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次に『ヤンジャン』の使い方(システム)を簡単にご説明します。
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私は、1日に読める話数に制限がある方が生活にメリハリがつくので『ヤンジャン』を愛用させてもらっています。
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これから、もっと無料で読める漫画作品が増えると思いますので、今のうちにダウンロードしておくことをオススメします。
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『ここは今から倫理です。』の世間の評価は?
ここは今から倫理です。既刊読んだけど小説ばりの読み応えがあるな…
— せなきー@輝女子 (@SEN4KY) November 2, 2020
『ここは今から倫理です。』読んだ…良かった……よかった…………ほしかった言葉たくさんあって泣いてしまった………レンタルで読んじゃったからちゃんと買おう………
— たまこぼし (@tamako_boshi) November 2, 2020
『ここは今から倫理です。』読んでたらこの時間になっちった
最近こういう哲学とか倫理ものにすごく惹かれてしまう…!! pic.twitter.com/LZUSfN3MJQ— くら氏 (@kurac_0415) November 1, 2020
ここは今から倫理です。
試し読みしてボロ泣きしてしまって…
急いで本屋へ買いに行きました。最近涙腺弱いんですけど…
涙で続きが読めません pic.twitter.com/h54B9YXVE0— シエテ (@_siete_7) November 1, 2020
『ここは今から倫理です』が最高すぎるまっっっじで最高。2月から買おうか迷ってたんだけど、好きすぎる…2巻で、先生ほんと真剣で好きになるわ
— トランジスタ (@Transistor503) November 1, 2020
「ここは今から倫理です。」面白くてぶっ通しで全部読んじゃった
— いば (@yaiva0818_eater) November 1, 2020
ここは今から倫理です
いやこれマジで面白いぞ。
— つかさ (@tukasa0225) November 1, 2020
ヤンジャンのアプリで”ここは今から倫理です。”読んだ、何これクソおもしれえじゃん。すきだわ
ドラマとかなったらおもしろそーって思ったらもう決定しとんや🙂実写がゴミにならないことを祈る— げぼ (@Thank_you__SEX) June 11, 2020
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『ここは今から倫理です。』の見どころ紹介!
~見どころ~その① そもそも倫理ってなに?
あなたは倫理と聞いて、どんなことを思い浮かべますか?
「なんか高校の時、選択授業であった気がする」
「聞いたことはあるけど、何するのかよくわかんない」といったように、そもそもよく知らないという人もいるでしょうし、「哲学をやるんでしょ? ニーチェとか、ソクラテスとか」「道徳みたいな感じだよね。生き方を考えたりするやつ」という感じで、ちょっとは知ってるよ、という人もいると思います。
倫理というのは簡単に言ってしまうと、哲学や宗教なんかを扱う学問です。
『良い生き方とは何か』『いのちとは何か』『幸せとは何か』
本作のメインキャラである高柳先生も言っているとおり、倫理は学ばなくても困ることはありません。
けれど、自分がひとりぼっちの時、息苦しさを感じた時、自分の居場所がわからない時。
そんな時に、倫理が寄り添ってくれることがあるんです。
信じられるものがなくなった時、人は宗教に救いを求めました。
他人を妬んでうまく生きられない時、人はよりよい生き方を探しました。
生きる意味がわからない時、人は幸せの正体を考えました。
あなたが壁にぶつかったときも、倫理はそっと、あなたを支えてくれるかもしれません。
「よくわからないけど、なんとなく知っておくのも良いかな」
少しでもそう思えたら、ぜひ『今からここは倫理です。』を読んでみてください。
心の中につっかえていたモヤモヤが、すっきりするかもしれません。
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~見どころ~その② あなたもきっと心当たりがある? 思春期の悩み
『ここは今から倫理です。』は、とある高校の、倫理の授業を舞台にした物語です。
倫理の授業を受ける登場人物たちは、みんな何か悩みを抱えています。
恋愛の悩み。勉強の悩み。友達の悩み。
高校生というのは多感な時期ですから、色んな悩みを抱えているものです。
そしてそれは、私たちにとっても他人事ではありません。
彼らの悩める思いは、私たちにもどこか心当たりがあるものばかりなのです。
倫理の授業を受けることで、彼らは学び、そして気付いていきます。
悩みを完全に解消することはできなくても、前を向いて、一歩を踏み出していきます。
今この記事を読んでいるあなたには、なにか悩みはありますか?
