「月刊少年シリウス」で連載されていた人気マンガ「獣の奏者」を全巻無料で読めるお得な配信サイトを調査しました。
昨今、各出版社が漫画アプリに力を入れており、連載中のマンガでも漫画アプリを通して無料で読むことができます。
例えば、小学館が運営する漫画アプリ『サンデーうぇぶり』では、サンデー系列で連載中のマンガや過去の名作マンガに至るまで幅広く無料で読むことができます。(←1番オススメの漫画アプリ)
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しかし、『獣の奏者』に関しては今現在、無料で読める漫画アプリはありません。
そこで漫画アプリではなく『獣の奏者』を配信しているすべての電子書籍を調査すると、1つの電子書籍サービスを使って『獣の奏者』を実質無料で全巻読む方法が見つかりました!
最終巻まで実質全巻無料で読む方法を解説します。
この記事では
・『獣の奏者』を今すぐ全巻無料で読みたい
・お得に漫画が読める電子書籍サービスを知りたい
・『獣の奏者』のあらすじや見どころが知りたい
そんな疑問を持った漫画好きなあなたにオススメです!
結論!電子書籍『コミックシーモア』を利用して『獣の奏者』を実質全巻無料で読める
『コミックシーモア』には、新規ユーザーに対して2つの超お得な特典を用意しています。
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1冊どの漫画でも半額で購入できます。もちろん『獣の奏者』の最終刊も半額で購入可能です。
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月額メニューは、月額11000円のコース(コミックシーモア10000)に加入すれば12500ptがもらえて、さらに翌月には特典②により10000ptが返ってきます!
使ったはずの6600ptが10000ptになって返還されるので実質全巻無料というわけですね!
『獣の奏者』を実質全巻無料でお得に読みたい方は、月額メニュー「コミックシーモア10000」がオススメです。
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『獣の奏者』読者の評価は?
本の断捨離してたら出て来た単行本版獣の奏者外伝をふと読み返したけどやっぱり面白いなぁ。本編も3巻からでも読み直そうかしらね
— ポサヒン (@miriann_hsto) November 2, 2021
獣の奏者、王獣編までしか読んでなくて10年くらいぶりに探求編読み始めたけど面白い!細かい設定忘れてるけど…こっちもアニメ化してほしい。
— シュウ (@mameno3210) October 24, 2021
獣の奏者!小説がめっちゃ面白い!読み終わってからアニメもやってたこと知ったけど、どっちにせよ可愛いから誰か読んで、見て!?
— どろみず (@Doro_18) October 21, 2021
10年ぶりくらいに獣の奏者読んでるんだけどめっちゃ面白いな
— ロゼ (@kepo27ko) October 17, 2021
獣の奏者読んでる 昔アニメは見てたけど結構展開違うなー面白い
— ウイスキーの焼酎割りみつえ (@familychikin) October 9, 2021
『獣の奏者』あらすじ紹介!
上橋菜穂子さんのファンタジー小説を原作とした作品で、漫画の他にアニメにもなっています。
話の舞台は「リョザ神王国」と呼ばれる、真王領と大公領からなる異世界です。
「リョザ神王国」は金色の瞳をもつ女性ジェが国を創ったと伝えられています。
西部地方は「真王領」東部地方は「大公領」と呼ばれ、「真王領」はジェの子孫である真王(ヨジェ)が、「大公領」は真王に仕える大公(アルハン)が治めており、大公が闘蛇軍をもち国と王を守護しています。
真王(ヨジェ)が統治する国の西部地方「真王領」は、山がちの土地が多いため食料などの収穫が豊かではありませんが、ジェの子孫である真王(ヨジェ)の住む王宮がある王都があります。
一方大公(アルハン)「大公領」は水源の豊かな平野に恵まれているため稲も良く実り豊かです。
