めぞん一刻2巻を無料で読む方法とネタバレ紹介!漫画アプリでタダ?zip,rarは危険|三鷹と五代が響子を巡ってバトル!こずえも登場し…?

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悩んでいる人
『めぞん一刻』2巻を無料で読む方法とネタバレが知りたい。

 

本記事はこんな疑問を解決します。

 

余談なのですが、違法な無料漫画サイト(zipやrarファイルを含む)では、ウイルスによる感染率が年々高くなっています

 

今回ご紹介する『めぞん一刻』2巻を無料で読む方法は、登録不要もちろん合法です。

 

違法手段ではないので、安心してください。

『めぞん一刻』2巻は漫画アプリ『マンガワン』で読める

いきなり、結論です。

 

『めぞん一刻』第2巻は、こちらの小学館が運営する漫画アプリマンガワンにて無料で読むことができます。

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『めぞん一刻』第2巻が『マンガワン』にて無料で読めると言いましたが、この記事を執筆している現在(2020年)では第1巻から最終15巻まで全巻無料で読むことができます

 

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『めぞん一刻』2巻 ネタバレ紹介!

PART 1 「三鷹、五代!!」

セミの声が響く夏。

 

五代(ごだい)は衝撃のあまり目を見開いてしまいました。

 

ホットパンツにノースリーブ!

 

きれいだけれど、控えめな恰好をしていた響子(きょうこ)が、派手な服装をしているからです。

 

刺激的な響子に思わず鼻血が出てしまう五代でした。

 

しかし、響子は暑いという理由だけで他意はない、と言います。

 

住人の朱美(あけみ)、四谷(よつや)はそれをそのまま受け取りはしません。

 

「もっと奥ゆかしい女(ひと)じゃなかったかなー?」

 

「あながち夏のせいとも言いかねますなー」と言い合い、最後に朱美は「男でもできたんじゃない」と一言を放ち、五代は鼻血もそっちのけで危機感を覚えるのでした。

 

本当に男ができたのか?口ではそうとは限らない、と否定する五代でしたが、気になって仕方ありません。

 

可能性があるとしたら、響子が最近かよい始めたテニスクラブのコーチ・三鷹(みたか)です。

 

本当に?

 

テニスクラブで楽しそうに三鷹とテニスをする響子。

 

周りの主婦からも本当に明るくなったと言われ、本人自身も『惣一郎さんと会った頃の私に……戻れそう……』と感じています。

 

五代はそれを金網の外から眺めるしかできません。

 

野次馬根性で五代についてきた四谷は「お似合いだと思いません?」と残酷なことを五代に告げます(四谷はいやがらせが趣味なのです)。

 

五代も負けじと「テニスなんて男らしくない」と言い返しますが、「ガキよりなんぼかマシです」の一言により撃沈するのでした。

 

テニス後。

 

響子、三鷹と五代、四谷、一の瀬(いちのせ)で朱美(あけみ)の勤めるスナックに飲みに行くことになりました。

 

初めて三鷹を見た朱美は「わぁ!!」と驚きの声をあげます。

 

三鷹は五代よりもイケメンなのです。

 

「ねーねー、あまってたらわけてね」と、もの欲しそうに朱美は響子におねだりしました。

 

響子も言われて困っています。

 

何はともあれ、席に着き飲み会が始まりました。

 

話題はやはり恋の話。

 

お節介主婦の一の瀬はさっそく、五代をいじります。

 

「もう一度あれやってよ。『響子さん好きじゃーーっ!!』」

 

これで嫌なのは五代というよりも響子だったようでした。

 

目を細め、一の瀬をにらみつけながら言います。

 

「いやだわ一の瀬さん………あれは冗談だったんですよ」

 

「そーかねー」

 

「そうでしょ、五代さん」

 

いつもの五代なら、へたれて自分の気持ちを言えなかったことでしょう。

 

しかし、今、目の前には恋敵の三鷹がいます。

 

ここで負けるわけにはいきません。

 

「冗談じゃありません……好きです」

 

目から火花を散らすほど、力強く宣言しました。

 

お酒の入った一刻館の住人たちはわいわいと笑い出しました。

 

響子はそれが不愉快でその場を抜け出します。

 

それを心配して追いかける三鷹。

 

五代も二人きりにさせてなるまいか、と追おうとするのですが、一刻館の住人に阻まれます。

 

「あんたらどっちの味方なんだーっ!!」

 

五代の叫びもむなしく「おもしろけりゃいいんだよ」と取り押さえられるだけでした。

 

響子と三鷹は二人並んで歩いています。

 

三鷹は「好きだと言われるのは、そんなに困ることでしょうか?」と尋ねます。

 

「私、未亡人なんです」と響子が答えます。

 

「え……」

 

「まだ夫を忘れられ………いえ、忘れたくないんです。私が忘れたら惣一郎さんは本当に死んでしまう………」

 

三鷹は響子の思いを静かに受け止め、こう返します。

 

「相当時間がかかりそうですね……。ま、ぼくは気の長いほうだから」そう言ってさわやかに帰っていきました。

 

ライバルがカッコよく決めている中、五代は酔っ払いの住人達にからまれ続けていたのでした。

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PART 2 「行きがけの駄犬」

五代の決死の告白から二日後。

 

響子が五代の部屋まで訪れて、わざわざお礼をしにきました。

 

「五代さん、ありがとうございます」

 

菩薩のような笑顔で、五代には後光まで見えます。

 

響子が告白を受け入れてくれた……奇跡のような展開に五代は驚きました。

 

「郁子(いくこ。響子の義理の姪)が英語で92点をとったんでしょ」

 

以前、響子の頼みで五代は郁子の家庭教師をしていたのでした。今日はそのお礼。

 

とんだ勘違いでしたが、これをきっかけにして響子と完全に仲直りすることができました。

 

夏まっさかり。夏休みの季節になりました。

 

五代は汗を流しに銭湯へと向かいます。

 

そこで住人・一の瀬の息子、賢太郎(けんたろう)と出会いました。

 

いつもは生意気な小学生の男の子ですが、この日は元気がありません。

 

五代は心配して声をかけました。

 

賢太郎は自分がみじめなのだと答えます。

 