『ここは今から倫理です。』を読んでみると、いつも景色が少し違って見えてくるかもしれません。
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~見どころ~その③ 高柳先生がカッコいい! 魅力的なキャラたち
ここまではメインテーマである倫理について触れてきましたが、実はこの作品、キャラがとても魅力的なんです!
授業を受けるのは、一癖も二癖もある生徒たち。
だけどそんなみんなが抱えている思いや感情は、どれも共感できるものばかりです。
だからこそ読んでいると、気づいたらのめりこんでいて、まるで自分のことのように感じてしまいます!
そしてそんな生徒たちをまとめているのが、倫理を教える高柳(たかやなぎ)先生。
学校の先生にしてはちょっと珍しいくらい、クールで感情を表に出しません。
授業のときもいつも無表情で、ある生徒には「見下しているような態度」とさえ言われてしまうような性格です。
けれどその実、表現するのが下手なだけで根は優しく、そして熱い心をもっています。
ある生徒が、人生に絶望し、自殺をしようとしたことがありました。
先生はそれを見つけるやいなや、血相を変えて、その生徒のもとへと駆け出します。
そしてその生徒の心情に寄り添いながら、それでも激しく、叫ぶように説得し、思いとどまらせることに成功したのです。
一見すると無感情なように見えて、けれど実際には慈愛に満ちた、人の感情に寄り添ってくれる先生。
そんなギャップに、思わず先生に惚れてしまうこと間違いなしです!(笑)
そして気になるのが、この先生が見せる微笑み。
生徒たちに向けた優しい微笑みには包まれるような安心感がありますが、いつもどこか寂しそうなのです。
いったい先生はこれまで、どんな人生を送ってきたのでしょうか。
ミステリアスな魅力に、ページを捲る手が止まらなくなること間違いなしです!
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『ここは今から倫理です。』の主要な登場人物紹介!
高柳(たかやなぎ)
倫理と政経の授業を受け持つ、高校の先生。
感情をあまり出さないクールな性格ですが、それとは裏腹に生徒たちには真摯に向き合う先生です。
たまに見せる微笑みはどこか寂しそうで、「私は酷い人間なんです」と自虐するような一面を持っています。
ここからは、そんな高柳先生から倫理を教わっている生徒たちを紹介していきます!
逢沢いち子(あいざわいちこ)
勉強をサボって男友達と遊んでいる、学校の問題児。
2年生の時に空き教室で性行為をしていて、高柳先生にそれを目撃されたことがあります。
高柳先生に恋愛対象として興味を持っており、先生に近付くために倫理を履修しました。
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酒井美由紀(さかいみゆき)
勉強家、読書家で、学校トップクラスの成績を誇る優等生。
中学の時には3年かけて図書室の本を全て読んだこともあり、豊富な知識を持っています。
しかしそれゆえに周りの同級生や両親が何も知らないように思え、見下している節があります。
倫理の授業がどんなものなのは知らなかったので、それを知るために倫理を履修しました。
八木まりあ(やぎまりあ)
能天気な性格の女生徒で、選択授業では体育の抽選に漏れてしまったため、倫理を履修することになりました。
1ヶ月前に初めての彼氏ができて、恋愛経験が豊富な美由紀を「ししょー」と呼び慕っています。
しかしある日、その彼氏とその友達に薬を飲まされてレイプされ、自殺未遂を起こしました。
谷口恭一(たにぐちきょういち)
丸いメガネをかけた、地味な容姿の男子生徒。
小中学校時代にいじめられていた過去があり、その経験から「将来はいじめっこを救える先生になる」ことを夢見ています。
その手本となる「いい先生」を探していて、高柳先生こそがその「いい先生」かもしれないと、先生に憧れを抱いています。
本田奈津子(ほんだなつこ)