また闘蛇村があり、国と王を守護する大切な生き物である「闘蛇」の世話を行っています。
しかし真王領と大公領の間には領民同士の対抗意識があり、様々な軋轢が生じていました。
主人公である女の子のエリンは早くに父を亡くし、10歳の時に母親のソヨンも失います。
ソヨンは「霧の民」の出身で卓越した医療の術をもっていたため、大事な闘蛇の世話係として暮らしていました。
しかしある時ソヨンは闘蛇<牙>を死なせてしまい、処刑されることになりました。
湖で闘蛇に食い殺されてしまうことになったソヨンの元へとエリンは助けに行きますが、助かる見込みの無いことを悟ったソヨンは、霧の民の禁忌とされる指笛を使い闘蛇を操ってエリンをその場から逃がしました。
闘蛇に乗って助けられたエリンは真王領の湖のほとりでジョウンという男性に助けられ、そのまま蜂や家畜の世話をしながら身寄りのないエリンを育ててもらいました。
ある時、山の深くに行ったジョウンと、それについて行ったエリンは、野生の王獣を見ます。
そして王獣が我が子を守るため、闘蛇を簡単に食い殺す姿を見ました。
美しい王獣に魅了されたエリンは更に生き物への興味を深めると同時に、王獣の親子がコミュニケーションをとっている時の指笛のような鳴き方と、ソヨンが最期に見せた指笛を重ねて、様々な考えを巡らせるのでした。
エリンはジョウンから生物や勉学など様々なことを学び、成長していくにつれて、生き物の在り方についてもっと知りたいと考えるようになっていきました。
それと同時に母のソヨンの闘蛇への思い、禁忌とされる指笛についても考えていました。
ある時ジョウンの息子がやってきて、昔暮らしていた王都へ戻るよう言われます。
ジョウンは迷いますが、エリンは生物を学びたいと願い、獣の医術師を学ぶためのカザルム学舎へ入学することになりました。
王獣の世話をしながら学ぶ日々を送りますが、ある時、傷ついた小さな王獣の世話を担当することになります。
なぜならエリンは他の人は見たことのない、野生の王獣を見た経験があったからです。
傷ついた王獣<リラン>を元気な姿を戻すために試行錯誤する間に、エリンとリランは少しずつですが心を通わせていきます。
弱っていたリランは食事をするようになり、外に出られるようになりました。
そして竪琴を奏でて簡単な会話が出来るようになり、徐々に言葉も伝わるようになります。
それまで学舎では『王獣規範』に基づいて厳しく管理され世話をしていただため、人と獣の間には大きな壁がありました。
闘蛇も王獣も同様に、音無し笛を使って痺れさせて人の安全を確保したり、特滋水という特殊な栄養を与えながら育てていたからです。
ただ生き物が本来あるべき姿で生きて欲しいと願って、それまでの常識を超えてしまったエリンは、『王獣規範』の本当の秘密をだんだんと知っていくことになります。
そしてリランの懐妊をきっかけに、国を動かす人々の政治的な思惑を知ることになり、様々な悩みと迷いを抱えます。
国の在り方と密接に結びついた人々のしがらみと獣たち、そして純粋なエリンの強い意志が最後にどのような結果に繋がるのかがこの作品の見所です。
『獣の奏者』見どころ紹介!
見どころ① 壮大な世界観を表現した引き込まれるファンタジー
主人公のエリンを中心として人と獣の複雑な関係性を描いた物語は、読者も考えさせられる部分の多いテーマです。
人々の争いと、それに利用される獣たち。
リョザ神王国が生まれた背景にある、今まで隠されてきた残酷な出来事が、物語を読み進めるにつれて少しずつ明らかになっていきます。
それは神々の山脈(アフォン・ノア)を越えてこの国の王祖となったジェが、過去に闘蛇と王獣の争いのきっかけを作ったこと、それによって栄えていた広大な国が血にまみれた焦土となって滅んでしまったことです。
その出来事は隠され、ジェの書いたとされる『王獣規範』を厳しく守って獣を育てさせることによって、獣の繁殖を防ぎ、人と獣との間に壁を作り、そのような過去の過ちを繰り返されないようにしてきたことが明らかになります。
何も知らないエリンが王獣のリランと心を通わせ、意思を伝えあう中で、少しずつその危険性を感じ、危険な道へと進んでしまっているかもしれないことに気付きながらも、エリンは自分の意思を貫き通してきました。