夏休み、みんなは旅行に行くのに、自分はどこにも連れて行ってもらえないから、と。

 

その話を聞き、五代は自分の小学生のころを思い出しました。実家の手伝いで、五代も旅行なんて行ったことがありません。

 

「海、行くか」

 

苦学生の五代には旅行なんて無理でしたが、せめて少しでも思い出を作ってあげようとします。

 

賢太郎は大はしゃぎ。すぐさま母親の許可をとり、ついでに響子も一緒に海に行くことになりました。

 

響子との海、五代にとってもいい思い出になりそうです。

 

……のはずだったのですが、当日。

 

よく晴れて海日和ですが、一刻館には五代、響子、賢太郎だけでなく、響子の義理の姪・郁子(いくこ)、そしてよりにもよって三鷹が来ていました。

 

なぜ、三鷹がと思う五代でしたが、賢太郎の母・一の瀬がこっそり呼んでいたのです。理由は三鷹が車を持っているから。

 

(ちなみに、三鷹の車は当時で150~160万程度の国産車です)

 

海へと出発する前から、けん制しあう五代と三鷹でしたが、響子はハラハラがとまりません。

 

そんな大人たちをしり目に子供たちはこっそりと企みを進めていました。犬の惣一郎が寂しがっているのを見て、こっそりと車に詰め込むことにしたのです。

 

大人組はそうとは知らず、楽しい楽しい海へのドライブが始まりました。

 

二時間あればつくという三鷹でしたが……。

 

道路をすいすいと進んでいくさなか。

 

後部座席の下、タオルケットの中から犬の惣一郎が「ばうっ」と顔を見せました。

 

その瞬間、いつもの余裕たっぷりの三鷹の表情が崩れます。

 

そう、彼は犬が大の苦手なのです!

 

かっこよくて、大人で、お金がある。自分より若さ以外は何もかも持っているライバルの弱点を見つけて五代は笑いが止まりません。

 

「笑いごとじゃないよ、きみ」三鷹が冷静に告げます。

 

「ぼくが運転するんだよ」

 

「事態は最悪だな」

 

五代の血の気が引きました。

 

犬の惣一郎さんは三鷹のことが嫌いではないらしく、運転中もべろべろなめたりします。

 

そのたびに三鷹は動揺し、車は大揺れ。

 

響子は『惣一郎さん、私……もうすぐあなたのそばに行くかも…』と手を合わせて拝みました。

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PART 3 「ソルティー・ドッグ」

「生きてるってすばらしい」

 

なんとか無事に海に着くことができました。響子は遠くを見つめ、生きていることに感謝します。

 

三鷹は犬のダメージが抜けきれず、一人、パラソルの下で休憩です。残りのメンバーで海に入ることにしました。

 

もともと活動的な響子は、沖までかるく泳ぎに行きます。

 

気持ちよく泳いでいたのですが、何かが響子のふとももにふれます。

 

「?」

 

なんだろうと思う響子でしたが、その直後、五代が近づいてきました。

 

「女性ひとりじゃ危険ですよ。へんな男にからまれたりしたら」

 

五代がさわったんだ、そう思った響子は『よく言うわ』と五代を無視します。

 

あなたが危険な男のくせに。だというのに、おさわりは繰り返されます。

 

『な……なんという大胆な………私が未亡人だからこましやすいと思っているのかしら!!』

 

怒りが頂点に達し、響子はきっぱりと五代に言います。

 

「そりゃ私は未亡人ですわよ。純情ぶるつもりはありませんけど……」

 

「はあ……」

 

五代はとぼけた表情をしています。何のことだかわからないようです。

 

「きゃっ!!」

 

またも響子の体に何かがふれます。

 

「クラゲだ」

 

五代が『何か』の正体に気づきました。

 

「あら? ク……クラゲ? やだ…クラゲだったのね……」

 

「はあ、なるほど。よっくわかりました。そーゆー目でぼくをみていたのですか」

 

響子の誤解に気づいた五代は静かに怒ります。

 

響子は謝るのですが、五代の機嫌は直りません。

 

ところが響子が男たちにナンパされそうになると、五代はすぐに響子の手を引き、その場から助け出します。

 

男たちはあきらめて舌打ちして去っていきました。

 

「管理人さん(響子のこと)、恋人同士に見えたんでしょうか? (だから、男たちはあきらめたのか?)」

 

「はあっ!?」

 

ナンパから助け出したことで、さっきまでの怒りはすっかりなくなっているようです。

 

『すごい回復力…………』と響子は思いました。

 

回復力といえば、休憩していたはずの三鷹がいつの間にか、見知らぬ女性たちと遊んでいます。

 

響子(と五代)が戻ってくるのを見ると、すぐさま三鷹は女性たちに別れを告げました。

 

「おモテになるんですね」

 

「ぼくって遊ばれちゃうタイプなんですよね」

 

言い訳になるような、ならないようなことを三鷹は言いました。

 

三鷹は、せっかくなのでボートにでも乗りませんか、と響子(とおまけで五代)を誘います。

 

ボート上では三鷹が響子に優しくボートの漕ぎ方を教えています。

 

まるで五代はいないかのような扱いです。

 

「あ……」

 

響子が声を上げました。どこからか犬の惣一郎の声が聞こえるような気がする。

 

五代も声に気づき、周囲を見渡しました。

 

すると、なぜだかわかりませんが、犬の総一郎さんがゴムボートに乗り、海に流されているではありませんか。

 

それを見た五代は「世話の焼ける」と文句を言いながらも、迷うことなく海に飛び込みます。

 

あっという間に犬の惣一郎さんを助けた五代は、三鷹と響子の乗るボードに犬の惣一郎を乗せました。

 

『くらえっ、潮漬け犬(ソルティ―・ドッグ)!!』とせめてもの意趣返しとして、三鷹に犬の惣一郎を押し付けます。

 

「三鷹さん、あとはよろしく」

 

五代はそれだけ言うと、一人泳いで岸へと向かいました。

 

響子と三鷹が二人きりになってしまいますが、三鷹はすっかり犬に恐怖しており、そんな心配はないのでした。

 

ビーチに戻った三鷹はすっかりグロッキーです。

 

五代も多少は溜飲が下がったでしょうが、一つ大きな問題がありました。

 

帰りはだれが運転するのか?