大人しく心優しい性格で、クラスでは目立たない女生徒。
倫理の授業では熱心な一面を見せ、誰よりも真面目に授業を受けています。
そんな彼女はある日、奈津子の「宝物」を無碍に扱われたことから、教室で暴力事件を起こしてしまいます。
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間幸喜(はざまこうき)
毎日男友達と夜遊びに出かけている、不良生徒。
睡眠不足から倫理の授業中はいつも寝ており、高柳先生によく思われていない。
なににも縛られることのない今の生活に、どこか不安を抱いている。
深川時代(ふかがわときよ)
長い黒髪と鋭い目つきが特徴的で、自分をSだと称する女生徒。
先生を弄び、絶望に歪んだ顔を見るイタズラをしており、高柳先生にもセクハラの罪を着せようとしたことがあります。
しかしそれが失敗したことを根に持っており、現在は松田という他の先生を標的にしています。
都幾川幸人(ときがわゆきと)
前髪を目の下まで伸ばした、そばかすが特徴的な男子生徒。
家庭環境から、他人との心の距離感がうまくつかめない愛着障害を持っており、クラスにはうまく馴染めていません。
しかし高柳先生には好意的で、心を開いています。
山野亮太(やまのりょうた)
自分のことを、なんの特徴もない「普通の人間」と思う男子生徒。
クラスメイトの幸喜や陸のように目立つ、特別な存在に憧れています。
自分はいったい何者で、どうしたら特別になれるのかという悩みを抱えています。
安村麻友(やすむらまゆ)
引っ込み思案で、友達が少ない地味な女生徒。
せめてネットの世界ではキラキラと輝いていたくて、SNSに露出度の高い自撮りを投稿しています。
SNSが中毒気味になっており、授業中にスマホをいじっているところを高柳先生に咎められたことがあります。
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『ここは今から倫理です。』序盤ネタバレ紹介!
第1話 知らない事
休み時間の、空き教室。
高校2年の逢沢いち子は、そこで男子生徒と淫らな行為をしていました。
ふだんは授業を受ける教室での、非日常的な行為。
しかしいち子にとってそれは、日常からかけ離れたものではありませんでした。
彼女は中学のときも、いまの高校でも、そして学校以外でも。
色んな経験をしてきて、色んなものを見てきたのです。
けれど、そんないち子にもひとつだけ、知らない事がありました。
それは、たまに校舎ですれ違う“あの先生”が担当している教科。
――その瞬間、教室のドアがガラリと開き。
現れたのは、今まさに考えていた“あの先生”でした。
淫らな行為にかまけている2人を見ても、先生は冷静でした。
「悪いこととは言いませんが、時間と場所が悪い」
慌てて教室を飛び出す男子生徒を尻目に、先生は教壇に立ち、いち子を見据えます。
そして、先生は言ったのです。
「ここは今から、倫理です――」
1年後。
いち子は“あの先生”に会うため、選択授業で倫理を履修することにしました。
今日はその、初回の授業。
高柳(たかやなぎ)と名乗った先生は、集まった生徒に話し始めました。
「倫理は、学ばなくても将来困ることはほぼない学問です」
「倫理には数学のような汎用性も、英語のような実用性もなく、その知識が役に立つ仕事はほとんどない」
けれど、と先生は話を続けます。
信じられるものがなくなった時。死が目前に迫った時。人間関係に悩んでいる時。生きている意味がわからなくなった時。そんな、ひとりぼっちの時にこそ人は倫理を求めるのだ、と説明します。
「知らなくてもいいけれど、知っておいたほうがいい気はしませんか」
高柳先生はそう話をまとめると、1回目の倫理の授業を始めたのでした。
授業が終わると、いち子は高柳先生に話しかけます。
「あたし、先生メッチャタイプなんだよね」
いち子はそう言うと、制服をはだけさせ、先生を誘惑します。
しかし先生は、そんないち子を見ても動揺などしません。
「私は教養がある女性がタイプです」と一蹴し、教室を後にしたのでした。
