当て屋の椿2巻を無料で読む方法とネタバレ紹介!漫画バンクzip,rarは危険|篝(かがり)が危機!?八葉(やつは)とは何者?

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悩んでいる人
『当て屋の椿』2巻を無料で読む方法とネタバレが知りたい。

 

本記事はこんな疑問を解決します。

 

今回ご紹介する『当て屋の椿』2巻を無料で読む方法は、登録不要もちろん合法です。

 

違法手段ではないので、安心してください。

『当て屋の椿』2巻を無料で読む方法は?

いきなり、結論です。

 

『当て屋の椿』2巻はこちらの白泉社が運営する漫画アプリマンガParkにて無料で読むことができます。

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『当て屋の椿』2巻 ネタバレ紹介!

第九話 浄瑠璃心中物語(その一)

馴染みの飯屋で寛ぐ椿のもとに、息を弾ませ男がやって来ます。

 

椿の親友で遊女の(かがり)が床入り中に客に首を絞められ心中を仕掛けられたのだと告げられて、慌てて篝のもとに向かう椿は店につくなり篝の傍にいた男を蹴り倒し踏みつけます。

 

「死にたいなら一人で死ね!今死ねゴミ野郎!」と罵りながら踏みつけた男の顔を良く見て見るとそれは顔馴染みの春画描き、鳳仙でした。

 

たまたま春画を描きにやって来ていた鳳仙が、首を絞められて泣いていた篝を慰めていた姿を見て椿は勘違いをしてしまったのです。

 

当の篝は親友の椿に土産の菓子を貰ってご機嫌になり、やがて眠ってしまいました。

 

篝は心も頭も幼子相当のままで、身体だけ娘盛りに育った遊女で人懐っこくあどけない性格です。

 

椿は、怒り狂いながら心中や言い訳などできない篝につけこんだ相手の顔を見に仕置部屋に向かいます。

 

仕置部屋に吊るされていたのは八葉(やつは)という青年でした。

 

鳳仙は以前同じ塾で絵の手習いを受けていた男だと驚きます。

 

楼主は八葉のことを、今は人形浄瑠璃の頭を作る人形師で、名工松葉の弟子のひとりだと解説します。

 

痛めつけられる八葉に駆け寄ろうとした鳳仙は楼主に止められ、心中沙汰で公儀に目を付けられたくない、このことは口外無用だと釘を刺されます。

 

楼主が神経質になるのも無理からぬことで、心中を企てた一方が残れば主犯とし斬首され、両方生き残った場合も三日間、日本橋に全裸で晒され公民権をはく奪されるという重罪なのです。

 

心中死したものは弔ってもいけないと定められています。

 

身元が保証されたことで、二度と足を踏み入れぬことを条件に開放された八葉に肩を貸してやり廊下を歩く鳳仙ですが、女が苦手なことと春画師であることを馬鹿にされ、お前などには俺の悩みは分からぬと言われてしまいます。

 

するとそれを見ていた椿が廊下の上から身を乗り出し、八葉の頭に酒を引っかけながら、師匠の名のおかげでお目こぼしされた男が何を言うのかと、自尊心の強い八葉が気にするであろう箇所を的確に指摘します。

 

吉原ではあんたはお尋ねものだ、しっぽを巻いて逃げるがいいと告げられた八葉は背中を丸めて去ります。

 

飲みなおす椿は鳳仙に、八葉のことが気に入らないと苛立ちを述べます。

 

鳳仙は、名工・松葉の実子は自分だけなのに兄弟子に敵わないから余裕がなく苛立っているのだろうと顔なじみの彼を庇いますが、椿は廊下で酒を被った八葉が懐から取り落とし、慌てて拾った小さな花柄の女物の巾着を見たことで疑念を抱いていました。

 

八葉は本当に篝と心中する気などあったのだろうか、と椿は呟きます。

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第十話 浄瑠璃心中物語(その二)

八葉は若い女性、福寿(ふくじゅ)を抱きながら父であり師である松葉の言葉を思い出しています。

 

父であり師である松葉に自作の人形の頭を見せた時に、整っていると評されたもののそれだけだと投げ捨てられ、人形に命を吹き込み育てるのは人形遣い、人形に性(さが)を吹き込むのは人形細工師、これではただの木偶だと踏み砕かれたことを思い浮かべ、怒り任せの性交に福寿(ふくじゅ)が痛がっても気づかないままです。

 