 

五代は免許を持っていないし、三鷹はもはや運転できる体力を持っていません。

 

「あの……あたしが運転していいかしら」

 

響子が手を上げました。一同、これで安心と思っていると……。

 

「うまくできるかしら。もう2年くらい乗ってないんです」

 

一同に衝撃が走ります。再び、地獄のドライブになることが決まりました。

 

この日は、とてもいい思い出になったようです。賢太郎くんの日記は次の言葉で締めくくられていました。

 

『(前略)~ぼくはとっても楽しかったけど下宿のおにいさん(五代のこと)とテニスのコーチは、ひきつっていました』

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PART 4 「メモリアル・クッキング」

まだまだ夏休みは続きます。

 

五代は珍しく部屋の大掃除。

 

今日は家庭教師をしている郁子(いくこ)が夏休みの宿題をしに五代の部屋に来るのです。

 

特に若い男性の一人暮らしなので、エッチな雑誌は念入りに隠します。

 

ぎりぎりでエッチなものを隠し終わったところで、響子に連れられて郁子が入ってきました。

 

響子は五代に「よろしくお願いします」と頼んで、部屋を後にします。

 

すると、部屋の外の階段で賢太郎が体育すわりしているのが目に入りました。

 

「どうしたの、そんなところで?」

 

響子が声をかけました。

 

しかし、賢太郎はもごもごして歯切れの悪いことしか答えません。

 

「郁子といっしょに勉強したいの?」

 

察した響子が助け舟を出しました。

 

どうやらこないだの海で遊んでから、賢太郎は郁子のことが気になっているみたいです。

 

そのころ、五代と郁子は真面目に宿題を……しているわけではありませんでした。

 

「ガールフレンドいないの?」

 

中学生になりたての郁子はコイバナに興味津々です。

 

どうでもいいだろ、そんなこと」

 

「もてないのねーっ」

 

「高校ん時はもてたんだぞ。ラブレターだってもらったことあるし(原文ママ)」

 

「ねーー、ファーストキスは?」

 

「えーっと、高校二年の……」

 

本当かどうかよくわからない自慢をする五代でしたが、ちょうどそこに響子がやってきました。

 

「あのっ!!」

 

ジトっとした目で響子は五代を見つめました。ちゃんと勉強させていないことを叱るような目をしています。

 

「賢太郎くんが、一緒に勉強したいそうなんですけどっ」

 

もじもじとした姿勢で賢太郎が部屋に入ってきました。

 

もう一度、まじめに勉強するようにくぎを刺し、響子は部屋を出ます。

 

「どうしたの?」

 

廊下でぞうきんを絞っている一の瀬(賢太郎の母)が、どしどし歩く響子に尋ねます。

 

「は?」

 

「すごい顔してるから」

 

「なんでもありません」

 

「ゆがんでいるよ、笑いが」

 

どうして自分は怒っているのだろう?

 

それは真面目に勉強させてなかったから?

 

もしかして自分は嫉妬しているのではないか、という疑問が響子の頭をよぎりました。

 

五代の前では口うるさい賢太郎も今日は黙って勉強しています。

 

郁子から「おとなしいんだね、賢太郎くん」と笑いかけられると、賢太郎はうつむいて赤面するのでした。

 

「ちょっといいかい」

 

一の瀬がスイカを持って、五代の部屋に入ってきます。

 

息子の勉強を見てもらっているので、差し入れというわけです。

 

「すみません」

 

五代はお礼を言います。

 

「あんたまた管理人さん(響子のこと)にいやらしいことしたの? なんか、おこってたみたいだからさ」

 

響子が怒っている、というのにぎくりとする五代。

 

「あのねー、おにいちゃんのファーストキスの話をしてたんだよ」

 

五代の代わりに郁子が答えました。

 

「そっか、ジェラシーか………」

 

一の瀬は妙に納得して、「じぇーらーしーすとーむ」と歌いながら、部屋を去りました。

 

(このとき、一の瀬が口ずさんでいるのは、山口百恵さんの『愛の嵐』です。めぞん一刻の時代と同時期に発売されています)

 

夕方になりました。

 

なんだかんだ、まじめに五代たちは勉強会をしています。

 

「五代さん、好ききらいあります? 今日は私がごちそうしますから」

 

五代をねぎらおうと、響子がやってきて聞きました。

 

「か…管理人さん(響子のこと)が作ってくれるんですか?」

 

「ええ」

 

五代は感極まります。

 

「管理人さんの手料理ならなんだっていいです。ブタのエサだって牛のエサだって、管理人さんの作るものならっ」

 

『あれでほめてるつもりかしら』五代のセンスのない誉め言葉にいらっとしながらも、響子は一の瀬とともに買い出しにいきました。

 

「誰かのために料理をつくるなんて久しぶり……」

 

「そうか……おいしいだろうね、きょうの料理」

 

一の瀬はやさしくほほえみました。

 

五代の部屋で料理しながら、響子は結婚時代のことを思い出します。

 

惣一郎にもこういう風に料理をつくっていたことを懐かしみながら、笑みがこぼれます。

 

「勉強は進みました?」

 

賢太郎は夕飯を食べるために母のところへ、郁子は犬のえさやりでいません。二人きりのなか、響子は五代に確認します。

 

「郁子ちゃんはね……。賢太郎は全然」

 

「賢太郎くん、郁子が好きなんですね。年上の子にあこがれることがあるんですよね。あの年頃の子どもって」

 

「どの年頃も同じようなもんですよ」

 

五代にとって響子は年上の女性です。

 

五代の意図に気づいて、響子はうっかり包丁で手を切ってしまいます。

 

「血が出てるじゃないですか」

 

「だってあんなこと言うから……」

 

「でも……同じですよ」

 

いい雰囲気で二人の顔が近づきます。

 

「おなかすいたっ、ごはんまだ!?」

 

郁子が戻ってきて、二人はあわてて顔を背けました。

 

響子の作った料理がちゃぶ台に並びます。

 

中央には、大皿に中華風の料理。そのまわりにサラダ、みそ汁らしきもの。

 