それからいち子は先生に振り向いてもらうべく、勉強に身を入れるようになりました。
放課後は書店に寄って、立ち読みをしてみたり。
これまでサボっていた授業を、マジメに受けてみたり。
そしてこれまでよく遊んでいた不良の男友達とも、関わる機会が少しずつ減っていきました。
しかし男友達は、付き合いが悪くなったいち子のことをよく思わず。
ある日、いち子を空き教室に無理やり連れ込むと、乱暴に身ぐるみを剥がし、犯そうとします。
必死に抵抗したものの、男女の力の差は歴然。
そして一線を越える寸前、そこに現れたのは高柳先生でした。
先生は男子生徒をさとし、なんとか最悪の事態を免れることができました。
傷ついているいち子に、先生は「貴方が倫理の授業を選んでくれてよかった」と言います。
男の先生と女子生徒という立場では、頭をなでてなぐさめることは、セクハラになってしまいます。
けれど倫理とは、『人の心に触れ、自分の心に触れてもらう授業』。
つまり頭をなでることはできなくても、倫理によっていち子の言葉を聞き、いち子の心に触れることができるのです。
その言葉に心を打たれたいち子は、叫ぶように想いを伝えます。
「あたしやっぱせんせが好き! 絶対せんせの事、諦めないから!!」
これまでは授業もろくに出ず、成績が悪かったいち子。
先生がタイプだと言った「教養のある女性」に近づくために、いっぱい勉強をすると誓います。
そんないち子に、先生はマックス・シェーラーという哲学者の言葉を授けます――。
『愛こそ乏しい知識から豊かな知識への架け橋である』
ではまた、倫理の時間に会いましょう。
先生はそう言い残すと、何事もなかったかのように、去っていくのでした。
第2話 くだらない人間
酒井美由紀(さかいみゆき)は、自分が知らないことがあるのが許せない性格の女子生徒です。
彼女は中学の時3年かけて図書室にある本を全て読み、ネットで検索し、大体のことは知っているつもりでした。
けれど倫理という授業が、どんな事を教わるものなのかを知りません。
だから彼女は、選択授業で倫理を取ることに決めたのです。
そんな思いから受けることにした倫理。
いざ受けてみると、美由紀にとって倫理の授業は、不快と言っていいものでした。
というのも、授業を担当する高柳先生の態度が、他人を見下しているように感じられたからです。
より早く生まれて、より多くのことを暗記しているというだけなのに、どうしてあんなに偉そうなのか。
授業終わりに話しかけてきた、八木まりあという能天気な生徒も、美由紀の気分を乱す原因でした。
ろくに勉強もせず、恋愛にかまけているまりあ。
美由紀にとっては、「こんなバカの相手をしているヒマはない」のです。
まりあが入れ込んでいる恋愛だって、これまでにそこそこ経験してきたけれど、くだらないものだった。
ある日、美由紀は高柳先生に直談判しに行くことに決めます。
授業が終わり、職員室へ向かう先生を呼び止めると。
「私たちを見下す態度が不快で、授業が耳に入らない」と直接言い放ちます。
見下していないと否定する先生に、美由紀は言葉を続けます。
「話を聞いているとバカにされてる気分になる」
「子供だからって何も知らない訳じゃない」
そう主張する美由紀に、高柳先生は、ドイツの哲学者ショーペンハウアーの言葉を引用しました。
『誰もが自分の視野の限界を、世界の視野の限界だと思っている』
美由紀の目には、高柳先生が他人を見下しているように映ります。
しかし果たして、世界中の人が同じように感じるでしょうか。
自分が見えている世界が、自分の視野の限界が、同じように、他の人が見ている世界でしょうか。
どこか寂しそうな表情をしながら、高柳先生はそう語りました。
――と、その瞬間。
先生は寂しげな表情から一転、慌てたような青い表情になると、持っていた教科書を美由紀に押し付け。
そして突然、走り出したのです。
何事かと窓の外を見上げる美由紀。
そこにあったのは、屋上にたたずむまりあの姿でした。
まりあは屋上の縁にある高い柵を乗り越えて。
