かくかくしかじか全巻無料で一気読みする方法紹介!漫画アプリや電子書籍で最終巻完結までタダ?東村アキコ

おすすめスマホアプリ

 

人気マンガ「かくかくしかじか」を全巻無料で読めるお得な配信サイトを調査しました。

 

昨今、各出版社が漫画アプリに力を入れており、連載中のマンガでも漫画アプリを通して無料で読むことができます。

 

例えば、小学館が運営する漫画アプリ『サンデーうぇぶり』では、サンデー系列で連載中のマンガや過去の名作マンガに至るまで幅広く無料で読むことができます。(←1番オススメの漫画アプリ

サンデーうぇぶり

サンデーうぇぶり

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『サンデーうぇぶり』で無料で読める主な作品一覧
  • 名探偵コナン
  • YAIBA
  • MAJOR(MAJOR2nd)
  • switch(スイッチ)
  • からかい上手の高木さん
  • 銀の匙
  • ドロヘドロ
  • だがしかし
  • 犬夜叉
  • らんま1/2
  • 境界のRINNE
  • 今日から俺は
  • お茶にごす
  • 天使な小生意気
  • 今際の国のアリス
  • 焼きたて!!ジャぱん
  • うえきの法則
  • からくりサーカス
  • 月光条例
  • うしおととら
  • 双亡亭壊すべし
  • マギ
  • 烈火の炎
  • H2
  • タッチ
  • 信長協奏曲
  • 天野めぐみはスキだらけ!
  • くノ一ツバキの胸の内
  • 結界師
  • チ。地球の運動について
  • よふかしのうた
  • 葬送のフリーレン
  • MIX
  • クロスゲーム
  • KATSU
  • ラフ
  • ジャガーン
  • ダンスダンスダンスール
  • 土竜の唄
  • 魔王城でおやすみ
  • アオアシ

などなど…

 

しかし、『かくかくしかじか』に関しては今現在、無料で読める漫画アプリはありません

 

そこで漫画アプリではなく『かくかくしかじか』を配信しているすべての電子書籍を調査すると、1つの電子書籍サービスを使って『かくかくしかじか』を実質無料で全巻読む方法が見つかりました!

 

最終巻まで実質全巻無料で読む方法を解説します。

 

この記事では

・『かくかくしかじか』を今すぐ全巻無料で読みたい

・お得に漫画が読める電子書籍サービスを知りたい

『かくかくしかじか』のあらすじや見どころが知りたい

そんな疑問を持った漫画好きなあなたにオススメです!

 

※ちなみに『かくかくしかじか』の作者・東村アキコさんの美食探偵 明智五郎ハイパーミディ 中島ハルコは、こちらの漫画アプリ『マンガMee』にて全巻無料で読めます!

結論!電子書籍『コミックシーモア』を利用して『かくかくしかじか』を実質全巻無料で読める

『コミックシーモア』には、新規ユーザーに対して2つの超お得な特典を用意しています。

 

それが以下の特典です。

 

特典①は、『コミックシーモア』に無料登録した方、全員に「50%OFFクーポン」を配布しています。

1冊どの漫画でも半額で購入できます。もちろん『かくかくしかじか』の最終刊も半額で購入可能です。

 

50%OFFクーポンだけなら、他の電子書籍も特典として配布しているところが多いですが、『コミックシーモア』の超お得な特典は②の「月額メニュー登録で最大20000ポイントを後日お返し!」です。

 

簡単に説明すると、月額メニューを2ヶ月継続することで1ヶ月分のポイントが全額返ってくるという特典です。

月額メニューとは、毎月定額で『コミックシーモア』内のマンガを購入するために必要なポイントを買うシステムです。

普通に現金で購入するよりお得になるシステムです。

 

作品購入の時には、ポイントと現金の価格が表示されています。

 

「かくかくしかじか」を1巻〜最終5巻まで普通に購入すると・・・3530pt(税込3880円)となります。

 

月額メニューは、月額5500円のコース(コミックシーモア5000)に加入すれば6200ptがもらえて、さらに翌月には特典②により5000ptが返ってきます!

 

使ったはずの3530ptが5000ptになって返還されるので実質全巻無料というわけですね!

 

『かくかくしかじか』を実質全巻無料でお得に読みたい方は、月額メニュー「コミックシーモア5000」がオススメです。

 

筆者は、このシステムを使って、『鬼滅の刃』を実質全巻無料で読みました。

 

新規ユーザー限定の特典ですので、まだ『コミックシーモア』を利用したことない人は、活用することをオススメします。

 

 

特典まとめ

・新規ユーザー限定で漫画1冊50%OFF!

・新規ユーザー限定で月額ポイント全部返還!

 

ちなみに『かくかくしかじか』の作者・東村アキコさんの美食探偵 明智五郎ハイパーミディ 中島ハルコは、こちらの漫画アプリ『マンガMee』にて全巻無料で読めます!