五代、響子、郁子の三人で食卓を囲みました。

 

おせじ抜きで響子の料理はおいしいらしく、五代はぱくぱくと食べ進めます。

 

「こんなうまいもん、毎日食えたらいいだろうなあ」

 

「おにいちゃん、惣一郎おじさんと同じこと言ってるー」

 

何気ない郁子の一言が、とげのように五代の心につきささります。

 

惣一郎、という戦うことさえできない相手。響子の夫だった人。

 

好きな女性の手料理を食べれるという幸せな気分は一瞬で吹き飛んでしまいました。

 

ごはんも食べ終わり、五代は賢太郎と一緒に郁子の帰りを見送ります。五代は賢太郎に向かって言いました。

 

「おまえ、夢はすてるなよ!!」

 

それはまるで自分に言い聞かせるかのようでした。

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PART 5 「複雑夜(ふくざつや)……」

響子を映画デートに誘おうと、五代は一刻館に向けて走っています。

 

「あ!!」

 

一刻館の前になぜか、三鷹が車を止めて待っていました。反射的に五代は電柱に隠れます。

 

そこに髪飾りをつけ、イヤリング、ワンピースとめかしたてた響子がやってきました。

 

「さ、どうぞ」

 

白いスーツに身を包んだ三鷹がエスコートし、響子を車に乗せます。

 

「で……でいと……?」

 

五代は愕然としました。

 

なんのために映画のチケットなんてとってきたんだろう。くやしくてチケットを破ろうとします。

 

「もったいない……高かったんだから」

 

貧乏性の五代は思いなおし、友人を誘って映画に行くことにします。携帯電話なんてない時代、タバコ屋のかどの公衆電話で友人に声をかけます。

 

ところが色よい返事は一つもありません。

 

困っていると一人の女性が通りがかり、五代に話しかけてきます。

 

ベリーショートのかわいい女の子です。

 

「五代さんでしょ?」

 

向こうは五代のことを知っているようですが、五代に心当たりはありません。

 

五代が思い出さないのを見て、女性はメガネをかけました。

 

「あっ!! 同じ酒屋でバイトしてた……」

 

「七尾こずえです」

 

私って印象うすいのかしら、という彼女に五代は「メガネとると別人みたいなもんだだから。本当に」と言い訳します。

 

こずえは五代の胸ポケットにチケットをちらちらと見ます。

 

「映画の券です」

 

「私、その映画見たいんだ………いいなー」

 

露骨な催促に、五代はこずえを映画に誘うことにしました。

 

映画まで並んで歩く五代とこずえ。会話していても五代の頭の中は響子と三鷹のことでいっぱいです。二人はいまごろどうなっているんだ?

 

そう思っていると、曲がり角の先で三鷹の車がエンストしているのに出くわしました。

 

これはまずい。五代は向こうに気づかれる前に道を変えようとするのですが、時すでに遅し。

 

「あれ!! 五代くんじゃないか」

 

三鷹が五代に気づきました。響子も五代のほうを見ます。

 

「どおも」

 

「きみもデート? すみにおけないね!!」

 

三鷹のその言葉を否定する間もなく、こずえは五代の手を取り、腕を組みます。

 

そして響子の目を見て「こんにちは」とあいさつするのでした。

 

「行きましょう。映画におくれちゃう」

 

響子のことをじっと見つめる五代の腕を引き、こずえは自分の頭を五代の肩へと寄せました。

 

『好きだって言ったくせに……あんなに若くてかわいいガールフレンドがいるんじゃないの……私をからかったんだわ。ひどい…女心をもてあそんで』

 

響子は怒り心頭で、その様子に関係ない三鷹まで震えました。

 

こうして、気持ちはすれちがったまま、五代はこずえと映画へ、響子は三鷹とディナーへ向かいました。

 

おしゃれなレストランで乾杯しながら、三鷹は響子に質問しました。なぜ、自分の誘いに応じてくれたのか、と。

 

響子は三鷹と会っていると友だちとして楽しいと答えます。

 

「男としては……?」

 

三鷹は一歩、踏み込みました。

 

「あなたも恋人いるんでしょう?」

 

「も? 音無(おとなし。響子の姓)さん(恋人が)いるんですか?」

 

「いえ、私じゃなくて……私はいません、恋人なんて」

 

そう言いながら、響子はナイフに力をこめて料理をつきさします。頭の中は『五代のアホ死んじまえ。五代のアホ死んじまえ。五代のアホ死んじまえ……』怖いくらいにそれ一色で占められていました。

 

一方、スプラッター映画を見終わった後、五代たちも夕食に来ていました。こちらはお値段もお手頃な喫茶店ですが……。

 

「今日の映画、本当は誰と行くつもりだったの」

 

鉄板にのるスパゲティーをすすりながら、こずえは聞きました。

 

「別に……」

 

「損したと思ってるでしょ」

 

「そんなことないよ。きみかわいいし」

 

「うれしいー!! コンタクトにした甲斐(かい)あったなー」

 

食事も終わり、五代はこずえを送ります。その道中、こずえは意味深なことを言いました。

 

「私、女?」

 

「女でしょ」

 

五代のその答えに、満面の笑みでこずえは見返します。

 

『一時の感情に押し流されては………』

 

響子が好きなのに、そんな不誠実なことはできない。五代の理性が導き出した結論は「し、しかし、キスぐらいっ!!」となんとも不誠実な解答でした。

 

五代がその気になっていると、こずえのほうがさっさと帰り始めたので問題は何も起きませんでしたが……。

 

一刻館に戻った五代は、自分のことを棚に置いて、響子の心配を始めます。

 

何かあるんじゃないか? 何もなくてほしい。

 

もんもんとしながら響子の帰宅を待ちます。

 

もう帰ってこないかもしれない、そう不安になっていたころに車の音がしました。響子が三鷹に送られて帰ってきたのです。

 

ほっと安心する五代でしたが、玄関から怪しげな響子の声が聞こえてきました。

 

「あっ!! だめっ!! いけませんっ!!」響子が三鷹と? 五代は階段を転げ落ちながら、急いで玄関に向かいます。

 