もう何もかもがどうでもいいというような表情で、今にも飛び降りんとしていたのです。
どうして急に、そんなことをしているのか。
私よりずっと幸せそうだったのに。
悩みがなさそうで、彼氏がいて、死ぬ理由なんてないはずなのに。
美由紀には、分かりませんでした。
まりあが飛び降りようとしている理由が。
急いで屋上へ向かうと、まりあは呆けたような表情で話します。
「あたしぃ、レイプされちった」
彼氏が大学のヤリサーに入っていて、部屋に知らない男がいて、怪しい薬を飲まされて。
そして無理やり、まりあは犯されたのです。
それは忘れようと思っても、どうしても忘れられなくて。
もう何もかもが、どうでもよくなって。
生きることも、どうでもよくなって。
「そんなの、死ぬことに比べたらちっちゃい事じゃないか!」
そう主張する美由紀に、高柳先生は声を荒らげます。
「違います!!」
「恋に破れても、家族が死んでも、いじめられても、就職に失敗しても」
「仕事がイヤでも、お金がなくても、人生が退屈でも」
「それがどんな理由でも――命に換(か)わる程重い絶望になるんです!」
沈黙を破るにように口を開いたのは、まりあでした。
「あたし、お嫁さんになりたいの」
でも、レイプをされて汚くなってしまった私にはムリだよね、と続けます。
そんなまりあに、先生は「絶対にお嫁さんになれます」と言い切りました。
まりあが成人を迎えたら、先生が人数を集めて合コンをセッティングする、と言いました。
一見その場には似つかわしくない、けれど真摯に向き合った先生の、誠実な言葉。
そんな先生に心を動かされ、まりあはどうにか、考え直すことができました。
まりあは心配して来てくれた美由紀に、感謝を伝え、抱きつきました。
美由紀にとってもそれは、何にも代えがたい経験。
本を読んで、授業を受けているだけでは、絶対に得られない体験でした。
『なんといっても、最上の証明は経験だ』
先生が引用したそれは、フランシス・ベーコンの言葉。
今はまだ狭い、美由紀たちの視野。
たくさん勉強して、たくさん遊んで、色んな経験をする。
そうすることで、視野がもっと広がっていくでしょう――。
美由紀の手を引いて駆け出し、カラオケに行こうと誘うまりあ。
そんな2人を見送って、先生は言うのでした。
「また倫理の時間に会いましょう」
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第3話 理想の先生
谷口恭一(たにぐちきょういち)は、学校の先生になることを夢見る男子生徒です。
小学校、そして中学校で、恭一はいじめを受けていました。
辛いいじめを受ける中、学校の先生に、そして両親に助けを求めました。
しかし下手な相談をすると、むしろ逆効果。
無駄に大ごとになってしまい、いじめっ子には恨まれ、いじめは悪化する一方でした。
そんな環境で育ってきて、恭一は思ったのです。
「いじめられっこに寄り添える先生になりたい」と。
それからずっと、お手本になるような「いい先生」を探し続けました。
そして高校3年で選択した倫理、その最初の授業。
現れた高柳先生を見て、一目で確認しました。
この先生こそが、探していた「いい先生」であると。
恭一は高柳先生と話がしたくて、社会科準備室を訪れます。
そこにいたのは、タバコを吸っている高柳先生でした。
かつて、タバコを使っていじめられた過去がある恭一。
その嫌な記憶が蘇り、高柳先生のことを、一瞬にして幻滅してしまいました。
「やっぱり僕が理想とする先生はこの世にはいない」
そんなことを考え、開きかけていた心を、また閉ざしてしまいます。
ある日、恭一は、女生徒が空き教室に無理やり連れ込まれる現場を目撃します。
連れ込まれたのは、いっしょに倫理を受けている、逢沢いち子。
恭一が助けを求めたのは、高柳先生でした。
先生は身を呈して、自分が殴られながらもいち子のことを守り。
そして「貴方のおかげで助けられました」と、恭一にお礼を言うのでした。
一度は幻滅したけれど、やっぱり高柳先生は「いい先生」なのかもしれない。