そんな自分勝手な八葉に福寿は恋焦がれていて、疲れたら食べてね、と別れ際に巾着に入った甘いものを差し出します。

 

今度、父が世話になっている人の紹介で見合いをしなければならないのだが八葉が好きだと告げる福寿に、八葉は結婚しても十日に一回くらいは会えるだろ?と身勝手な返事をするだけです。

 

家に帰った八葉を出迎えたのは兄弟子の檜扇(ひおう)でした。

 

吉原からの知らせは、女郎も無事だったことだし師でもある父・松葉には言っていないと口にする兄弟子は何か師に言われたのかと心配しますが、八葉は檜扇さんには分からないよと口を閉ざします。

 

それを見て檜扇は「鳳仙を知っているか」と八葉には聞き逃せない名前を出します。

 

名の通った絵師でもないヤツの春画がこうも好まれるのは、今にも男を喰らいつくさんばかりに迫ってくる飢えを女から感じさせるからなのだ、見るものをゾクリとさせると語るのです。

 

それを聞いて、八葉は女を抱いたこともないヤツの絵がどうして一目置かれるのかと苛立ちを募らせ、福寿が持たせてくれた巾着から金平糖を取り出して貪り食べます。

 

小娘と関係する程度ではその奥を知ることは出来ないと檜扇に言われ、八葉は分かっている、と気まずそうに答えます。

 

女郎の篝に自分に欠けているものを求め床入りしたものの、ふとした拍子に赤んぼのようと篝が口にしたのをバカにされたと感じて激怒し首を絞めた時、何かを見た気がしたと思い返します。

 

そのころ、肌も露わな女郎たちに囲まれた状態でうっかり雑魚寝をしていた鳳仙は目覚めて悲鳴を上げていました。

 

女が苦手で触れられないのにも関わらず、椿にしこたま飲まされてそのまま寝てしまっていたのです。

 

仕事あがりでくたくたな女郎たちを起こさぬように、椿の読んでいる瓦版の内容を尋ねた鳳仙は、遊女と醤油屋の手代が心中したという記事だと聞かされます。

 

心中者は死後、来世に至ってまで変わらぬ愛を誓うと信じているが、歩む先にまた同じ来世が続くなんて悪い冗談だと椿は冷ややかに笑います。

 

かたや、八葉は暗い部屋の中で、女が首を絞められて死にゆく姿を見つめていました。

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第十一話 浄瑠璃心中物語(その三)

飯屋で鳳仙がこみ上げる吐き気と戦っているさまを見て、馴染みの客と長屋の面々は酒が酸っぱくなるとか営業妨害だとか口々に言い募ります。

 

椿は「物見遊山でホイホイ行くからそんな目にあうのさ」と冷たく言い放ちます。

 

鳳仙は好きで行ったわけではないとの抗議を飲み込み、溜息をつきます。

 

以前、春画で描いた遊女が飛脚と心中したので死体の確認に番屋(ばんや:今で言う交番に近いもの)に呼ばれたのです。

 

店員の娘は、愛し合う二人が手を取り合って死出の旅、という印象を受ける心中の言葉に頬を染めて憧れめいた反応を見せますが、鳳仙はそんなものではないと暗い顔をします。

 

交合したまま死んでいたと声を控えて言う鳳仙に、椿はハメたまま逝っちまったのかと身も蓋もない言い方をします。

 

体を重ねて紐で結びあって、離れぬようにするのは心中ではよくあると続ける椿に、鳳仙は身体は離れていたと不可解なことを補足します。

 

男のイチモツだけが女の中に入ったままだった、しかし心中は男が力が弱く死にきれない女を先に殺してから逝くものだろうと疑問を口にするのです。

 

それを聞いた椿は、イチモツが切断された原因は運ぶ必要があったからではないか、だとすると人手が足りないじゃないかと推理します。

 

似たようなことをしでかした男に心当たりがあると言う椿に、鳳仙は八葉のことかと問いかけます。

 

鳳仙は椿に、八葉は篝に心を寄せているのではないのか、と問いますが、あいつは懐に篝のものではない女物の巾着を忍ばせていた、心中は偽りだったと断言します。

 

そんな話を交わしたのち。

 

川べりに繋いであった小舟の中で右手の親指以外を切り取られた男と、寄り添う女の血まみれの死体が見つかります。

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第十二話 浄瑠璃心中物語(その四)

川べりに繋がれていた、人が二人横たわればいっぱいになるくらいの小舟の中で八葉(やつは)は鳳仙の知らぬ女と心中死してしまいました。

 