そこには、犬の総一郎さんが三鷹に抱きついてじゃれついている光景がありました。

 

「だめだったら惣一郎さん!!」響子は飼い犬を止めているだけでした。

 

犬嫌いの三鷹は涙を流しながら震えています。

 

彼はこのあと、無事に帰れるでしょうか。

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PART 6 「桃色電話」

夏も終わり、秋になりました。

 

五代は学食で昼食を終え、一人タバコを吸おうとしています。

 

「五代くん、次の授業ないの?」

 

クールでミステリアスな美女が五代に話けてきました。彼女は五代と同じ学科と『黒木小夜子(くろき・さよこ)』です。

 

「ちょっと、つきあってくんないかな」

 

最近モテる、と思った五代はほいほいと誘われるままについて行きました。

 

大学の棟の裏側、人気のいないところへと進んでいきます。五代の頭の中で妄想が膨らみます。

 

きっとキスする流れに違いない……と思っていると、五代のくちびるにべちょっとした感覚がしました。

 

「なにこれ?」

 

「ペンキとハケというものよ」

 

黒木は冷静にそう言いました。

 

事情を聞いてみると、黒木は人形劇クラブの一員で、学祭の準備に人手が足りない、ということでした。

 

劇に使う背景の色塗りなどを手伝ってほしい、と頼まれ、流されやすい性格の五代は、なんとなく人形劇クラブに入ることに。

 

さて、一刻館では、電話というものは管理人室にしかありません。

 

携帯電話もなく、各自の部屋にも電話機がないので、住人への電話は全部、管理人室へとくるわけです。

 

「もしもし一刻館ですが……」

 

管理人室の電話がなり、ひよこ柄のエプロンを着た響子が受話器をとります。

 

「黒木と申しますが、五代さんお願いします」

 

女性から五代に電話なんて珍しい、と思いながら響子は五代を呼びに向かいました。

 

それからです。次から次に女性から五代宛の電話がなります。もちろん、人形劇クラブに所属する女性たちからなのですが、響子が知る由(よし)もありません。

 

なんとなく響子の顔色にかげりがでます。

 

あげく、七尾こずえから電話がかかってきたことで響子は限界に達します。

 

「す、すみません……なんかきょうはたて続けに………」

 

「かまいませんわよ、仕事ですから」

 

謝る五代に、表面上は笑顔の響子。

 

こずえに喫茶店に呼び出された五代は管理人室を後にします。一人になった響子はすかさず、叫びました。

 

「なによ、あの色ガキ!!」喫茶店でななめに向かい合うように五代とこずえが座ります。

 

「電話に出た女の人、誰?」

 

こずえがさぐるような会話をしてきました。

 

「管理人さん(響子のこと)だよ」

 

「じゃ、あの女(ひと)とひとつ屋根の下に住んでるの? たまにへんな気分にならない?」

 

「そ……そりゃまあ…」

 

内心で『たまに』じゃなくていつもだよ、と五代は思いました。

 

「だろうな……美人だしスタイルもいいし……」

 

そう言いながら、こずえは大粒の涙を流しはじめました。

 

店内がざわつきます。このままでは騒ぎになりそうなので、五代はやさしくこずえをお店の外へと誘導しました。

 

『響子さんの話をしてて泣き出した……』

 

『おれが響子さんを好きだってことに気づいて……そんなにおれのことを……』

 

五代がうぬぼれていると、こずえはバッグからコンタクトケースを取り出しました。

 

「コンタクトレンズってゴミがはいると痛いのよおー!!」

 

「コ…コンタクト……」

 

「ごめんね、びっくりしたでしょ」

 

「びっくりしたっ!!」というわけで、五代とこずえの間は平和に終わったのですが……。

 

平和でないのが響子との関係でした。

 

なんと、住人の一の瀬がこずえの泣く姿をたまたま目撃していました。その情報が響子へと伝わっていたのです。

 

一の瀬からその話を聞いた響子は冷静をよそおっています。もくもくとリンゴの皮をむいています。

 

「じゃーね」

 

話を終えた一の瀬が去ろうとすると、「あら、リンゴ食べてってくださいな」と響子は引き止めます。

 

「食べるとこないみたいだけど」

 

響子の手には、けずられすぎて芯だけのこったリンゴがありました。

 

「えっ。あっ!!」

 

「冷静にね……」

 

まだ食べるとこあるわよ、と意地になって芯にかじりつく響子でした。

 

それから響子は五代に対して、とことん冷たい態度をとります。事務的な会話だけで、五代の話を聞く余地はまったくありません。

 

数日後。響子は廊下の端に住人共同の電話を設置しました。

 

響子は五代に、女の子たちにはこちらにかけるように、と言い含めます。

 

「あなただって聞かれたくない話があるでしょう」

 

聞かれて困る話もないし、女の子だって関係ないと五代は言い返します。

 

「あなたが誰と関係もとうと私には関係ないでしょ」

 

「関係もつって……あのねー、やっぱりへんな誤解してますよ。わかんない女(ひと)だな」

 

「まっ。どーせわたしは意固地な後家です!!」

 

響子は管理人室に閉じこもってしまいます。

 

そこへ電話が鳴りました。また女の子から電話でしょ、と思った響子は無視します。しかし、電話が鳴りやみません。

 

いい加減あたまに来て受話器をとると「ぼくです!!」と受話器から五代の声が聞こえてきました。

 

「五代さん?」

 

「ぼく、大学でクラブにはいりました。女の子からの電話はクラブの連絡です。それから、喫茶店でこずえさんが泣いたのは……」

 

直接、顔をあわせない分、響子も静かに話を聞けたのかもしれません。

 

全部が勘違いだったとわかって、ようやくいつもの響子の笑顔が戻りました。

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PART 7 「ギンギラギンにさりげなく」

今日は響子が一刻館にやってきてちょうど一年目です。

 

響子と一周年を祝いたい、五代は勇気を出してディナーに誘います。

 

カチコチに緊張する五代と対照的に、響子は普段のテンションで「はい」と即答しました。

 

五代「じゃ、6時に『ま・めぞん』で」

 

響子「はい、6時に『豆蔵(まめぞう)』で」

 