最後には国を大きく変える取引の場面にエリンとリランは出され、エリンは決断を迫られることになります。
一人の少女の純粋な生き物への想いとは裏腹に、国を動かす大人たちが描く網の目が複雑に絡み合い、最後まで一気に読み進めてしまいたくなる迫力のあるストーリーとなっています。
見どころ② 主人公エリンの成長
父を亡くし、壮絶な体験で母親を失った10歳のエリン。
深い悲しみの中で出会ったジョウンに様々な知識を教えてもらいながら成長し、母の死と生き物への想いに向き合いながら、自分の信念を貫き通す姿に胸を打たれます。
エリンは母のソヨンと同様に生き物全てを同等と考え、あるべき姿で自由に生きて欲しいと願っていました。
しかしカザルム学舎でリランと触れ合う中で、闘蛇や王獣は規範によって強制的に人と生き物との間に壁を作るように仕向けられていることに気付き始めます。
エリンは王獣のリランと心を通わす中で、ある時油断をしてリランに威嚇され、大きな怪我を負わされ、ショックと後悔で落ち込みます。
そしてエサル師に、獣はあくまでも獣であること、獣はどちらが上であるのか測るのが自然であって、そのために音無し笛が必要であることを諭されてしまいます。
それでもエリンはリランへ生まれてしまった恐怖心に打ち勝ち、再び絆を取り戻していくのです。
絶対に音無し笛を使わないという強い意志を持つエリンがリランへ抱いている愛情と強い意志に周りの人も読者も心動かされます。
その後もリランが目の前で人を襲い自分も怪我をする出来事が起こり、エリンはリランに対する強い恐怖心を再び持ちますが、それでも「いまリランと対峙(たいじ)することから逃げたら二度とふたたびむかいあうことはできないだろう」と思い再びリランと向き合います。
リランと心を通わせる喜びと同時に何度も後悔や迷いがエリンを襲いますが、それでもエリンは自分の意思を貫いていく過程が繊細に描かれています。
見どころ③ 人と獣との絆
ダミヤの策略によって強制的に政治的に利用されることになってしまったエリンとリランは大公の長男シュナンと、真王となったセイミヤとの取引の場に連れ出されてしまいます。
一番避けたかったことである、人が王獣を操る姿をたくさんの人に見られてしまうことになります。
セイミヤはシュナンと和解する決断をしますが、ダミヤが邪魔をして、大公の次男を利用しシュナンを襲わせます。
そこでセイミヤに「シュナンを助けて!」と懇願されたエリンは、国の行く末を思い、リランを武器として使うことに複雑な思いを抱き、リランに語りかけながらも共にシュナンの元へ行き、リランにシュナンを乗せて助けます。
そして自分はその場に残り闘蛇に囲まれ死を覚悟します。
しかしその時、再びリランが自分の意思で舞い戻り、エリンを口に入れて助けてくれたのです。
この時リランは、様々な困難と迷いがありながら丁寧に語りかけ育ててきたエリンの想いに応えてくれました。
エリンのたくさんの苦労が報われ、間違いではなかったのだと思わせてくれるのです。
絶対的な隔たりがあるとされてきた人と獣とが本当に心を通わせたことを感じさせる感動的で印象的な場面です。
見どころ④ エリンの成長を支えた魅力的な周りの人々
大きな影響を与えた母ソヨンをはじめ、身寄りのないエリンを育てて未来への選択肢をくれたジョウン、エリンを厳しくも優しく見守ってくれたエサル師。
学舎生活でエリンを精神的に大きく助けてくれた同級生のユーヤンなど、エリンは周りの人々に支えられたからこそ、大きく成長し、自分の意思を貫くことができたとも思えます。
また、王族との関わりの中で政治的なしがらみや疑いをもつようになった際、エリンはイアルに出会います。
エリンとイアルは不思議とお互い心を開き、自分の迷いを打ち明けました。
国の構造を知り、これからの未来と自分の選択について考えていたエリンが唯一正直に相談し、打ち明けることの出来た相手だったといえます。
エリンを取り巻く人々の中にはダミヤのように人を騙し自分が国を操ろうとする利己的な人物もいますが、しかしそれよりも多くの魅力的な人々に囲まれているところもこの物語の魅力です。
『獣の奏者』登場人物紹介!
