を見て、晧は「お前は変わらないな」と一言。
「だって友達だろ」と直行は返し、その頬に涙が流れます。
涙をぬぐい、一緒に新しいゲームをやろうかと直行が準備を進めていると、もう晧の姿はなくなっていたのでした。
たとえ罪を犯しても、彼らの友情が消えることはないということが伝わる、素晴らしいエンドだと思います。
戦いの後に晧が直行の部屋を訪れるシーンは原作にもありますが、その時の直行は集団殺戮を行った晧のことを拒絶し、それ以来疎遠となっていました。
映画版でわざわざ違うルートをとったのは、尺などの都合もあるでしょうが、直行が晧のことを受け入れてあげたことで晧が改心しハッピーエンド、というマルチエンディング、パラレルワールド的な要素を入れたかったのかもしれません。
いかがだったでしょうか。
このエンドを見たファンの方の中では、原作とは異なるルートをたどっているので全く異なる続編があるんじゃないか、という意見が見られます。
冒頭の宇宙人が再来し、改心した晧と壱郎の共闘、とかもみられたかもしれませんね。
しかし、あくまで私の完全な独断になりますが、映画で違う終わり方だったからと言って、続編の期待はあまり望めないのではないかなと考えます。
「いぬやしき」は同じ機械の体を持った二人が、生死における価値観の違いから衝突し、それでも互いの守るべきもののために共に戦う、というお話だから、原作のラストも感動的に飾ることができたんじゃないでしょうか。
改心した晧と壱郎が共闘したとしても、そこにはもう「いぬやしき」を語るうえで欠かせない「正義感の対立」がないので、原作のラストを超えるような満足感ある結末を作ることは難しいのではないかと考えます。
壱郎によって平和は保たれ、晧は改心して新たな人生を歩む、という風にきれいに終わっておくほうがいいのではないかなと思います。
どっちにしろ、漫画・アニメのストーリーも、映画オリジナルのストーリーも、どちらも非常に感動的で心震わさせるものだったことは間違いありません。
おわりに
いかがだったでしょうか。
簡単なストーリー振り返りや、映画版ラストの解説、続編考察を通して、改めて「いぬやしき」の良さ、面白さが再確認できたのではないでしょうか。
単行本巻数は10巻とそこまで長くないので、これを機に一度読み返してみても面白いかもしれませんね。
また、ぜひアニメ版、映画版もチェックしてみてはいかがでしょうか。
単純明快で、かつ感動的なラストで締めくくった「いぬやしき」。
奥浩哉先生の次作に期待です。