 

マンガMee-人気の少女漫画が読めるマンガアプリ

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その他のお得な電子書籍

筆者も愛用しており、一番のオススメは先ほどご紹介した『コミックシーモア』ですが、その他にもお得に漫画を購入できる電子書籍がありますので表にまとめておきます。

ebookjapan

・国内大手の電子書籍サービスで安心

・新規のユーザー限定で6冊まで50%OFF

・約1万冊の漫画が無料公開されている(読み放題)

まんが王国

・国内大手の電子書籍サービスで安心

最大50%のポイント還元

Amebaマンガ

・大企業サイバーエージェントが運営しているので安心

・無料会員登録で500ポイント(500円相当)付与

・新規のユーザー限定で100冊まで50%OFF

コミック・jp

・無料会員登録で漫画2冊分のポイント付与

 

個人的に上記4つのサイトはどれもオススメですが、特に『ebookjapan』は使いやすく、無料作品が豊富、さらに新規ユーザー限定でお好きな漫画(新作を含む)が6冊まで50%OFFですので、『コミックシーモア』と併せてよく活用しています。

 

お得に漫画を読むなら『コミックシーモア』と『ebookjapan』は必須の電子書籍サービスとなっています。

オススメ漫画アプリ

上記で紹介した『サンデーうぇぶり』以外にも集英社が運営する漫画アプリヤンジャンマンガMeeも特にオススメです。

ヤンジャン!

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マンガMee-人気の少女漫画が読めるマンガアプリ

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以下のような有名作品が随時、更新され無料で読むことができます。

 

『ヤンジャン』で無料で読める主な作品一覧
  • 東京グール:re(東京喰種:re)
  • キングダム
  • GANTZ
  • BUNGOーブンゴー
  • DINER ダイナー
  • 高校鉄拳伝タフ
  • TOUGH-タフー
  • かぐや様は告らせたい
  • テラフォーマーズ
  • リクドウ
  • 久保さんは僕を許さない
  • TIEMPO-ティエンポー
  • 干物妹!うまるちゃん
  • サラリーマン金太郎
  • 息子がかわいくて仕方がない魔族の母親
  • 群青戦記
  • 元ヤン
  • ハチワンダイバー
  • ウマ娘-シンデレラグレイ-
  • LIAR GAME
  • 地獄先生ぬ~べ~
  • ゴールデンカムイ
  • 推しの子
  • 九龍ジェネリックロマンス
  • ジョジョの奇妙な冒険
  • 少年のアビス
  • 明日ちゃんのセーラー服
  • シャドーハウス
  • ラジエーションハウス

などなど…

 

『マンガMee』で無料で読める主な作品一覧
  • この音とまれ!
  • 悪魔とラブソング
  • 美食探偵 明智五郎
  • ダメな私に恋してください
  • 雛鳥のワルツ
  • 虹色デイズ
  • 高校デビュー
  • ごくせん
  • ストロボエッジ
  • アオハライド
  • NANA
  • 青空エール
  • 素敵な彼氏
  • デカワンコ
  • G線上のあなたと私
  • センセイ君主
  • シュガーズ
  • 僕に花のメランコリー
  • ひるなかの流星
  • メイちゃんの執事
  • 初×婚(ういこん)
  • ハニーレモンソーダ

などなど…

 

「無料でマンガを楽しみたい!」という方は使ってみてはいかがでしょうか?

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マンガMee-人気の少女漫画が読めるマンガアプリ

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こちらの記事では、特にオススメする漫画アプリを厳選してランキング形式でご紹介しています。「無料で多くの漫画を読みたい」と思っている方はぜひ一読してみてください。

完全無料!おすすめ漫画アプリをランキング形式で紹介!【お金がかからない読み放題のマンガアプリ!知らなきゃ大損!】

 

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『かくかくしかじか』読者の反応は?

 

『かくかくしかじか』あらすじ紹介!

人気漫画家・東村アキコさんが恩師・日高健三先生を思い出しながらつづる若き日の修業時代の物語です。

 

子どもの頃から漫画が大好きで絵も上手だったアキコさんは、将来は少女漫画家になると決めていました。

 

自信家のアキコさんは自分の作品がブレイクする日を妄想し始めると止まりません。

 

高3の時には美大に進学し在学中にデビューを果たすという完璧な人生設計を持っていました。

 

そんな楽しくも浮かれた日々は、先生の絵画教室に行って打ち砕かれます。

 

先生は竹刀片手に、罵声をあびせるか竹刀をふりおろすかというスパルタ教師だったのです。

 

おびえつつ反発を感じていたアキコさんでしたが、だんだんと先生の飾りのない誠実な人柄がわかって来ます。

 

美大には無事合格しましたが、大学時代に漫画は描きませんでした。

 

社会人になってからは会社員、日高絵画教室の講師、漫画家という3足のわらじを履いて奮闘しつつも、先生と漫画の間で気持ちは揺れ動きます。

 

先生から余命4ヶ月と知らされた時は、漫画の仕事も軌道に乗り、教室から遠く離れた大阪で暮らしていました。

 

先生の元に戻り最後まで手伝いをする道もありましたが、アキコさんにはできませんでした。

 

そのことに強い良心の呵責を感じているアキコさんですが、先生のおかげでどんな時でも描くことができるようになったと言います。

 

そして死ぬまで描き続けると天国の先生に誓のでした。

『かくかくしかじか』見どころ紹介!