エリン
主人公の女の子。
幼いころに父のアッソンを亡くし、10歳の時に闘蛇<牙>の世話係だった母のソヨンが<牙>を死なせた罪で処刑されてしまいます。
ソヨンの指笛で闘蛇に助けられたエリンはジョウンに出会い、生き物の不思議や勉学を学んだのち、獣の医術師を学ぶためのカザルム学舎へ入学することになります。
王獣の世話をしながら学び、のちにエリンの運命を変える王獣<リラン>に出会い心を通わせていきます。
ソヨン
霧の民の出身ですが、アッソンと出会い、村で暮らすこととなりました。
闘蛇<牙>の世話係をしていましたが、霧の民の秘密を守るため<牙を>死なせてしまい、処刑されることになってしまいます。
処刑の場面で助けに来たエリンを守るため、霧の民が固く守ってきた禁忌である指笛を使ってエリンを助けてしまいます。
ジョウン
真王領の東の端サンノル群に住む蜂飼いの男性。
偶然エリンに出会い、エリンと共に4年暮らしたのち、突然訪れた息子に王都へ戻るよう言われます。
ジョウンは王都の高等学舎で教導師長を務めていましたが、教え子の自殺によって罷免された過去がありました。
迷いましたが、エリンが希望したカザルム学舎へ入学させ、二人は別れることになります。
ジョウンは根っからの教導師で、知識の吸収の早いエリンとの生活を心から楽しんでいました。
その後、エリンの在学中に心臓の病気によって亡くなってしまいます。
エサル
カザルム保護場にあるカザルム王獣保護場の教導師長の女性。
ジョウンとは昔からの知り合いで、その縁もありエリンが入学するきっかけとなりました。
以前から王獣に関する研究を続け、野生の王獣を探し続けましたが、結局見ることは出来ませんでした。
エリンと出会い、エリンが育てるリランの美しさを見て、他の王獣との違いを音無し笛と特滋水ではないかと疑うようになります。
そして『王獣規範』にはなにか隠された意図があるのではないか、と考えるようになりました。
そこに危険を感じながらも、あるべき姿の王獣に魅力や過去の想いを抱え、迷いながらもエリンを厳しくも優しく見守っていきます。
ユーヤン
カザルム学舎にエリンが入った時に唯一在学していた女学生。
早とちりですが明るく世話好きで心遣いのできる子。
精神的にエリンを大きく支えてくれた友人です。
ハルミヤ(真王)
リョザ神王国の真王。
王都の王宮で暮らしていましたが、リランの懐妊をきっかけにエリンと出会います。
ダミヤの策略によって闘蛇軍に襲われ、その時の怪我が原因で亡くなってしまいます。
セイミヤ
リョザ神王国の王女でハルミヤの孫娘。
ハルミヤが亡くなったことで真王に即位することになります。
従叔父のダミヤに求婚されますが、最終的に大公家の長男シュナンの言葉で現実を知り、これからの国のために結婚を前提とした取引に応じることになります。
ダミヤ
ハルミヤの甥でセイミヤの従叔父。
表向きは自由で女性好きな性格ですが、裏では大公家の次男ヌガンを仲間に引き入れ、大公の仕業に見せかけ闘蛇を使ってハルミヤを襲わせるなど、国を操る野望持った人物。
またエリンも引き入れ、王獣を利用しようと画策していました。
イアル
真王の護衛を務める『堅き盾』の一人。
8歳の時に父を失い、家族の為に大金と引き換えに『堅き盾』となりました。
ハルミヤがカザルム王獣保護場へ行ったことをきっかけにエリンと出会い、その後も何度か関わる機会があり、お互いに心を開いていきました。
『獣の奏者』序盤ネタバレ紹介!