間違った約束に気づかず、五代は大喜びです。響子も一周年を覚えてくれていたことを喜ばしく思っています。

 

五代の計画とは別に、一の瀬も一周年祝いをしようとしていました。主賓の響子を誘うのですが、響子は先約があると断ります。

 

せっかくの主役がこないと始まらないので、なんとか顔だけでも見せられないか、と一の瀬は頼みます。

 

「5時半から『豆蔵』でなんだけど」

 

「あら、『豆蔵』? 『豆蔵』で待ち合わせしてるんですよね、6時に」

 

「誰と?」

 

一の瀬の質問に響子は黙秘しました。

 

「言いたくないらいいよ、6時になればわかることだしね」

 

一の瀬はそれ以上は追及しませんでした。

 

よりによってみんな集まる豆蔵を待ち合わせ場所にするなんて、五代は気が利かないと響子は思います。

 

だけど、そのおかげでみんなとのお祝いに顔を出せるので良しとしました。

 

夕方になり、一刻館の住人(一の瀬、朱美、四谷と飛び入り参加の三鷹)とともに豆蔵で待つ響子。しかし、いくら待っても五代は来ません。

 

「もう6時半だよ。悪いやつだね、あんたをふるなんて」

 

一の瀬が響子にそう言うと「五代さんは絶対来ますっ!!」と力強く反論しました。

 

そこで初めて、五代が響子の待ち合わせ相手だと一の瀬たち住人は知ります。

 

「『ま・めぞん』じゃないの、待ち合わせ?」

 

ふと、朱美(あけみ)がつぶやきました。響子はそれで自分の間違いに気づき、慌てて駆け出します。

 

待ち合わせの6時からはもう40分以上経過していました。

 

ま・めぞんで独り待つ五代は『8時までまとう』と覚悟を決めていました。そこに息を切らせた響子がやってきます。

 

「五代さん……」

 

「響子さん……」

 

初めて会ったときの衣装に身を包んだ響子がそこにいました。

 

「ごめんなさい………」

 

響子の目からぽろぽろと涙がこぼれます。怒ってないですから、と五代は響子の肩を抱き寄せました。

 

本人はさりげなくやったつもりですが、響子としては『仕方ないわね、遅れてきたんだから』と若干、いやなのを我慢しているようです。

 

響子がバッグを豆蔵に忘れてきた、と言うので、五代と響子は豆蔵に戻ります。

 

「これで全員そろいましたーー!!」

 

豆蔵にいる一の瀬は強引に二人を席につけます。

 

これから二人だけで食事に行く、という五代の話など聞いてくれません。

 

響子は『しょうがないわね、ま、いいか………』と脱力気味に思うのですが、五代のほうを見ると……。

 

一言も発さずに、ふくれっ面でした。

 

『よくない……』珍しく響子のほうが青ざめました。

 

夜も更け、一周年パーティーは終わりました。五代と響子も一刻館に帰ります。

 

道中、必死に謝る響子に、五代は「もういいですよ」とほほえみかけます。

 

「本当に?」

 

不安そうに、上目遣いで確認してくる響子。

 

「本当ですとも」

 

いい雰囲気です。五代はやさしく口づけしようとし……。

 

「どさくさにまぎれてなんてことするんですっ!!」と平手打ちを食らいます。

 

「雰囲気に酔わない人だなー」

 

五代は怒る響子の背中を見ながら、そう言うのでした。

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PART 8 「キャンパス・ドール」

学祭の追い込み時期です。人形劇クラブの五代は、一生懸命、劇に使う人形を作っています。

 

意外に手先が器用なようで、五代の作る人形はクラブの女の子たちに好評です。人形のメイクまで五代が担当しました。

 

帰宅して、玄関先で五代が靴を脱いでいると、横に寄り添うように響子が座ってきました。

 

「大学祭に行ってもいいですか?」

 

五代は二つ返事で承諾します。二人でそのまましゃべっていると、朱美が帰ってきました。

 

いい年して、玄関先でおままごと。仲がいいわねー」

 

「違いますっ!! 私たちそんな仲じゃありませんっ」

 

「わかった、わかった。おやすみなさい」

 

朱美がそういうと、気まずくなったのか、照れくさくなったのか響子もそそくさと退散しました。

 

『なにもああまではっきり否定することないのに』と思う五代でしたが、響子が遊びに来てくれる、それだけで笑みがこぼれます。

 

口の悪い住人たちからは「単なるきまぐれ」じゃないのかと水を差されてしまいますが。

 

時がたちいよいよ学祭本番です。

 

五代は人形劇で王子様役の人形を操りながら、セリフをしゃべっています。

 

見学しに来た響子は五代が王子様をやっているのをみて、かわいらしく笑うのでした。

 

劇の幕が下りると、響子は五代に挨拶にいきます。本当に来てくれた、五代の喜びもひとしおです。

 

その様子を見て、人形劇クラブの女性はあることに気づきました。

 

響子の顔と、五代の作ったお姫様の人形の顔が似ているのです。

 

「そーいえば、お姫様のメイクしてる姿、執拗だったわね。恋人の人形だったのかー」

 

クラブの女の子たちから指摘され、五代と響子は「うちの管理人さんだよ」「そうなんです、恋人なんてそんな……」と否定します。

 

一通り五代の活躍を見た響子。もう用事がすんだので帰ろうとしたのですが、そこを人形劇クラブの女性から止められました。

 

次の公演、代わりにお姫様役をやりませんか、と。

 

強引な流れに逆らうこともできず、響子はお姫様役をすることになりました。

 

人形劇の舞台裏はせまく、人形をあやつる演者どうしは、どうしても密着しがちになります。

 

響子の体がくっついて、五代はもう劇どころではありません。セリフがすべてふっとんで、響子に言いたいことを言うだけ。

 

劇としてはなんとか成立していましたが、シリアスな話がコメディになってしまいました。

 

すべての公演を終え、五代と響子は二人で帰路につきました。

 

「楽しい思いをさせてもらいました」

 

響子は五代にお礼をいいます。高校を卒業してすぐに結婚した響子は、大学生活、というものに憧れがあったのでした。

 

五代はバッグから王子様とお姫様の人形をとりだし、お姫様のほうを響子に渡します。

 