鳳仙はそれを知るなり椿の元に伝えに急ぎます。

 

「椿っ、八葉が―」と言いながら長屋の彼女の部屋を開けると椿は入口に尻を向けて本の山に頭を突っ込み、何かを探しながら
「知ってる」と振り返りもせず答えます。

 

鳳仙は、父親が役人にも口止めしていた、身内しか知らないはずなのに知っているのかと食い下がります。

 

すると尻を向けたままの椿は、臆病なくせに八葉が最近立て続けに起きる心中事件にかかわっているのではないかと先日話したことの真相を確かめようと探していたんだろうと話しかけます。

 

その流れで八葉の心中を知ったんだろう、お節介が過ぎると怪我をするよと尻を向けたまま説教した後でお茶を要求します。

 

(なぜぺちゃくちゃ説教する尻に茶を淹れてやらねばならんのだ)と腹を立てた鳳仙は顔を見せろと怒鳴りますが、椿は、「あっちだよ、あっち」とやっと本の山から頭を抜き振り返ります。

 

尻に気を取られていた鳳仙が振り返ると、部屋には先客の福寿が座っていたのです。

 

お茶を出す鳳仙に、福寿は八葉とはどういう知り合いなのかと訊ねてきます。

 

鳳仙といいます、以前同じ塾にいました、と名乗ると名に良くない印象を持っていた福寿は睨み返してきます。

 

そのあと椿に向き直り、当て屋としての椿に依頼をしたいと切り出します。

 

彼女が探して欲しいと口にしたのは、小さな花柄の巾着でした。

 

八葉は甘いものがないと落ち着かなくて、巾着に甘いものを入れて肌身離さず持っていたと言います。

 

椿はその言葉を本から目を離さずに聞いていますが、他になくなったものはと訊くと指が無くなっていると福寿は答えます。

 

その話を横で聞いた鳳仙は、指は切ると遠くへ飛んでしまうので役人は探そうとはしなかったと答えます。

 

椿は、心中は普通力の弱い女を先に男側が確実に殺め、そのあとで自死するものだが死んだ女に指を贈るのか、八葉の傷の深さは、指を落とした手で作れる深さだったかと疑問を次々に口にします。

 

なにより、心中の場からあるはずのものが無くなっているのなら人手が足りないんじゃないのかと椿は決定的な矛盾を口にします。

 

偽りの心中、と思い浮かんだ言葉を口にした鳳仙に、福寿は目を見開いて詰め寄った後で今まで浮かべていた険しい表情を崩し、鳳仙の胸に縋って泣き出します。

 

恋焦がれた八葉が他の女と心中したことが偽装であると知り、押し込めていた感情を露わにして大泣きする福寿を横目に、椿は依頼を受けると口にします。

 

福寿が帰ったあと、鳳仙は「吉原の巫女」と異名を持つ篝に占って貰ったらどうかと椿に提案しますが、椿はその意見には激しく反対し、絶対に篝の元に行くな、耳に入れるなと厳しい口調で制止します。

 

福寿は亡き八葉を悼んで彼の家を訪ねますが、そこで兄弟子の檜扇に出会います。兄弟子の手には探している巾着がありました。

 

驚きを隠せず、なぜ八葉さんの巾着を持っているのかと訊いてしまった福寿は、椿の言葉を思い出します。

 

依頼を受けるが、但し、巾着を持っている者をもし見かけたとしても決してそのことに言及しないこと、それを持っているものが八葉を手にかけたものなのだからと釘を刺されていたのです。

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第十三話 浄瑠璃心中物語(その五)

吉原の遊女で椿の親友でもある篝(かがり)は千里眼を持ち、敬意を込めて「吉原の巫女」とも呼ばれています。

 

鳳仙は彼女を訪ね、椿が依頼を受けた八葉の巾着のありかを知らないかと問いかけます。

 

繰り返し丁寧に説明しても、椿の名を聞き「つーちゃん」、八葉の名を聞くと「だんなしゃ?」とオウム返しにするだけで、言葉で意思疎通をするのは困難です。

 

頭を抱える鳳仙を見て、周囲の遊女は篝に見て貰いたいなら右目を閉じさせなければと助言します。

 

しかし鳳仙は女が苦手で今まで触れたこともありません。

 

しばらく躊躇った後、篝の右目に指を乗せて瞼を押さえます。八葉の巾着を、と訊ねると「人形、つーちゃん」と答えます。

 