そう思った恭一は、それまで抱えていた想いを、先生に語ります。
これまでいじめられてきたこと。
いじめられっこを救えるような先生になりたいこと。
「じゃあ」と高柳先生は、寂しげな目で恭一を見据えました。
「…じゃあ、私のことも救っていただけますか?」
社会科準備室でタバコを吸っていた高柳先生は、タバコが嫌いな小林先生に、部屋を追い出されてしまった、と言います。
果たして先生は、部屋を追い出されたいじめられっこなのか、それとも強制的に毒を吸わせたいじめっこなのか。
そしてもし後者であるなら、救ってはもらえないのか。
この場合、本当に悪いのはどちらなのでしょうか。
善と悪の価値観なんて、いつだって曖昧なものです。
『善なるものは吾(われ)これを善とし、不善なるものも吾またこれを善とす。徳は善なればなり』
老子が残したその言葉は、善人も悪人も、みな善人である、という意味を持ちます。
いじめっこだって、その特性は元来、等しく善であるのです。
そう思わなければいつか、いじめられっこを助けようとするあまり、いじめっこをいじめることになってしまうかもしれません。
だから貴方には、いじめられっこだけでなく、いじめられっこも救える、そんな「いい先生」になってほしい。
そう言って、先生は職員室へと戻っていったのでした。
恭一にとって高柳先生は、理想の先生ではないけれど。
こんな先生も、いいかもしれない。
そんなことを、恭一は思うのでした。
第4話 よく生きる
本田奈津子(ほんだなつこ)は、大人しい性格の、目立たない女生徒。
そんな彼女はある日、教室のイスを振り下ろし、同級生を殴りつけてしまいます。
その理由は、カバンの中身を床にぶちまけられたから。
おそらくカバンの中に何か宝物が入っていて、それをぶちまけられたからキレてしまったのでしょう。
いったいその宝物とは何なのかと、先生は問いかけます。
しかし奈津子は頑なに口を閉ざし、何も話そうとしませんでした。
数日後、倫理の授業。
奈津子はこの時間を楽しみにしていたというふうに、やる気に満ちた表情で先生に視線を送ります。
今日の授業は、ソクラテスが説いた「アレテー」について。
「アレテー」とは一言で表せば、ある物に備わっている「善さ」のことです。
中でもソクラテスが説いたのは人間の「アレテー」であり、それは人間としての善さ、優秀性。
つまりは、人間としての「徳」と言い換えることができます。
その「徳」とは何かを追い求めたのが、いまの「哲学」というものの原点なのです。
授業が終わると、奈津子は先生に質問をします。
「人間の“善さ”は、結局何ってことになったの?」
善さ。つまりアレテーについては、哲学者によって、様々なことが言われています。
『魂をよりよいものにする事』
『勇気を持ち正直に、魂を傷つけずに生きること』
そして『よく生きること』。
放課後。
母親も同席して、暴力事件の件について、先生と話し合うことになった奈津子。
奈津子に頼まれて、高柳先生もそこに同席することになりました。
カバンの中にある宝物とは、何なのか。
やはり奈津子はそれを教えようとせず、ついには泣き出してしまいます。
お母さんも担任の萩原先生も、絶対に分かってくれないから嫌だ。
しかし高柳先生になら見せてもいい、と奈津子は言いました。
高柳先生と2人きりになって、カバンの中を見せる奈津子。
出てきたのは、かわいらしいウサギの人形でした。
リュウくんと名付けられた、その人形。
奈津子はそのリュウくんに対して、本気の恋をしているのだと語ります。
同級生を殴ったのは、リュウくんを、つまり恋人を床に叩きつけられたからだったのです。
それを聞いて高柳先生は、授業でやったばかりの「アレテー」について、考えます。
倫理学を学び始めてから今まで、ずっと考え続けていたアレテー。
よい生き方とは、何なのか――。
奈津子はこれまで、悪いことを一切してきませんでした。
人をいじめたことも、学校をズル休みしたことも、万引きをしたこともありませんでした。
けれどケンカをしたくなるくらいムカついたことは、数え切れないほどにありました。
