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『満州アヘンスクワッド』4巻 ネタバレ紹介！
第二十七話 阿片王
場所は関東軍総司令本部、中国最大の裏組織「青幇」のトップに君臨する杜月笙（とげっしょう）はある日本人に呼び出され会合に臨んでいました。
日本人の名は里山柾（さとやままさき）、「阿片王」と呼ばれる男です。里山の経歴の多くは謎に包まれており、それは彼の仮面の下に隠された狡猾さを物語ります。
里山はもともと新聞記者でした。
そして顔の広さを活かして地下人脈を築き上げていきました。
さらには関東軍にも言葉巧みに近づき手を組みます。
満州における表社会、裏社会の両方で権力を掌握することになりました。
こうしていつしか中国有数の大市場である満州、さらには上海での阿片売買を一手に仕切るようになりました。
これが里山が阿片王と呼ばれる所以です。
そんな「阿片王」里山が因縁の相手である杜月笙を招いた理由は、近頃市場に流通しはじめた超高純度の阿片でした。
勇(いさむ)が製造している阿片、”真阿片”のことです(まだ里山と杜月笙は勇たちのことを知らない)。
里山や杜月笙らの扱う阿片とは段違いに強力な快楽物質と依存度を持つ真阿片は、彼らにとって取り除かれるべき最大の脅威でした。
彼らを脅かすことは、すなわち満州の”ある種の秩序”を脅かすことでした。
それは百万人を超える阿片中毒者を彼らの支配下から暴力的に解き放つことでした。
一度破壊された船底からの海水の侵入は、船舶の沈没を持ってしか止めることはできません。
長年の因縁の敵同士である里山と杜月笙は、真阿片の排除を必要とする一点においては同志でした。
右手で手を取り合い、左手は相手の首を狙う二人の同盟が締結されました。
そのころ新京では、勇たちが真阿片の流布を目的としたプロパガンダ映画のクランクアップを迎えていました。
そしてそれは山内洋子の日本へと帰還する旅の始まりでした。
勇たちは車で洋子を船着場まで送ります。
別れの夜でした。
しかし穏やかな夜は道中引き裂かれます。敵による攻撃です。
車を囲まれた勇たちは、予期せぬ人物を目にします。
第二十八話 それぞれの道
その人物とは、青幇の周でした。
以前にバタールの襲撃によって焼死したはずでした。
一行は捕らえられ、周の銃口は勇に突き付けられました。
そして今まさに周が指先を引き金に掛ける瞬間、それは砕け散りました。
周の指先は何者かの銃弾によって撃ち砕かれたようでした。
勇はあたりを見回すと、関東軍の熊田監督官を丘の上に見つけました。
どうやら彼が周を撃ったようです。
彼は勇を生け捕りにして痛めつけることに執念を燃やしているため、青幇の手による殺害を阻止したのです。
勇らはこの一瞬の混乱を逃しませんでした。麗華（リーファ）の素早い判断で車を奪いとり逃走に成功します。
そしてしばらく車を走らせて船着き場へ。
夜の穏やかさが戻ってきます。
皆が洋子との別れを惜しみ、勇は再会を約束しようとします。
しかし彼女は何も言わず勇に口づけをしました。
なぜならこれが最後だと知っていたからです。
再会を約束できるほど世界は平和ではありませんでした。
この混沌の時代において、淡く純粋な恋心など風の前の塵に同じでした。
第二十九話 逃がし屋
この時代の中国では、どこの街にも血なまぐさい世界があり、ましてやロシアとの国境に位置する哈爾賓（ハルビン）の路地裏では当然のごとく血が流れ続けていました。
哈爾賓では、中国の裏社会を仕切る「青幇」とロシアンマフィア「HKBD」の二大勢力が幅を利かせていました。
街角では阿片が売られ、裏社会の争いは激しく続いていました。
そんな街で、ロシア人の青年”逃し屋”ことキリルは卓越した車の運転技術を頼りに生き延びていました。
キリルはまっすぐな性格の持ち主でしたが、哈爾賓で悪事を働く輩と「同じやつとは二度も組まない」という条件のもと仕事をしていました。
キリルには目の不自由な恋人がいました。
二人はいつの日か故郷に帰ることを夢見ていました。
そのためにはお金が必要でした。
表向きは多様な文化が入り混じる華やかな哈爾賓も、社会的弱者はマフィアや犯罪との関わりなしには夢も見られないないのでした。
第三十話 次なる地
杜月笙に呼び出された周は、恐る恐る勇たちを取り逃がした件について報告しました。
また、取り逃がした後に気付いた事として、杜月笙の実の娘である麗華がその中に含まれていたことも述べました。
杜月笙は驚くことなく、むしろ予想通りといった様子でした。
しかしその言動には周の背筋が凍るような冷酷さがありました。
そして杜月笙は主要都市の大連(ダイレン)、奉天・斉斉哈爾(ホウテン•チチハル)、哈爾賓に警戒網を張るよう命令しました。
プロパガンダ映画のおかげで大きな収益を上げた勇たちは、新京から熱河へと戻りました。