見どころ①描け 描け 描け

一番の見どころは、アキコさんの恩師・日高先生が常々口にしていた「描け」という言葉に尽きるでしょう。

 

「いいから描け」「もっと描け」「見たまま描け」

 

本書全5巻の至るところで、先生は生徒たちに「描け」と言いまくっています。

 

これって、すごくシンプルなことで、やりたいことがあれば、やれというメッセージなのです。

 

絵や漫画を描きたいなら、まず描け、そして描き続けろ。

 

これは、他の色々なものに応用が可能です。

 

野球をやりたいなら、まずバットを振れ、そして降り続けろ。

 

歌手になりたいなら、まず歌え、そして歌い続けろ。

 

シェフになりたいなら、まず作れ、そして作り続けろ。

 

反論の余地ゼロですよね。

 

でも現実の世界で暮らしている私たちには、描けなくなる山のような事情に取り囲まれています。

 

アキコさんも最初はそうでした。

 

シンプルなメッセージは先生からアキコさんへ、そして教えを受け継いだアキコさんから読者へと二重に響き渡り、私たちの心を撃ちます。

 

そして先生の「描け」を最後に聞いたのは誰だったのか?

 

最終巻5巻は号泣必至です。

見どころ②ストーリーが面白い!

見どころの2つ目は、ストーリーの面白さです。

 

こう書くと、漫画のストーリーってどれも面白いものじゃないの? と、突っ込まれそうですね。

 

もっと突き詰めて考えると構成の素晴らしさでしょうか。

 

この物語は創作ではなくて、漫画家・東村アキコさんが高3で恩師の先生に出会ってから過ごした8年間の日々の記録です。

 

自伝的な文章は比較的単調になりやすいと思うのです。

 

人生はドラマじゃないですから、そうそう毎日事件が起きるわけでもないですよね。

 

でも、この漫画では大きなイベントから日常的な出来事までがほぼほぼ時系列で並べられています。

 

第1巻から第5巻まで、全部で34話ありますが、そのどれもが完璧に面白いのです。

 

そして34話全部読んでまた面白いと言った効果があります。

 

何を言いたいかと言えば、何度読んでも面白いということです。

 

まあ、1回だけ読んでみたいという人も安心して楽しんでいただけますし、繰り返し読む人も常に新しい面白さを発見できます。

見どころ③美大情報、漫画家情報に詳しくなれる

見どころの3つ目は、美大、漫画家という華やかな世界に触れられることです。

 

物語の中では美大生は、「ピーターパン症候群のクソバカ」とひどい言われようですが、一般受験生から見ると、美大とか美大生って、やっぱり特別感ありますよね。

 

美術という言葉は、センター試験で高得点取ることとは別の次元のステータスがあります。

 

第1巻では美大入試情報。

 

第2巻と3巻では、自分も美大に入学したような気分になれます。

 

漫画家デビューは第3巻で果たしますが、漫画制作に関わる情報は4巻からが多いです。

 

アキコさんの漫画家人生の転機となった出版社のパーティーの様子は4巻で楽しめます。

 

パーティに行ける喜びをシンデレラから取って、宮崎名産の日向かぼちゃが飛行機に変わるコマにはうなりました。

 

そして華やかとは違いますが、締め切り前の壮絶な現場の状況。

 

生きる屍を見て感動しましたとあっさり描かれていますが、一般人にはなかなか刺激的でした。

 

私たちが何気なく読んでいる漫画も漫画家さんやアシスタントさんの血と汗の結晶なんだなと感謝の気持ちでいっぱいになること間違いなしです。

『かくかくしかじか』登場人物紹介!

林アキコ

この物語の主人公。

 

美大進学をめざす高校3年生で、子どもの頃からの将来の夢は少女漫画家でした。

 

まだ何も描いてはいないのですが、脳内ではすっかり人気漫画家になっています。

 

美大で絵の勉強をしながら、在学中にデビューしてブレイク、それから幸せな家庭生活まで完璧な人生設計もできています。

 

ポジティブで明るい性格なのです。

 

日本人は謙虚と言われますが、口に出して言わないだけでこういう妄想にふけってしまう人って案外いるんじゃないでしょうか。

 

めちゃめちゃ親近感が持てます。ただアキコさんは自信過剰になりがちな反面、分野によっては非常にシビアに自分の力に見切りをつける冷静さも持っています。

 

たとえば苦手な勉強では当たり前の努力をやめて、問題文を読まず選択肢の文章だけ読んで正解を導くという大胆な作戦で成功をおさめました。

 

ポジティブさと冷静さをあわせ持つアキコさんがどうやって、人気漫画家へと成長したのか楽しみです。

日高 健三先生

アキコさんの絵の先生。

 

絵にはかなりの自信を持っていたアキコさんのデッサンを下手クソとけなし、竹刀でバンバン叩いてアキコさんを震えあがらせました。

 

指導には罵声と竹刀、プロレス技のアイアンクロ―を使われ、教室内には緊張がみなぎっています。

 

この緊張感の中で集中して描くことが絵の上達につながるのです。

 