更に情報を得ようとして、「浄瑠璃小屋?椿がいるのか?巾着は?福寿(ふくじゅ)が八葉に渡した巾着は小さな花柄でー」と言葉をかける鳳仙の前で、篝は突然障子を破り、いや、いやと繰り返し口にしながら壺も手あたり次第に壊してまわり出します。

 

それを見た遊女は慌てて鳳仙の着物を掴んで逃げるように促します。

 

篝は重度のヤキモチ妬きで、自分の旦那(指名してくれるお客)に他の女がいることを聞かせてはいけないのだと説明を受ける間に、鳳仙は顔をひっかかれてしまいます。

 

一方、八葉の兄弟子である檜扇(ひせん)は八葉の遺作の人形の頭を手に取り、物思いに耽っています。

 

八葉が苦悩し、いつも技を盗もうと隠れ見ているのに気づいていた檜扇は、女を呼び寄せて首を絞め殺しているところ、つまり自身の創作の秘密をわざと見せつけたのです。

 

その光景を目にした八葉が見つけたのは「美しい女の奥に深く潜む醜悪」でした。

 

しかしそれは檜扇が駆使している、人形に性を持たせる手法とは違う浅い理解でした。

 

「所詮子どもは子供という事か」と呟く檜扇の手にした八葉が作った頭を指差し、それはあたしには絞殺された女の顔にしか見えないと言いながら椿が現れます。

 

なくしものを捜すのが仕事の当て屋の椿だと名乗り、ある人形細工師に聞きたいことがあるのだと告げます。

 

椿は最近「曾根崎心中」と「冥途の飛脚」の人形を手掛けた細工師を捜しているのだと言います。

 

物語で心中するのは遊女と醤油屋の手代、遊女梅川と飛脚という組み合わせであり、それらと同じ組み合わせの心中があったが知っているかと訊ねます。

 

言い訳をせず、檜扇はそれらの人形と作ったのは自分で、そしてそれらの心中があったことを知っていると自分が不利になることも淡々と問われるままに答えます。

 

心に世の理(ことわり)をねじ伏せた理屈を飼う相手の持論を聞くことに関心を抱く椿は、巾着の在処と共に檜扇の根源的な動機を訊こうとしますが警戒して部屋の戸に背をつけたままで会話を重ねます。

 

檜扇が取り出して見せた巾着にも容易に近づかない用心深い椿でしたが、檜扇に部屋の押し入れの中に押し込めて縛り上げた福寿の姿を見せられ、一瞬だけ気を逸らせてしまいます。

 

その隙に、檜扇は部屋に火を放ちます。

 

そのころ、やっと篝(かがり)の嫉妬からくる大暴れは落ち着き、抱きとめている妓楼の男からきちんとこの始末はつけて貰うと告げられて項垂れる鳳仙に、たまたま髪が右目にかかった篝が新しい託宣を述べます。

第十四話 浄瑠璃心中物語(その六)

篝(かがり)が鳳仙に託宣を告げます。

 

「ほーしゃん(篝は鳳仙をこう呼ぶ)は鬼退治へ」

 

内容に心当たりがなく戸惑う鳳仙の周りで、火事騒ぎが起きます。

 

若い衆が浄瑠璃小屋のあたりで火が出ていると言い、鳳仙は椿がそこにいるのかと慌てて向かいます。

 

鳳仙が到着した時には火の勢いはすさまじく、とても火元に近づけそうにない様子になっていました。

 

周囲の人々から、髪の長い女がまだ逃げ遅れているのではないかと曖昧な目撃情報を聞き、鳳仙は水を被って火元の浄瑠璃小屋へと急ぎます。

 

煙に巻かれながらも、鬼退治に、の言葉から考えられる箇所を探り、見事に椿と福寿を見つけ出します。

 

火事の現場から離れながら、遊女や手代を心中に見せかけて殺し、弟弟子の八葉(やつは)も殺した檜扇(ひせん)は人形に性を込める手法を思いついたのはいつであったかと記憶を辿りつつ、八葉が福寿からいつも持たされていた巾着に入った金平糖を口に含みます。

 

その直後、檜扇は大量に吐血しその場に倒れます。血の味を感じながら、過去の記憶が鮮明に蘇ります。

 

檜扇は幼いころから人形が好きで、遊女だった母が仕事をしている間はその人形を母と思い寂しさを紛らわせていました。

 

ある時客に切り殺されてしまった母を目の当たりにし、他人に抱かれる母も、朽ちる肉を持つ母も不要であり人形にこそ母が宿ったと強く思うようになったのでした。

 