序章1
この物語の最初の舞台はリョザ神王国の国防を担う大公領(アルハンりょう)にある闘蛇(とうだ)衆の村。
戦で先陣を駆ける闘蛇を育てています。
母のソヨンと一緒に嬉しそうに闘蛇(とうだ)を見に行くまだ小さい女の子エリン。
二人は闘蛇の教練の様子を見に行きました。
二人が教練を見ていたその時、一頭の闘蛇が興奮した様子で大きく口を広げ、身体の上部を大きく持ち上げました。
角を掴んで教練をしている男性の身体も同様に持ち上げられ、振り落とされそうな危険な状態になってしまいます。
そのことにいち早く気付いたソヨンはすぐに駆け出し、音無し笛で闘蛇の感覚を痺れさせ、男性を救うのでした。
訓練をしていた闘蛇は<牙>(きば)と呼ばれ、国防を担う大事な生き物です。
男性に怪我はなく無事でしたが、周りから「<牙>になにかあったらどうするつもりだ!」と責められてしまいます。
ソヨンは<牙>の様子を見て険しい表情をしますが、周りには「この子は今日はもう休ませてください。」と伝え、その場を離れました。
エリンはソヨンに駆け寄り、地面に横たわった<牙>の心配をします。
ソヨンが「平気よ」と伝えるとエリンはほっとして笑顔に戻りました。
岩房(がんぼう)の水の中で闘蛇の世話をするソヨンをエリンが少し離れた岩場から見ています。
エリンは闘蛇を愛おしそうな表情で眺めていました。
その様子を感じ取ったソヨンは険しい表情で闘蛇の恐ろしさをエリンに伝えます。
闘蛇衆や戦士が闘蛇に触れる時は常に音無し笛を持ち、危険を感じた時にはそれを使って闘蛇の感覚を痺れさせ、安全を確保しているのです。
「闘蛇は決して人に馴れない、馴らしてはいけない生き物なのよ」とソヨンはエリンに厳しい口調で伝えました。
エリンはまだ小さいため闘蛇に触れることを許されてはいませんでした。
でもエリンは触りたくて仕方がありません。
光をはじいて七色に輝く闘蛇の鱗(うろこ)に触れたい衝動を抑えることに精一杯で、そのことばかりを考えてしまいます。
エリンと話しながらも闘蛇の様子を見ていたソヨンは、鱗を見て闘蛇の異変に気付き一瞬表情を変えました。
エリンもその表情の変化に気が付きますが、ソヨンはそのままエリンに背を向けて、十五歳ぐらいの一人前になった時に考えましょう、と言ってエリンに家に戻るよう促します。
エリンがその場を離れた後、ソヨンは暗い表情で闘蛇の泳ぐ水の中へある液体を流し入れました。
(この液体は闘蛇の中でも<牙>にだけ与える薬草入りの「特滋水」(とくじすい)であることが後々分かります。)
その夜は遠くから雷が聞こえていました。
先に布団に入っていたエリンが、帰宅して布団に入ったソヨンに「雷が鳴った?」と話しかけますが、心配しないよう言われます。
甘い闘蛇のにおいを感じながらエリンは眠りにつきました。
エリンは母のソヨンと二人で暮らしていました。
その夜、悲鳴のような「ピー」という異様な音が村のあちこちから鳴り響き、エリンもびっくりして起き上がります。
一方冷静なソヨンはエリンを家に残してすぐに出ていきました。
エリンも家を出ると、闘蛇衆が東の崖へ走っていく姿が見え、後を追って音の鳴る闘蛇の岩房へと急ぎます。
闘蛇衆の集まる岩房の入り口から中を覗くと、水の中で浮いて横たわる闘蛇<牙>と寄り添うソヨンの姿を見つけます。
そこへソヨンの義父でありエリンの祖父である長(おさ)が現れました。
2カ所の岩房で合計10匹の闘蛇<牙>がすべて死んでいることが、闘蛇衆の一人から報告されます。
長は集まった闘蛇衆へ指示を出し、ソヨンの元へと歩いていきました。
「原因はなんだ」
「…まだわかりません」
<牙>が死んだ原因を問いかけましたが、ソヨンは分からないと答えました。
<牙>を死なせることはとてつもない大罪だと長は責め立てます。
それに対してソヨンは冷静に「覚悟しております」と答えました。
この返答に怒った長はソヨンに対して強い言葉を発します。
長は闘蛇衆の頭領であり、長の義娘であるソヨンは霧の民(アーリョ)と呼ばれていました。
また霧の民(アーリョ)であるソヨンを大公(アルハン)の宝たる<牙>の世話係にしているのは異例なことなのです。