怖い先生ですが、絵に一途なことはもちろん、人生全てがまっすぐで誰に対してもウソがありません。

 

第4巻ではアキコさんだけに見せたメルヘンチックな表情がキュートでした。

二見さん

学年でたった1人のアキコさんの美大進学希望仲間。

 

フリッパーズ・ギターというバンドと都会が大好きな女子校生です。

 

クールな性格で、ノリの良すぎるアキコさんに釘をさすこともしばしばです。

 

アキコさんが日高絵画教室に通うことになったのは、二見さんの紹介からでした。

今ちゃん

アキコさんの高校の2つ後輩。

 

ヤンキーでしたが、ひょんなことからアキコさんに絵を描く楽しみを教えられ、日高絵画教室に通うようになります。

 

教室では先生とノストラダムスの大予言のことで大げんかします。

 

世界滅亡派だった今ちゃんは先生との賭けに負けて、何年も150万円を請求されることになるのが笑えました。

西村くん

アキコさんの彼氏。

 

大学の2つ後輩ながら5浪しているので年は3つ上になります。

 

超イケメンぶりに一目ぼれしたアキコさんが猛烈アタックをかけて、恋は成就(じょうじゅ)しました。

 

濃い登場人物が多い中で、かなり温厚なキャラです。

 

先生とは一度だけ会ったことがあり、先生に指導されたアキコさんを羨ましいと言っていました。

『かくかくしかじか』序盤ネタバレ紹介!

第1話

この物語は漫画家 東村アキコさんの自伝漫画で高校3年生の時から始まります。

 

東村さんは昭和50年生まれの36歳、バツイチのシングルマザーで毎日漫画を描いて暮らしています。

 

子どもの頃から少女漫画が大好きで将来は「少女漫画家になる」と決めていました。

 

海が近くて自然がいっぱい、南国ムードあふれる宮崎県でひたすら漫画を読んで過ごしていました。

 

読む合間に絵も描いて、小学校の「マンガクラブ」で作品を制作したこともありました。

 

当時のアキコさんは自分を天才だと確信し、マンガを描いて投稿すればすぐに賞をもらってデビューできるものだと思っていました。

 

自分のデビュー作があちこちで賞賛されることを妄想し始めると止まりません。

 

高校では美術部に所属し、顧問の先生に絵が上手いと常にほめられ美大進学にも絶対的な自信を持っていました。

 

東京の美大に現役合格し在学中に漫画家デビューするという、アキコさんの完璧な人生設計に水をさしたのが同級生の二見(ふたみ)さんでした。

 

「そんな甘くないやろ」

 

二見さんは唯一の美大進学仲間で、フリッパーズ・ギターというバンドをこよなく愛し都会に憧れる女子高生です。

 

そんな二見さんが、お父さんのツテで絵画教室に通うことにしたと言います。

 

アキコさんも知っている街の教室ではなく、看板も出さない宣伝もしていない教室だと言うのです。

 

うさんくさいと思ったアキコさんですが、月謝が5,000円と安いこともあり見学させてもらうことにしました。

 

自宅からバスを乗り継いで1時間という遠い所に教室はありました。

 

バス停で待っていると、痩せて目つきの鋭い中年男性がスクーターに乗って現れました。

 

「林さんね?」

 

苗字を呼ばれただけでびくついてしまったアキコさんです。

 

男性は「ついてきて」と言うと、そのままスクーターで走り出します。

 

アキコさんは面喰いながらも走って追いかけますが、ついに見失ってしまいます。

 

ただ近くにあった古い家に先ほどのスクーターが止めてあったので、アキコさんは一人で恐る恐る中に入って行きます。

 

部屋の中では様々な制服の高校生たちが静かに絵を描いていました。

 

生徒の中に二見さんを見つけて手を振りますが、スルーされてしまいます。

 

ムッと来たアキコさんですが、男性に持って来たデッサンを見せるように言われます。

 

デッサンを出しながら、アキコさんは緊張します。

 

こんな怖そうな先生に私だけ褒められたら他の生徒さんに悪くない? 

 

だって、とびきり上手いのばかり持ってきたんだもん。

 

どこまでも自信満々なアキコさんでした。

 

アキコさんのデッサンを見ると、男性は第一声「全然下手クソでーす」と言うやいなや竹刀(しない)でデッサンをバシバシ叩いて罵倒します。

 

アキコさんはショックでかたまってしまいます。

 

さらにアキコさんが3年と知ると、今年受験だろう、こんな下手ではどこも受からないと怒鳴ります。

 

がくがく震えて声も出ないアキコさんに、今日は9時までデッサン、明日以降は月水金と土日、週5で通い、受験までにデッサン100枚と指示を出します。

 

もちろん抵抗などできるはずもなく、アキコさんはこのとんでもない教室に通うことになりました。

 

これが東村アキコさんの恩師・日高健三先生との最初の出会いでした。

第2話

「日曜なのにえらい早起きですなあ」とお父さんに、からかわれるアキコさん。

 

日曜日でも教室に通わなければならないため、これまでのように寝坊はできません。

 