それを抑えられていたのは、リュウくんのおかげでした。
嫌なことをリュウくんに話し、そしてリュウくんの声を聞くことで、これまで生きてこられた。
リュウくんのおかげで、辛いことがあっても生きていける。
そう語る奈津子に対して、高柳先生は口を開きます。
「貴方はきっと『アレテー』を手に入れています」と。
先日、始めて人を傷つけてしまったのも、大切なリュウくんを守るためだった。
つまり奈津子は、リュウくんの力を借りて「よく生きている」のかもしれません。
それでは、と先生は席を立つと、奈津子の母親と萩原先生に事情を説明しに向かいます。
先生は奈津子に向かって、ほほ笑みかけました。
「適当なことをいって騙しておくので、口裏合わせよろしくお願いします」
第5話 学校は眠い
間幸喜(はざまこうき)は、授業中いつも寝てばかりいます。
今日の倫理の授業もずっと寝ていた幸喜に、高柳先生は言いました。
「正直不快です。何か起きていられない理由があるのなら教えてください」
そんな先生の言葉に「授業がつまんねーからだよ!」と、幸喜は声を荒らげ、逃げるように教室をあとにしました。
しかし実際には、幸喜が起きていられないのには、別の理由がありました。
授業がつまらないから。6限目で眠いから。
学校が終わって帰っても、深夜まで家に誰もいないから。
そして――毎日、寝る時間がムチャクチャだから。
幸喜は夜な夜な遊び歩いており、十分な睡眠時間が確保できていません。
だからこそ学校で、授業中に起きていられなかったのです。
翌日、その事実を知った先生は、幸喜と話をしに向かいました。
「てめーにゃ関係ねぇ!」と声を荒げる幸喜に、先生はノートの紙片を差し出します。
そこに書かれていたのは、先生の電話番号でした。
「貴方と話したい。1度でいいから電話下さい」
「ただし1回でもイタズラ電話をしたら、もう二度と出ません」
幸喜はそれを奪い取るように受け取ると、ぐしゃぐしゃに丸めて、ポケットに突っ込みます。
そしてその夜、やはり幸喜は外へ遊びに出かけると。
集まった仲間たちと、先生にイタズラ電話をしかけたのです。
けれど幸喜の心には、こんなことをしても何も面白くないという、もやもやした感情が渦巻いていました。
次の夜。
幸喜は遊びに行く気分にはなれず、かといって家にいるのも面白くない。
そんなことを考えて、再び、先生の電話番号が書かれた紙片を取り出します。
そして気付いた時には、「どうせ出ない」と思いながら、先生に電話をかけていたのです。
しかしそんな予想に反し、電話に出た先生。
何で電話をしてしまったのか。話すことなんて何もない。
そんなことを考える幸喜に、先生は「夜遊びじゃなくて、映画でも観ましょうよ」と提案します。
それはもちろん、こんな時間に外へ行って欲しくないから。
そんなの俺の自由だろ、という幸喜に、先生は語りかけます。
「貴方は今、きっと不安なのですね」
そして引用するのは、デンマークの哲学者、キルケゴールの言葉。
『不安は自由のめまいだ』
幸喜には、自由があります。
夜の街を歩くことも、嫌な授業をサボることもできます。
けれど何も引き止めるものがなく、どこまでも行けてしまう自由は、時に不安というめまいを引き起こします。
幸喜は、自由すぎる生活に、どこか不安を感じていたのです。
不安だから、先生に電話をしたのです。
「明日、映画の感想を教えてくださいね」
そんな約束をして電話を終えると、幸喜は外へ遊びには行かず。
提案されたとおりに、映画を見ることにしました。
2時間という、映画に縛られる時間。
それは自由がないけれど、不安もなくて。
ただ純粋に、楽しい時間でした。
そして翌日。
幸喜は、学校の廊下で見かけた高柳先生を呼び止め、言いました。
「ゴメン、昨日途中で寝ちったから、感想明日まで待って」
そんな幸喜に、先生は微笑みかけるのでした。
「はい。それではまた明日」
ヤンジャン!
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