「きょうは本当にありがとう」

 

お姫様のお人形をおじぎさせながら響子が言います。

 

「どういたしまして」

 

五代も王子様の人形を使って、それに答えました。

 

「でも少しは反省してください、劇をめちゃくちゃにしたのはあなたですよ」

 

「でもあなたがすりよってくるから、こんなふうに」

 

五代は王子様の人形をぴとっと、お姫様の人形にくっつけます。

 

「またっ」響子のお姫様が五代の王子様をはたきます。

 

「かわいそうな王子様」と落ち込む五代に、響子は笑顔で「おやすみなさい」と手を振りました。

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PART 9 「ケガの功名争い」

テニスのプレイ中、響子はこけて足を痛めてしまいました。相手をしていた三鷹は責任を感じ、響子をお姫様だっこして病院へと運びました。

 

正確に言うと、責任感というよりも下心だったかもしれませんが……。

 

結構、ケガがひどかったようで病院から戻ってきた響子はふとんに寝込むことになりました。

 

三鷹も、一刻館の住人達も、もちろん五代もみんな響子を心配しています。

 

そのため、次々とお見舞いの品が舞い込みました。

 

まずは三鷹の手料理。

 

次は四谷のたこ焼き。

 

続いて朱美のたい焼き。

 

とどめは五代の作ったインスタントラーメンです。

 

五代は何も知らずに善意で持ってきたのです。

 

そんな五代を落胆させないために、文句ひとつ言わず、響子は笑顔でラーメンを食べきりました。

 

こんなに病人扱いされたら、たまらない、と思った響子は多少無理してでも起き上がることにしました。

 

服を脱ぎ、ぬれタオルで体を拭いていると、そこにノックもせず、五代が入ってきました。

 

半裸の女性の前に若い男性。

 

一瞬、時が止まりました。

 

「あっ、あのっ……」

 

あまりにも驚きすぎて五代はどうすればよいかわかりません。

 

「バカーっ!!」

 

響子は洗面器を投げつけ、五代は外に追い出されました。

 

しばらくして、落ち着きを取り戻した響子は部屋に転がっている見慣れぬ小瓶に気づきます。

 

ラベルと見ると『胃腸薬』と貼ってありました。

 

実は、インスタントラーメンを出した後、一刻館の住人達と話して、五代は響子が無理をしていたことを悟りました。

 

だから、響子の体を思いやって五代が急いで胃腸薬を持ってきていたのです。

 

ノックもせずに入ってきた理由はこれだったのか、と響子は納得し、ひそかにうれしく思いました。

 

翌日、そのような状況を知らずに、三鷹が再度、手料理をふるまいに来ました。

 

響子がおなかを壊していて食べられない、と答えると、ちょうど五代が管理人室にやってきました。

 

材料がもったいないから、という理由で三鷹は五代に料理を食べてよ、と頼みました。

 

恋敵の料理になんとも言えぬものがありましたが、響子も勧めるので五代は食べることにしました。

 

どうせたいしたことないだろう、と思って食べると、これがまた美味しい。

 

悔しいですが、「うまいですよっ!!」と褒めるしかできません。

 

「ほんとおいしいですよね。三鷹さんのお嫁さんになる人、しあわせね……」

 

この響子の相槌に、五代と三鷹、激震が走ります。

 

まずいことを言ったと響子は急いで「一般論ですわよ!!」と他意はないアピールをします。

 

響子の釈明は、ふたりの耳には一切、入っていないようでした。

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PART 10 「影を背負いて」

響子が商店街に買い出しに出ていると、突然のどしゃぶり。

 

困っていると、こずえが通りかかります。

 

こずえが「どうぞ」と言うので、響子は好意に甘えることにしました。

 

「五代さん、学校ですか?」

 

響子が必死で話題を探そうとしていると、こずえのほうから話を振ってきました。

 

そこで響子は五代の詳細のスケジュールを答えます。

 

「なんでそんなにくわしいんですか?」

 

「なんでって……管理人ですから」

 

「じゃ、ほかの住人さんのことも、そんなに把握してるんですか」

 

「ええ、それはもう」

 

五代のスケジュールしか知らないとは言えず、思いっきりうそをつく響子でした。

 

それから二人は管理人室でしばらくの間、お話することにします。テーマはやっぱり恋の話。

 

こずえが恋人いないんですか、と聞くと、響子は未亡人だと返します。

 

「ごめんなさい。よけいなこと言っちゃったみたい……」

 

「いいんですよ。でも、思い出しちゃった…」

 

降りやまない雨に、かつて愛した人、惣一郎との淡い思い出。

 

響子が高校生の時です。

 

惣一郎は講師のバイトとして働いていました。

 

ある雨の日のこと。帰宅しようとした響子のもとに一つの情報が届けられます。ちょうど、惣一郎も帰ろうとしている、と。

 

それを聞いた響子は一計を案じます。これは相合傘するチャンス!

 

響子は傘を持っています。惣一郎も傘を持っています。相合傘にはなりません。

 

そこで響子は自分の持っていた傘を閉じ、なんとそれを自分の背中につっこんで隠したのです。背中の襟(えり)からは傘の柄が飛び出ていますが、細かいことは気にしません。

 

「冷たーい」と傘持ってないアピールをしながら、そのまま惣一郎に近づいていきます。

 

惣一郎は「はいっていきなさい」と紳士的に傘に入れるのでした。

 

しかし、惣一郎の目は節穴でもないので、「カゼひきますよ」と響子の傘を引き抜いて注意しました。

 

そんな話を聞いて、こずえは率直に「ずいぶん、おもしろいことするんですね」と感想を述べます。

 

今度は、こずえが話す番です。

 

「五代さんね……あたしの初恋の人にそっくりなんですよ」

 

「まあ!!」

 

「あたしが一方的に憧れてただけなんですけど」

 

「へえ、おもしろい人だったんですか?」

 

「すてきな人でしたー」

 

五代にそっくりですてきって感想はおかしいと響子は思いました。

 

それからでしょうか。五代がこずえに会うというのに、響子は別に怒ったりしません。むしろ、こずえとの仲を応援までしてきます。

 

『どーなってんのよ、この前までやきもち妬いてたくせに』

 