お弁当もいるのでお母さんにお願いしますが、コンビニで何か買うように言われます。

 

おにぎりだけは自分で用意し、飲み物は教室近くで買おうとしましたが、海に近い町はずれにはコンビニも自販機もありませんでした。

 

がっかりしながら教室に行くと先生から今日描く石膏像(せっこうぞう)を指示されます。

 

アキコさんは、その像は前に描いたことがあるので他の像を描きたいと言いました。

 

そのとたん、先生の掌(てのひら)が顔面に伸びて来て指先でギリギリ頭を締められます。

 

プロレス技のアイアンクロ―です。

 

「バカ、何回も何十回でも同じの描くんじゃ」

 

教室では先生が法律なのです。

 

よく見ると、先生に意見したり口答えするような生徒は一人もいません。

 

次々と生徒がやって来るなか、おじいさんや、小学校に入ったかどうかというくらいの幼い姉弟もやって来ました。

 

そうです。この教室は美大をめざす高校生の他に、子どもからお年寄りまで一般の人も通う絵画教室だったのです。

 

おじいさんの児玉さんは箱ティッシュを描いていました。

 

箱ティッシュのような四角いものはデッサンの基本のモチーフですが、退屈そうとアキコさんは児玉さんに同情してしまいます。

 

何とか仕上げた箱ティッシュも先生の厳しいダメ出しによって、ほとんどやり直しです。

 

先生は老若男女、差別なく切れていました。

 

幼い姉弟は本物と全然違うと怒鳴られ、ある女子高生はデッサンの進みが遅いと責められ泣き出してしまいます。

 

アキコさんがオロオロする中、他の生徒はいっさい気にとめることもなく黙々とデッサンを続けています。

 

高校の美術部でワイワイと楽しく描いて来たアキコさんには異様としか思えません。

 

絵はもっと楽しんで描くものでしょう?

 

お昼の休憩になりました。

 

こんな雰囲気でどうやって食べるのかと不安なアキコさんでしたが、高校生たちが床に車座になっているのを見て焦ります。

 

ただ二見さんもその中にいたので慌てて隣に座ります。

 

教室ではずっとアキコさんを無視していた二見さんですが、初めてアキコさんに反応を返します。

 

「やっと喋ってくれた」と涙目になっているアキコさんに、今までは先生の竹刀を恐れて無視していたことを打ち明けます。

 

少し元気が出たアキコさんはその勢いで他の生徒さんたちに自己紹介をします。

 

が、みんな下を向いて全く反応はありません。

 

がっかりしながら、おにぎりを食べようとして飲み物がないことを思い出します。

 

その時、「林っ!」とアキコさんを呼ぶ先生の声がします。

 

びくっとして振り返ると、先生が湯呑に入れたお茶を持って立っていました。

 

先生はお盆に生徒全員分のお茶をいれて一人一人に配ってくれたのです。

 

おいしいお茶でした。

 

生徒たちはお茶を飲んで10分程度で食事を済ませて席に戻り、続きを描き始めました。

 

その時の私は何もわかっていなかったと東村さんは当時をふり返ります。

 

あの場所は全てがただひとつの目的のためにああでなければならなかったのです。

第3話

高校の進路相談で、アキコさんは東京の美大に行って漫画家になると打ち明けます。

 

緊張して先生の言葉を待っていたアキコさんでしたが、先生は「お前ならなれる!」と太鼓判(たいこばん)を押してくれました。

 

「やっぱりそう思いますか、先生」とますます自信を深めるアキコさんでした。

 

宮崎の人はみんな本当に優しいです。

 

先生も友達も親戚のおじちゃん、おばちゃんに親までアキコさんの夢を応援してくれます。

 

宮崎は人を疑うことを知らない善人だらけの街と言えるでしょう。

 

その優しさに包まれ、アキコさんの自意識はすくすくと成長というか、肥大して行ったのでした。

 

しかし、宮崎であって宮崎でない場所がありました。

 

日高絵画教室です。

 

日高先生は「このままじゃお前は100%落ちる」と断言します。

 

浪人決定だが親は浪人させてくれるのかと聞かれて、無理と答えると「だったらもっと気合を入れて描け」と先生の竹刀が振り下ろされます。

 

デッサンの形が狂っているという先生の指摘に狂っていないと答えると「自分でわからんのか」と椅子から突き飛ばされます。

 

代わりに先生が座り、1回しかやらんからよく見とけと言ってあっという間に石膏像の形を取ってしまいました。

 

あまりの速さ、正確さに圧倒されたアキコさんは思わず先生にどこの美大に行ったのか聞きます。

 

「オレは大学出とらん」という予想外の答えに驚くアキコさん。

 

そして急に教室に飾ってある絵が目に入って来たのです。

 

絵は動物の骨のような、内臓のような気持ちの悪いものばかりでした。

 

それは当時アキコさんが愛読していた漫画雑誌「ぶーけ」の美しい世界とはかけ離れた絵でした。

 

先生に逆らえない空気、美大に行っていない先生、気持ち悪い絵。

 

アキコさんの中で、ここは違うかもしれないという気持ちが大きくなって来ます。

 