檜扇は檜扇だけの理屈を秘めたまま、往来で事切れます。巷では人形の呪いと噂される最期でした。

 

馴染みの飯屋で酒を飲みながら、椿と鳳仙は事件について語らいます。

 

椿は、福寿草には毒がある、と訥々と語り、それを聞いた鳳仙は巾着に入った甘い菓子の存在を思い出します。

 

「そこまで誰かを欲したことの無い者には、分からないことなんだろうよ」と椿は語り、鳳仙は巾着は返したのかと訊ねます。

 

中身までは保証しないけど返した、と椿が答えます。

 

そのころ、福寿は街なかで八葉に似た人物を見かけ、追いかけた先で崩れてきた建材の下敷きになっていました。

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第十五話 尼寺に潜む怪物(その一)

副業で春画を描いている青年絵師・鳳仙は体調不良を自覚しながら、屋形船の中で男女の絡む姿を写生しています。

 

揺れがひどい船の上、更に激しく動く男女の肢体を写生する行為にいよいよ不調を覚え、屋形船の部屋の中から出て風にあたって休憩していたところをモデルの女性に勢いよく胸からのしかかられて転倒し、そのまま気を失ってしまいました。

 

気が付けば上方訛りが鈴の音のように心地よく響くあけすけにものを言う女医、竜胆(りんどう)の診療所に寝かされていた鳳仙でしたがそこにイモリや蛇が入った袋を抱えた椿がやって来ます。

 

椿と竜胆は友人のようで、竜胆は椿のことを何でも犬みたいに探し当てるヤツだとの認識をしていました。

 

店内の様々な薬の材料も椿が揃えたのかと鳳仙が聞けば、椿はここらで手に入るものはね、と草臥れた顔で返事をします。

 

様々な素材が納められている棚を眺めていた鳳仙は、鬼灯が多いと何気なく口にして、筋骨隆々とした竜胆の助手の男・日輪に首を絞められてしまいます。

 

要は堕胎に使うものだと椿に説明されて、表向きは取り締まりの対象となっている堕胎も扱うのかとぎょっとする鳳仙でしたが、気晴らしに酒を飲み始めた竜胆は問題を抱えた女に女医の自分は頼りにされるのだと物憂げな表情で吐露します。

 

成り行きで椿と竜胆と鳳仙は酒を酌み交わします。

 

その砕けた雰囲気の中で、竜胆は酒の肴に面白い話を聞かせよか、とこう語ります。

 

「男に肌を触れさせたこともなく、それどころか男の手を握ったことも口をきいたこともない、そんな女が妊娠していた」と言う内容です。

 

それはいつの話だと聞き返す椿に、竜胆は今朝呼びつけられて聞いたのだと口にします。

 

尼寺の中で起きたことかと椿は推理し、竜胆はそれを肯定します。

 

竜胆は尼寺に出向き妊娠していると診察結果を告げましたが、尼僧は「わが身に賜りしは御仏の子にございます」と答えたのでした。

第十六話 尼寺に潜む怪物(その二)

鳳仙は椿と険しく長い石段を登っています。

 

尼寺には女しかいないため、悪い輩から守るために僧寺に付属しているのだと椿は解説しながら、息を切らせて見るからにへばっている鳳仙をおぶってやろうかと揶揄います。

 

そんな軽口を聞きながら、鳳仙は椿が竜胆と酒を飲んでいた時に酔って語った言葉を思い返します。

 

椿は、この国で最初に出家したのは男僧でなく三人の尼僧だったというのに、出家して守る戒律が男は250戒なのに女が348戒もあるのは納得しかないと語ります。

 

それを聞いて鳳仙は女の方が法力が強いのかと疑問を口にしますが、椿は子種が法力で出来るわけないと舌打ちします。

 

その男に触れないまま懐妊した尼僧、笹百合がウソを言っているのではないかと言う椿に、竜胆はあの尼寺に男は一人もいないと抗弁します。

 

いつもなぞなぞだなんだと言っては不思議なことは大喜びするような椿がやけに深酒をしていつものようなはしゃぎっぷりとは違う態度を示して眠ってしまったのを不思議がる鳳仙に、竜胆は解説します。

 

「ウチは医家だから鬼の子でも仏の子でも取り上げるわ、けれどその出自がみ仏の子なんて特別を他の者が許すはずがない」

 