その疑問はこずえと話すことで氷解しました。

 

「きのうね、だんなさま(惣一郎のこと)の話、聞いちゃったんだ」

 

こずえは響子の傘のエピソードを五代に伝えます。

 

五代はショックを受けました。

 

奥ゆかしい響子が情熱のままに大胆な行動をとっていたのです。

 

それほどまでに好きだったということに。

 

そして妬かなくなった理由に思い至ります。惣一郎がまだ響子の心の中にいる。

 

『響子さんはバカだ。いつまでも死人に縛られて。』

 

『どうしておれを見てくれないんだ』

 

こずえと別れ、たそがれながら歩いているといつのまにか、どしゃぶりの雨がふりかかっています。

 

今は雨に濡れていようが気にする気分にもなりません。

 

「五代さん」

 

傘をさし、買い物帰りの響子が五代に声をかけてきました。

 

「はいってらっしゃい」

 

「結構です。一人で歩きたいんです」

 

「だめよ!! カゼひいたらどうするの」

 

「ほーっといてください」

 

「なにすねてんのかしら?」いつもなら駆けよってきそうなものなのに。響子は首をかしげました。

 

『くそおっ、人の気も知らないで。知ってるくせに』

 

片思いの苦しみを五代はかみしめます。自分が好きだということを響子は知っているでしょう。でも、この苦しみや葛藤なんて響子にはわからない。

 

それが五代を意地にさせていました。

 

雨にあたり体が冷えたのか、五代はくしゃみをします。

 

「すみません、やっぱりいれてください」

 

恥ずかしそうに五代は頭を下げました。

 

「ほら、みなさい。カゼひいた」

 

二人は並んで、相合傘で帰ったのでした。

 

PART 11 『マフ等(ラー)、あげます』

また、クリスマスが近づいてきました。去年はプレゼントを渡せなかった五代。今年こそはと意気込みますが……。

 

いかんせん、苦学生の五代はお金が厳しいのです。予算は2000円程度……。

 

気持ちがあれば大丈夫、と自分を納得させ、明日、買いに行くことを決めます。

 

そうやって響子のことを考えていると、ここ数日、響子と会っていないことに気づきます。

 

響子が管理人室にこもりっぱなしだからです。

 

一の瀬は、自分からノックして会いに行けば、と助言するのですが、「ぼくはナイーブなんです」と及び腰。

 

次の日、五代は商店街にイヤリングを買いに行き、その帰りにこずえと会います。

 

こずえから電話があって呼び出されていたのです。

 

「で、きょうはなにか……」

 

「うん、一日はやいんだけど………メリークリスマス」

 

こずえは手編みの帽子を五代にプレゼントしました。

 

『こずえちゃん、計算にいれてなかった』

 

五代の手元にはさっきかったイヤリング一つしかありません。仕方なく、五代はそれをこずえに差し出しました。

 

「うわー、イヤリング!! おとなっぽいの」

 

響子を想定して選んだから、と言えるはずもなく五代は「似合ってるよ!!」と褒めました。

 

響子に渡すはずだったのに! どうして自分はこうも優柔不断なのか、五代は自分の性格を恨みます。

 

しかし、こずえの喜ぶかを見て、『これでよかったのだ………』と思い直しました。

 

一刻館に帰ると、数日ぶりに響子が出迎えてくれました。ひさびさに響子に会えて五代はテンションが上がります。

 

「どうしてたんです? この三、四日?」

 

「はい、これ」

 

笑みを浮かべながら、響子はマフラーを五代の首にかけました。

 

憧れの響子からの手編みのマフラーです。喜びで目頭が熱くなります。

 

問題は一つ。今度は響子に渡すプレゼントがないこと。もう一つなにか買う余裕など五代にはありません。

 

夜になり、なぜか、朱美と四谷が五代の部屋で飲み会をしています。

 

それを横目に、五代は必死に家探ししていました。去年、買って渡せないままだったブローチ(※一巻PART 3)を探すためです。

 

包装紙などはなくなっていましたが、徹夜作業でなんとか見つけることができました。

 

徹夜の勢いをそこなわないうちに響子にブローチを渡します。

 

「まだこんなかわいい物似合うかな?」

 

「なに言ってんですか、まだ若いくせに」

 

「そうですね、まだ22だもの」

 

それを聞いて、五代は自分との年齢差を考えます。五代は20歳。

 

『結婚の障害にはならんよな……たったの2歳……』

 

24日夕方。この日は例年通り、朱美の勤めるスナック『茶々丸(ちゃちゃまる)』でクリスマスパーティーです。

 

五代と響子は一緒に茶々丸に向かいます。

 

二人が歩いていると、三鷹もパーティーに出席するようで、出くわしました。

 

不意のライバルの登場です。

 

五代は響子からもらったマフラーを三鷹に見せびらかしました。

 

「このマフラー、あったかくてあったかくて。管理人さん(響子のこと)の真心がこもってんですから」

 

これで勝った、どうだ、という顔で三鷹を見ますが、三鷹は涼しい顔です。

 

「ぼくもしちゃお」

 

そう言って、三鷹はバッグからマフラーをとり出しました。

 

「音無さん(響子のこと)の手編みのマフラーですよ」

 

そう、三鷹も同じく、響子から手編みのマフラーをプレゼントされていたのです。

 

「ご…ごめんなさい。同じマフラーなんて芸がなかったみたい」

 

響子の謝罪に五代と三鷹は「いえいえ」「ガラが色違いなとこがにくいですよ」と返します。

 

そして、内心では両名とも『自分だけが特別だと思ったら、大間違いだぞ!!』と息巻くのでした。

 

しかし、不安もあります。どうして響子は二人に同じものをプレゼントしたのか?

 

両てんびんにかけられている、ということなのか。それとも、同レベル、ということなのか。

 

茶々丸につくと、すでにいつものメンバーが集まっていました。

 

みんなマフラーをしています。

 

同じ柄のマフラーです。

 

響子はクリスマスプレゼントとして、全員にマフラーを編んでいたのでした。

 

自分が響子の特別、ということではなかったけれど『ま、いいか』と五代は腕を組みました。

 

<二巻了>

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