アキコさんはお腹が痛いとうそをついて、早退しようとします。

 

それを聞いた先生は帰りの心配をします。

 

教室は町から遠く離れた場所にあるのです。

 

お母さんに迎えに来てもらうと言うと、電話を貸してくれました。

 

アキコさんは自宅に電話をかけたふりをして切り抜けます。

 

教室を出て歩いているとこれまでの不満が一気にわきあがります。

 

心の中で何度もやめると繰り返していると、なんと後ろから先生が鬼の形相(ぎょうそう)で追いかけて来るではありませんか。

 

「林、嘘をついたな」

 

アキコさんを迎えに来ているはずのお母さんから教室に電話がかかって来たというのです。

 

震え上りながら謝るアキコさんに、先生はいきなり背中をむけてかがみます。

 

先生は車がないので、アキコさんをおぶってバス停まで送ると言うのです。

 

驚いて遠慮するアキコさんに「腹が痛いんやろ、はよ、おぶされ、道で倒れたらどうすっとか」と先生は真剣です。

 

おそるおそる乗ったものの、アキコさんはなかなか重く、先生はゆっくりとしか進めません。

 

先生は、お母さんが迎えに来てくれるのは嘘でも、お腹が痛いことは本当だと思っていたのです。

 

仮病を使ったアキコさんは恥ずかしさと申し訳なさで顔を上げることができませんでした。

 

そして、この出来事からアキコさんは、先生は誰よりもお人好しの宮崎人じゃないだろうかと考えるようになったのです。

第4話

アキコさんが日高絵画教室に通い始めて1ヶ月が経ちました。

 

教室内で先生が、アキコさんの同級生の二見さんに話しかけます。

 

「二見、林は勉強はできるんか」

 

二見さんは「できません」と即答します。

 

さらにいかにできないのか、いつになく詳しく語るのです。

 

それを聞いた先生は「何でや。 お前らんとこは県でトップの進学校やろうが」と不思議そうです。

 

確かにアキコさんの高校は毎年有名大学にたくさんの合格者を出す、県内でも有名な進学校でした。

 

アキコさんは中学の3年間、目立ちたい一心で学級委員長に立候補したおかげで先生たちから「積極的な元気な子」として可愛がられました。

 

その結果、成績はよくなかったのですが、推薦枠で現在の高校に入学できたのです。

 

アキコさんいわく「勉強できないくせに間違って進学校に来てしまったバカ」だったのでした。

 

高校のテストはどの科目も常に赤点で追試になりますが、追試でも点は取れません。

 

最後は、追試しても補習しても点が取れない生徒だけが職員室前に集められ、職員室前廊下を往復30回の雑巾がけをして留年を免れたのでした。

 

勉強が苦手なアキコさんでしたが、それゆえ勉強しなくても絵が上手なら入れる美大に進学しようとしたのです。

 

ところが先生は今はいくら実技が上手くても学科の点が悪いと落とされると言います。

 

センター試験で9割取れ。

 

これが先生からの命令でした。

 

黙って聞いていたアキコさんでしたが、心の中では絶対ムリと思っていました。

 

焦ったアキコさんは美術部の先生に相談します。

 

いつも自信満々なアキコさんを見て勉強もできるものだと思っていた顧問の先生は驚きつつも、推薦入学を提案してくれます。

 

推薦なら学科なしで実技と面接だけで受験できます。

 

こうしてアキコさんは筑波大学の推薦枠を獲得しました。

 

ちなみに同じ美大志望の二見さんは田舎は嫌と言って、この枠を譲ってくれました。

 

絵画教室の日高先生に推薦のことを報告し、勉強することなく実技だけに打ち込めることになったアキコさんは大喜びでした。

 

試験までの2ヶ月間は毎日教室に通い、先生の地獄の特訓を受けました。

 

あっという間に試験の日になりましたが、実技も面接も楽勝でした。

 

合格は間違いありません。

 

アキコさんは浮かれて過ごしていました。

 

大学からの合格通知を心待ちにしていたある日、アキコさんが帰宅すると通知を持ったお母さんがにっこり微笑んで迎えてくれました。

 

そして言ったのです。

 

「ダメやったわ 筑波」

 

ショックのあまり、ふとんをかぶって寝込んでしまったアキコさんに先生から電話が来て居酒屋に呼び出されます。

 

フラフラしながらアキコさんは、出かけます。

 

「先生、私まだ高校生なんやけど・・・」というアキコさんを無視して、先生は自分に白飯とアキコさんにビールを注文します。

 

先生はお酒が飲めないのです。

 

アキコさんにビールを注いで言います。

 

「今日だけ飲んで 明日からまた描くぞ」

 

先生の優しさにほろりとしつつも、もう描きたくないですと言ったとたん涙があふれます。

 

「描け」、「描きたくない」の押し問答を繰り返しながらも、最後は先生が勝ちました。

第5話

推薦入試に失敗したアキコさんはセンター試験を受けなければなりません。

 

高校の3年間、美術以外の科目はおろそかにしていたアキコさんにとって厳しいことです。

 

先生はこれから猛勉強をして9割取れと言いますが、全く自信がありません。

 