それでもソヨンが<牙>の世話係をしていることには理由がありました。
長はソヨンの卓越した獣ノ医術を認めていました。
また長の息子アッソンの遺志でもあったため、みんなの反対を押し切って息子の遺志を叶え、ソヨンを<牙>の世話係にしたのです。
しかし激昂した長はその判断を後悔した様子でその場を去っていきます。
心配するエリンと対照的にソヨンは冷静で、長の父親の代のときにも同じように<牙>が全て死んでしまったことがあるとエリンに話します。
また、<牙>は他の闘蛇よりも身体が大きく力も強い一方で、病に弱いことはみんなも知っていると言いました。
この時エリンはある変化に気付きます。
それは闘蛇の匂いでした。
死んだ闘蛇は匂いが変わるのか、それとも病にかかったから匂いが変わったのか、とソヨンに問いかけると、ソヨンは驚いた表情でエリンを見ました。
ソヨンがエリンにそう考えた理由を聞くと、以前学んだ花と同様に、闘蛇も匂いが変わったことで寄ってくる虫が変わるのではないかと言いました。
するとソヨンは更に驚いた表情をして、「その思いつきを誰にも話してはいけないよ」と言いました。
その反応から、きっと匂いの変化は<牙>が死んだ理由に関わることなのだと分かります。
またソヨンはそのことに気付いていながら、長には話していないことになります。
エリンは「どうして?」と聞きますが、ソヨンは返答を濁します。
そしてソヨンは疲れ切った様子で水から上がり、死んだ<牙>たちに深く頭を下げました。
序章2
エリンはずっと気になっていた霧の民(アーリョ)について考えていました。
自分の緑色の瞳や同級生からの言葉、村の人々の態度などは以前から疑問に感じていました。
また母であるソヨンは背が高く目の色も村の人々と似ていないことに気付いていました。
霧の民(アーリョ)と村人との間に生まれる子は、魔がさした子(アタン・メ・チャイ)と呼ばれているという噂もありました。
エリンのその様子を感じ取っていたソヨンは、二人で温浴場から帰ると、普段であればお祝いの時に食べる鶏肉を食べようと言いました。
その調理中、ソヨンは突然火の中へ音無し笛を投げ入れて燃やしてしまいます。
それを見てびっくりしたエリンをソヨンが抱きしめ「ごめんね…」と言い、本当は音無し笛を使うことが嫌だったと告白します。
笛を吹いて硬直する闘蛇を見ること、人に操られる獣の哀れさや、野にいるよりも弱くなっていく闘蛇を目の当たりにするのがつらかったのです。
特滋水を与えれば牙の硬度が増して骨格も大きくなりますが、その分弱くなっていく部分もあるとエリンに語ります。
これは他の闘蛇衆は知らないことなのです。
弱くなっていく部分に関して、ソヨンは野にいる闘蛇ならばごく普通に為すことで、<イケ>に飼われた闘蛇にはできなくなることがある、とエリンにヒントを与えます。
エリンには自分で考えるよう伝え、「おまえならきっと答えをみつけられるわ」と言いました。
そして「でも答えを見つけても他人に話してはだめよ」「なぜいけないのか それがわかるようになるまでは」と言いました。
食事の最中、エリンは意を決してソヨンの子供の頃の話を尋ねました。
それに対してソヨンは「今夜はおかあさん、それにおとうさんのことも話しておこうね」と話し始めました。
まずは霧の民(アーリョ)について。
村の人は霧の民(アーリョ)のことを、霧の中から現れ、よく効く薬を売ってくれて医術に優れているけれど、奇妙な神々を信仰している気味の悪い人たちだと感じています。
しかし本当はアー(霧)のリョ(民)ではなく、<アォー・ロゥ>『戒め(アォー)』を『守る者(ロゥ)』という意味なのです。
戒めとは過去の過ちを繰り返さないよう守られてきたもので、過ちについて「人も獣も死に絶えるような恐ろしい過ち」とソヨンは表現しました。
祖先は滅びの危機を二度と迎えぬよう、誰に仕えることもなく、野山を巡り暮らすようになったのです。
霧の民は一族以外の者と結婚してはならない、一カ所にとどまって暮らしてはならない、という掟を代々厳しく教え込まれ、それを守っています。