その言葉に、鳳仙は椿が不機嫌になっていたのは尼僧の子という存在が生まれながらに纏う災いを案じているのだと思い至ります。

 

いつも椿は余計なことはしゃべるのに肝心なことを言わないと、交わした会話を思い出して溜息をついた鳳仙の前に、ようやく目的地の尼寺・白泉寺(はくせんじ)が見えてきます。

 

下見に来た積りの鳳仙の前で、椿は突然この尼寺にはもう一つの顔があり、離縁を望む妻が駆け込んでくる縁切寺でもあるのだと告げいきなり鳳仙の頬を叩きます。

 

あっけにとられる鳳仙に背を向け、尼寺に向かい石段を駆けあがる椿を慌てて追う鳳仙ですが、その前に僧兵が槍を構えて立ちはだかります。

 

かくして、椿は離縁を望む女のふりをして白泉寺に潜入を果たしたのでした。

第十七話 尼寺に潜む怪物(その三)

尼寺である白泉寺(はくせんじ)院主・黄梅(おうばい)は厳重に施錠された渡り廊下を開錠し、月に一度、僧院に渡り謁見します。

 

多くの僧が広間に集まる謁見の場で僧院の主・華鬘(けまん)は煙草をふかしながら面倒なものだとぼやきます。

 

真面目な縷紅(るこう)は全ては尼寺の潔白のためと諫めますが、いちいち煩いと言われてしまいます。

 

華鬘は、「次期院主・紫苑(しおん)どのはご健勝か」と訊ねます。

 

離れたところに立ち、庭を見つめている床まで届く長い黒髪の若い尼僧の名のようです。

 

黄梅はつつがなく、と変わりないことを伝えます。

 

華鬘は続いて、「では笹百合の件はどうなったかの」と訊ねますが、黄梅はやはり懐妊しているようだと答えます。

 

奇怪な、み仏の子なのかとざわめく周囲の僧を、縷紅は不埒だ、軽々しく口にすべきでないと諫めます。

 

そこへ立派な体躯の僧・連(れんぎょう)が現れ、男を知らぬ女がはらんだのだから神仏の力以外の何物でも無かろうと縷紅に反論します。

 

笹百合が次期の尼寺の院主になれば世の噂になり信心が集まると言った趣旨のことまで述べますが、黄梅は、「腹の子が無事に生まれることが出来たら考えようではありませぬか」と含みを持たせた言い方をし、場を収めます。

 

華鬘は話題を変え、そういえば女が一人駆け込んだそうだの、と黄梅に話を振ります。

 

そのころ、尼僧・笹百合の懐妊の「理屈」に惹かれてやってきた椿は隠し持っていた酒を厳しそうな尼僧に没収され、尼僧として三年修行をせねば離縁は叶いませんぞとお説教を喰らっていました。

 

その場にお茶と菓子を持って笹百合が現れます。

 

口やかましく新入りの椿にお説教をしていた尼僧はぎょっとしてその場を任せると離れていきます。

 

笹百合は周囲に人がいないのを確認すると、こっそりと椿に酒というものは美味しいのかと訊ねます。

 

見世物小屋や、お芝居をみたことがあるかなど、人懐っこく外の様子を知りたがる笹百合はここで生まれ育ったので色々と話しを聞かせて貰いたいと言います。

 

椿は「他の者は話してくれないのかい」と聞きますが、笹百合はおなかをさすりながら皆とは最近あまり話をしないと答えます。

 

椿は、お茶を口にしながら慎重に笹百合の様子を観察します。

 

懐妊に至る理屈が、笹百合が唯一知る女と仏だけの世界から拒絶されるに足るものなのだと分かっているのだろうか。それとも、彼女は世界が崩壊するのも恐れないほどの何かを手にしているのだろうかと考えながら椿は差向いでお茶を飲みます。

 

夜。笹百合と紫苑は口づけを交わして抱き合っています。

 

椿は薄い布団一枚の部屋をあてがわれ、酒もないので寝入ることもできずにうろうろと室内を見て回ります。

 

壁にかけられた般若の面を何気なく手に取り、般若の意味するのは女の苦しみ、しかし仏教での般若は道理を見抜く知恵の意だったと物思いに耽ります。

 

外した般若の面の目の位置の壁から風が吹き抜け、覗き穴を見つけた椿はそこに目を寄せます。

 

ざざざ、と木立を抜ける音と、駆け抜ける紫苑の笑い声、そして両手、胴を切断された黄梅の姿がその一夜に重なります。

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