ただ、アキコさんには他の人にはない才能がありました。

 

それは誰よりも冷静に自分の能力に見切りを付けるあきらめの早さでした。

 

あきらめた所をスタートラインにして、踏み出すのです。

 

アキコさんの新たな対策として買った本は、「問題を読まずに答えがわかるマークシート攻略法」と「ダウジングマスター法」の2冊でした。

 

問題を読まずに選択肢だけで正解を導くポイントは、出題者の気持ちになることでした。

 

アキコさんは本を読みながら徹夜で特訓を繰り返しました。

 

特訓の成果で模試の点も上がってきました。

 

模試の結果を先生に報告すると、先生は「お前はちゃんと勉強しとるんやな」と言ってくれました。

 

すると横で聞いていた二見さんが、アキコさんの怪しげな勉強法を先生にバラしてしまいます。

 

「どうゆうことや」先生はアキコさんに聞きます。

 

しどろもどろになりながら、アキコさんが買った本をかばんから取り出すと、先生がひったくります。

 

本を見た先生は、怒るどころかすごいと感心していました。

 

二見さんが「アキコのひどい勉強法を怒らないんだ」と突っ込んでも、点が取れれば何でもいいと答えます。

 

そしてアキコさんには「この本で満点を狙え」と言います。

 

自信をつけたアキコさんはさらに特訓に磨きをかけました。

 

そしてセンター試験の日。

 

これまでと出題傾向が大きく変わり非常に難しい試験だったと言われた中、アキコさんは例の方法で8割近い高得点をゲットしたのでした。

 

先生からはどこでも受けろと言われて、アキコさんは大喜びです。

 

センター試験後の最終特訓ではデッサンに油絵も加わり、先生の厳しさは3倍増しになりました。

 

毎日必死のアキコさんでしたが、時々不思議な気持ちにもなりました。

 

美大に行っていない先生がどうしてここまで受験にこだわるのでしょう。

 

聞けば先生はけっこう有名な画家で年に1回開催する個展にはかなりの人が集まるそうです。

 

日本の美術家団体には所属せず、独自のポジションにいます。

 

大学など行かなくても画家になれることを知っているはずなのに・・・。

 

そんなある日、先生が突然みっちゃんという女子生徒に体のわりに手が長くてチンパンジーみたいだと言い出しらあげく、今日からお前のあだ名は「チンパン子」だとまで言うのです。

 

気の弱そうなみっちゃんは「ひどい」と泣き出してしまいました。

 

ひどくない、覚えやすいいいあだ名だ、美大に入ったらそう呼んでもらえと言う先生には女子高生の気持ちはわからないようです。

 

先生のデリカシーのなさにアキコさんも二見さんもひきつっていました。

 

そしてお昼休み。

 

なんと、その日のみっちゃんのお弁当はバナナとリンゴだけでした。

 

そこにいつも通り、生徒にお茶を配りに来た先生が現れます。

 

先生はみっちゃんのお弁当を見て大笑いです。

 

「みっちゃん、それ、チンパンジーの昼ごはんやないかーーー」

 

「みんな見ろ、これぞ正にチンパン子のチンパンジー弁当や」と言って笑い続けるのです。

 

再び泣きそうになったみっちゃんを見て、アキコさんも二見さんも焦りますが、当の、みっちゃんがふき出してしまったのです。

 

みっちゃんの笑いを合図に周りの生徒たちも一斉に笑い出しました。

 

東村さんにとって、先生が笑うのを見たのは初めてで忘れられないエピソードになったのでした。

第6話

2月に入り、美大の2次試験課題である油絵を描きながら「デッサンと違って楽しいな」とごキゲンのアキコさんです。

 

けれど先生からは山のようにダメ出しが出ます。

 

それに対してアキコさんは、先生にモデルを雇ってほしいとお願いします。

 

教室では鏡を置いてそれに写る自分を描いているのです。

 

自分がモデルではモデルを見ながら描くということはできません。

 

これでは形をちゃんと取れるわけないじゃないですかという、アキコさんの訴えを、先生は「甘えんな 見た瞬間に目で全て記憶すればいいだけのことやろが」と却下します。

 

すっかり教室に慣れて来たアキコさんは、こんな風に先生とやりあう場面も増えて来ました。

 

国公立の美大受験はセンター試験後、石膏デッサンなどの一次試験を受けます。

 

一次試験の結果は翌日に発表になり、合格した受験生だけが油彩などの二次試験に進めます。

 

一次も二次も1日6時間で2日かけるという長丁場の試験です。

 

アキコさんが受験しようとしたのは、東京学芸大学、大阪の某教育大学、金沢美術工芸大学の3校です。

 

実は東京と大阪の大学は美大とはちょっと違います。

 

2校は美術の先生を育成するための大学で、アキコさんのイメージで言うと実技よりセンター試験の結果が重視されるのです。

 

対する美大は実技重視で、受験生の中には浪人する生徒も多く、そうとう高い実技レベルがなければ合格できません。

 

アキコさんは、センター試験で好成績を収めたので学科で逃げ切る作戦を取ったのです。

 