熱河では勇の妹と弟、モンゴル人の仲間たちが順調に阿片を栽培していました。
奉天で満鉄の上層部を取り込み、新京では満映を堕とした勇たちは、次なる狙いをロシアに定めました。
その足掛かりとして哈爾賓に向かうことになりました。
第三十一話 犬の生き様
ロシア人の青年キリルが、哈爾賓で逃し屋と呼ばれる少し前のことです。
一九三七年、ロシア・ソビエト連邦の首都モスクワでキリルは”HKBDの犬”として荒れた日々を送っていました。
そんなキリルもある娘に恋をしていました。
名はナターシャと言いました。
彼女の存在が、打ちのめされそうな心をいつも暖かく奮い立たせてくれました。
当時のロシアでは、あのスターリンによる過激な思想統制の犠牲者が後を絶ちませんでした。
キリルはHKBDのメンバーとともに軍で異端者の処刑の任務にあたっていました。
キリルはあるとき、軍にとらえられた異端者のなかにナターシャを見つけました。
キリルにとってナターシャの存在は何より大きく、キリルは迷わずナターシャを救い出しました。
HKBDのメンバーを含む兵士を数人撃ち殺しました。
それ以来軍やHKBDから追われる身となったキリルとナターシャは、中国の哈爾賓に逃れ、身をひそめながら懸命に生きていました。
キリルが”逃がし屋”として稼ぎ始めるのはこの頃からでした。
生きるため、そしていつの日かロシアに帰ることを夢見てキリルは幾つもの死線を乗り越えてきました。
第三十二話 火種
勇たちは哈爾濱に到着するなり、裏社会の情勢を探るため二手に分かれました。
勇と麗華はロシア系教会へ、バタールとリンは巨大な穴蔵の歓楽街、大観園へと向かいました。
教会にて勇と麗華は、いきなりマフィアの銃撃戦に巻き込まれます。
神父が撃ち殺されました。
犯人と間違われた勇と麗華はマフィアに追われます。
二人は追い詰められます。
しかしその窮地を見知らぬロシア人の青年が救ってくれます。
キリルです。
キリルの車で勇と麗華はマフィア達から逃げ切ります。
しかしここでキリルは、彼を”逃がし屋”として雇った犯人と勇たちを勘違いしたことに気が付きます。
キリルのただならぬドライビングスキルをみた麗華は、改めてキリルを雇い入れようとしますがキリルは「誰かの犬になるのはもう御免だ」と断ります。
第三十三話 大観園
大観園にて、バタールとリンはひょんなことから閻馬（エンマ）という少年に出会います。
閻馬に街を案内してもらう最中、バタールとリンは貧困と阿片中毒にあえぐ住民達の悲惨さを目の当たりにします。
そこでリンはロシア人の少女を見かけます。
第三十四話 皇帝
その夜麗華の指示により勇は一人ロシア系キャバレーに客として潜入します。
目的はロシアンマフィアの情報を集めることです。
キャバレーではニーナという女性が勇を接待しました。
ニーナは若くして授かった2人の子供を育てるためキャバレーで働いていました。
勇がニーナの身の上話を聞いていると、身なりの良いロシア人の老人がキャバレーに入ってきました。
その老人は皇帝(ツァーリ)とよばれ、ロシア人達は殆ど崇めていると言ってもよいほど、その老人を慕っているようでした。
ニーナによると皇帝は貿易会社をいくつも所有する大富豪で、たびたびキャバレーを訪れては生活の苦しいロシア人達にお金を恵んでいるそうです。
皇帝はニーナのもとに来ると、例によってお金を手渡し、さらに彼の新しい秘書にならないかと誘いました。
それはニーナにとって思ってもいない幸運でした。
皇帝のもとで働けるのならば、ニーナは自分の子供たちともっと多くの時間を過ごすことができ、将来は夢であるお花屋さんを開業できるかもしれません。
彼女は泣いて喜びました。
第三十五話 地獄の楽園
バタールとリンは閻馬に案内を頼み大観園の阿片窟へと向かいました。
そこは中毒者と悪臭で充満しており、リンの言うところの”地獄の楽園”でした。
阿片の中毒者がいるのなら、当然ながら阿片の売人もそこにいました。
リンは売人の扱う阿片を見せてもらいました。
品質は悪くはありませんでした。
しかしリンは「真阿片に比べたらゴミよ」とこき下ろしました。
そして真阿片を試すよう勧めました。
売人は訝しみながらも、試しに真阿片を一息吸い込みました。
今まで経験したことのない凄まじいエクスタシーが売人の脳天を突き抜けます。
真阿片による悪魔的な快楽に取りつかれた瞬間でした。
大観園に真阿片が広まるのは時間の問題でしょう。
キリルとナターシャの住処は大観園にありました。
しかしその日、キリルが家に帰るとナターシャはいませんでした。
視力の弱っているナターシャは、一人で外出することなどありません。
ナターシャの部屋は荒らされていました。キリルは怒りと不安に顔を歪めました。
その怒りは最愛の人に不幸をもたらそうとするものへの怒りでした。
その不安はナターシャの無事を案じるための不安でした。
ナターシャは何者かに攫われたのでした。
第５巻に続く
『満州アヘンスクワッド』4巻