ただソヨンはその掟を破り、おとうさんと出会い、この村で生きることにしました。
二人の出会いは、怪我をして崖の中腹に倒れていたおとうさんを助けてあげたことだったと、ソヨンはエリンを抱きしめながら話しました。
アッソンは無口ですがとてもやさしく、笑うとお天道さまが顔を出したようにあたりが明るくなるような人でした。
エリンの笑顔はおとうさんにそっくりだと言って抱きしめました。
次の日、村の人々と闘蛇衆が集まり、そこに馬に乗った偉い人がやってきました。
<牙>を死なせた罪を問うためです。
<牙>の世話係は誰か、と呼ばれ、ソヨンが前に出ました。
ソヨンを見て「おまえは霧の民か?」と驚き、長に対して怒鳴りつけます。
そして世話係に大切なことは医術の腕よりも大公(アルハン)への忠誠心だと言い、霧の民へのひどい言葉を並べました。
<牙>の死因を問われたソヨンは中毒死だと答えます。
特滋水は強い成分を持っており、普段であれば闘蛇の身体を保護する粘液と混ざり合って体内に取り込まれますが、昨日の朝は粘液がところどころ薄くなっていて、それが原因だと言いました。
しかし粘液の変化の理由を問われ、分からないと答えたソヨンは、その場で捕らえられてしまいます。
動揺して走り出しだエリンを村の人が止め、エリンはその場で泣き叫びました。
その後エリンはほとんど覚えていないような3日間を過ごしました。
村に出ると、村人がソヨンへの刑として野生の闘蛇に食い殺させるという噂をしているのを聞いてしまいます。
エリンは急いで家に帰り、ソヨンを助けるために短刀を持って、処刑される場所へと向かいました。
序章3
ソヨンは怪我をした状態で両手を後ろに縛られていました。
そして太鼓の音と同時に、船から野生の闘蛇のいる湖へ投げ落とされてしまいました。
湖の脇から短刀を口にくわえたエリンが泳いで助けに行きます。
傷を負ったソヨンは死を覚悟しますが、その時、こちらへ泳いでくるエリンを見つけます。
エリンを肩に掴まらせ、野生の闘蛇が近づいてくる中、手を縛られた縄を切ってもらい、エリンを抱きしめました。
近づいてくる闘蛇を見てソヨンは決意をしました。
エリンの命を助けるために大罪を犯す決意をしたのです。
エリンに「これからすることをけっしてまねしてはいけないよ」と伝え、指笛を吹きました。
その瞬間、野生の闘蛇が一斉に動きを止めました。
それを見ていた人々は騒然としました。
音無し笛以外に闘蛇を操れるものはないと思っていたからです。
ソヨンはエリンを1頭の闘蛇にしっかりと跨がせると、さらに指笛を吹きました。
その合図でエリンを乗せた闘蛇はどこか違う方向へ泳いでいきました。
泳ぎだした闘蛇に跨ったエリンが後ろを振り返ると、そこにはたくさんの野生の闘蛇とそれに囲まれるソヨンの姿を見つけます。
エリンは「あかあさん!」と泣き叫びますが、ソヨンは「いきなさい!ふり返ってはだめ!」と言ってエリンだけを脱出させたのでした。
序章4
霧の民の一人の女性が夜の森を歩いていると、精霊鳥(せいれちょう)と精霊獣(せいれいじゅう)に出会います。
精霊獣に宿った精霊鳥はその女性に言葉を発し、また闇の中へ消えていきました。
女性はすぐに霧の民のいる岩房へ戻ると、指笛で人々を呼び集め、その言葉を伝えます。
「<操者ノ技>(そうじゃのわざ)が使われた。闘蛇の指笛を奏でた者がいる―と」
人々はどよめき長老会議が開かれることになりました。
長老会議では戒めを破ったのはソヨンだろう、という話になり、ソヨンの母親は頭を下げて謝りました。
<探索者>を呼び、急いで詳細を調べさせることになりました。
もし人前で霧の民が闘蛇をあやつれることを知られてしまったら、大公(アルハン)は必ずその技を聞き出そうとするに違いないからです。
人々にはすぐに身を隠すよう伝えられました。
<探索者>が戻り、長老たちが報告を受けると、ソヨンに起こった一連の出来事を知りました。
闘蛇の粘液が変化して繁殖期がきていたこと、それを聡いソヨンが気付かないはずがないこと。
それでも特滋水を与えることで戒めを守ったのだと気付きます。