アキコさんの本命は東京学芸大学でした。

 

アキコさんは画家ではなく、漫画家になるために大学に行くのですから絵の勉強ができれば美大でなくてもいいと思っていました。

 

ただ先生は、これだけデッサンや油絵の練習をしているのに美大に行かないのかと怒りました。

 

慌ててアキコさんは金沢美大を受けると言います。

 

なぜ金沢という質問には、受験の際に名物のカニが食べられるからと答えて先生を絶句させてしまいます。

 

入試前日です。

 

先生がお守りをくれました。

 

生徒全員に注意事項を伝えて「あとはいつも通り描け」と言って送り出してくれました。

 

受験は同じ東京と大阪の大学を受ける二見さんと一緒に行動しました。

 

本命の東京学芸大学ではモデルさんが動かないので描きやすくて、快適でした。

 

おかげで試験は絶好調でした。

 

続いて大阪に向かいます。

 

下見に行くと、大学は山の中にあり、田舎が嫌いな二見さんはなんと翌日の試験を棄権してしまいます。

 

これにはアキコさんもビックリでした。

 

大阪の試験が終わると、アキコさんは二見さんと別れて特急電車で金沢に向かいました。

 

東京と大阪には行ったことがあったアキコさんですが、北陸は初めてです。

 

空はどんよりと曇っていて長いトンネルを抜けると窓の向こうには一面の雪景色が広がっていました。

 

宮崎育ちのアキコさんには衝撃的な光景でした。

 

日付は今も忘れもしない3月11日です。

 

大人になった東村さんは、あの時の光景を先生に見せてあげたいと思っています。

 

そして、当時の自分のことを先生が言った通り、何も考えていなかったと思い出すのでした。

第7話

美大受験も最後の1校になりました。

 

金沢の宿泊先はホテルではなく旅館で、アキコさんはがっかりします。

 

夕食は1階の和室と言われ、カニが出るかもしれないと思ったアキコさんは気を取り直して向かいます。

 

部屋には受験生らしき男女が数名いましたが、シーンとしていて、アキコさんの気持ちは再び暗くなります。

 

カニは出ていますが、この雰囲気では美味しくありません。

 

そんな時、1人の女の子が私は京都ですが、みなさんはどこから来たのですかと口を開きました。

 

アキコさんは宮崎、他の人は名古屋、東京、千葉と反応があり、「うどんが主食の香川県人です」という男の子には笑いが起きました。

 

最初こそ緊張していましたが、あっという間に打ち解けて、初日の夜は更けていきました。

 

食事の後、アキコさんはお母さんに電話をします。

 

最初に受験した東京学芸大学の結果はいつ来るのかとお母さんに聞かれます。

 

あさってと答えながら、くれぐれも結果を知らせないようにお願いします。

 

本命の学芸大学には受かっているはずですが、金沢の試験中にそれを聞くと気がゆるんでしまいそうだからです。

 

お母さんの後、先生にも電話をすると同じく東京学芸大学の結果発表の日にちを聞かれました。

 

あさってと答えながら、金沢の試験中は結果を聞かないことにしたことを伝えます。

 

翌日の一次試験では、今まで見たことのない石膏像が課題になりました。

 

これまでの試験は全て教室で描いたことのある像で余裕でクリアして来たアキコさんですが、今回はどう描いていいのかわかりません。

 

とりあえず筋肉をがっちり描きこみましたが、全然上手くいきませんでした。

 

帰宅し、旅館の食事の時に今日の石膏像について聞いてみました。

 

初めて見たという人が多いなか、1人だけ描いたことがある人がいました。

 

香川のうどんくんです。

 

どんな像か話そうとして「みんな一応ライバルだからな」と躊躇(ちゅうちょ)する彼にアキコさんは何度も教えてと頼み、カニも全部あげてしまいました。

 

アキコさんの熱意に負けた彼が教えてくれたところによると、あの像は少年の像で筋肉を描き込まず、のっぺりと仕上げるのがいいそうです。

 

翌日の一次試験2日目。

 

アキコさんは大慌てで、昨日筋肉をがっちり描き込んだ像をほぼ描き直したのでした。

 

一次の結果は翌日9時に大学に貼りだされます。

 

アキコさんは無事合格していました。

 

大学から旅館に戻って来ると、荷物を持った香川の彼と鉢合わせになります。

 

アキコさんは何も言えず、彼も無言で旅館から去って行きました。

 

その日の夕食の部屋にいたのはアキコさん1人だけでした。

 

私が受かったせいで彼が落ちたのかもしれないと思うと、アキコさんは罪の意識にさいなまれてカニものどを通りません。

 

先生と話したいと思ったその時に、旅館の方が先生からの電話を取り次いでくれました。

 

急いで電話に出ると、先生の第一声は「林、お前 東京学芸 落ちたぞ」でした。

 

何も言えないでいるアキコさんに、お前は後がないから絶対金沢に受かれよと言って、電話は切れました。

 

呆然としながら家にかけてお母さんに聞いてみると、間違いなく自分が落ちたことを知り、アキコさんは電話機の前で崩れ落ちてしまいました。

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