秘密を漏らさぬために、処刑さるかもしれないと知りながら闘蛇を死なせることを選んだソヨンの気持ちを長老たちは汲み取りました。
しかし、わが子を守るために最後に情に負けてしまったことも知り、涙を流しました。
唯一の救いは監察官が小心な男であったため、『ソヨンが霧の民であったことは口外するな』と厳命したことです。
長老たちは少しほっとした表情をみせますが、今回の噂が消えるまで、われらの姿が災いをもたらさないように、この国を離れ山隠れをするよう言いました。
湖のほとりで一人の女の子が倒れているところを、髭を生やした身体の大きい男性が見つけます。
最初は死体だと勘違いをしましたが、よく見ると生きていました。
頬を叩いて大声で目をさまさせようとしますが、少し目を開けただけですぐにまたぐったりしてしまいます。
驚いて焦った男性は女の子を背に乗せて家まで運んでいきました。
第一章 1
エリンは夢を見ていました。
水の中にいるたくさんの闘蛇とそれに食い殺されるおかあさんの姿を。
大声を上げてうなされているエリンに、男性は優しく語りかけ看病をしました。
朝エリンが目を覚ますと、目の前にあぐらをかいた姿勢で寝ている男性を見つけました。
あぐらをかいて左右に揺れながら寝ている男性が、そのままひっくり返ってびっくりしながら目を覚ます様子見て、エリンはクスクス笑いました。
エリンはすっかり熱がひいた様子で起き上がれる程に回復していました。
男性がエリンの傷の様子をみていると、不意にエリンはおかあさんが闘蛇に囲まれている場面を思い出し、泣き出してしまいます。
泣いて哀しみを忘れればいいと優しく言う男性に対し、おかあさんを忘れたくない一心でエリンは泣くことを我慢します。
男性も深い事情はききませんでした。
その後、温かい朝餉(あさげ)を食べさせてくれました。
ファコという雑穀を挽いて粉にして水で練って焼いたものに、蜂蜜で味をつけた食事でした。
男性はエリンがいつも食べていた朝餉(あさげ)を尋ねると、お米のご飯にお汁だと答えました。
男性はエリンが大公領民から来たことを知ります。
ここは真王(ヨジェ)領の東の端のサンノル群という場所だと教えてくれました。
大公領は水が豊かで稲がよく実りますが、ここは山がちで米より雑穀や麦の方がよく実るといいます。
親の話を聞くとエリンは黙ってうつむいてしまいます。
男性は無理には聞かず、自分はジョウンだと名乗りました。
はっとしたエリンは座ったまま深く頭を下げて、「わたしはエリンです。」「助けてくださってどうもありがとうございました」とお礼を言いました。
この姿勢や礼儀・言葉遣いから身分の高さを感じ、瞳の色を見て霧の民だと分かったジョウンは、エリンの生い立ちに関する様々な疑問を持ちますが、すぐには聞きませんでした。
第一章 2
体調が落ち着いて、初めて外に出たエリンは「神々の山脈(アフオン・ノア)」と呼ばれる広大な山々を見て驚きます。
「神々の山脈(アフオン・ノア)」は人の世界と神々の世界をへだてている壁だと言われています。
ジョウンが「おれのお宝を見に行こう」と言って連れて行った場所は、たくさんの蜂の巣が並ぶ養蜂場でした。
蜂がいきなり群れで動き出し、少し危ない目にあいますが、エリンはジョウンの指示通りに蜂の群れの移動を静かに見守りました。
そしてエリンはジョウンから蜂の知識を教わります。
移動した群れを新しい巣箱へ移すため、ジョウンはエリンと一緒に新しい巣箱を持ってきて噴霧器で強い匂いのする液体を吹きかけました。
その理由をエリンは蜂の群れを誘い込むためなのか聞きますが、その推測ははずれでした。
ジョウンは感心しながらも、十歳の子に正解が分かるはずもないと思っていました。
しかしエリンは闘蛇の世話をしていたおかあさんの姿を思い出し、前にいた別の蜂の匂いを消すためではないか、と正解を導き出したのです。
ジョウンは驚いて正解だと伝えるとエリンは笑顔になって、さらに詳しく話を聞いてきました。
しかし少しでも家の話題を振るとエリンの顔はすぐに曇ってしまいます。
ジョウンは反省し、エリンの笑顔を見るため、探るようなことはしないと決心するのでした。