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『無能なナナ』5巻ネタバレ紹介!
29話:見えざる刃PART8
キョウヤがトイレのドアを開け、見つけたのは幽体離脱の能力者である鶴見川でした。
「邪魔をするな、と言ったな?ならまだ柊と犬飼は無事だと考えていいのか?」
問いかけるも、うなだれて何も答えない鶴見川にキョウヤは再度声をかけます。
「おい」
鶴見川は諦めたように笑って言いました。
「さあ、どうだか……なっ!」
なんと、鶴見川の霊体がキョウヤを背後から殴りました。キョウヤはたまらず膝をつきます。その隙に鶴見川の本体もトイレから逃げ出しました。
「クソどもがっ!表現の邪魔をするなっ!」
そう叫びならが走って逃げる鶴見川の前には、空野フウコが待ち構えていました。
「どけっ!殺すぞっ!」
フウコは何も言わずに窓を開けて、構え始めます。廊下に風が巻き起こり、鶴見川の体は宙に浮きました。
鶴見川はあまりに突然の出来事にパニック状態です。
「この人が…リュウジさんを…!」
鶴見川を浮かし続けているフウコがトドメを刺そうとしたとき、追いかけてきたキョウヤが姿を現しました。
「待て!殺すな…」
キョウヤの訴えにフウコは手を震わせながらも、鶴見川を教室に投げ込むにとどめました。
キョウヤは脈を取りに行きますが、死んではいません。
フウコは事件のことが気になりキョウヤのあとをつけていたところ、走って逃げる鶴見川に会ってしまったのでした。
「まあ助かった。こいつを運びたいから手を貸してくれないか?」
キョウヤの言葉にフウコは再度風を起こし、鶴見川の体を宙に浮かせます。
それを見ながら何も言わないキョウヤに違和感を覚えたフウコは尋ねます。
「あの…どちらに運びましょう?」
「いや、そこがわからなかったんだ」
キョウヤの言葉に困惑するフウコ。キョウヤは気にせず言葉を続けます。
「そうやって石井の死体を運んだんだな?」
まさかの言葉にフウコの手が震えました。
鶴見川が幽体離脱をして石井リュウジの首を切ったというのは一度考えた、とキョウヤは言います。しかし、それにしては室内に飛び散っている血の量が少なかったのです。
フウコの顔は徐々に厳しいものとなっていきます。
「ならば石井はどこか別の場所で殺されたんだろうな」
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30話:見えざる刃PART9
「単純な事件じゃないと思い始めたのは鶴見川が左利きだとわかってからだ」
ちなみに、とキョウヤが聞いたフウコの利き手は右でした。
「それがなにか?」
石井リュウジの死体は横一線に切り裂かれた首の傷とともに、背中にも刃物で刺された痕が残されていました。
その背中の傷は刺し傷の深さや角度から左利きの人間の犯行だと推理できます。
「しかし首の傷は違う。石井から見て左から右にズバッと切られている」
左利きが向かい合った人の首を切ろうとすると、右から左に切ったような傷痕になるはずなのです。
つまり、背中を刺した人間は左利き、首を切った人間は右利きとなります。
「石井を傷つけた犯人は鶴見川のほかにもう一人いるはずなんだ」
フウコは胸に手を当て、声を詰まらせます。
「申し訳…ございませんでした…」
疑われているのがわかっていたからなかなか正直に話すことができなかったとフウコは言いました。
フウコはリュウジが死んだ夜、ジョギングに出ようとしていました。そのときに寮からこっそりと出て行くリュウジを見つけ他ため、浮気を疑いあとをつけることにしたのです。
事件が起こったのは、リュウジが道を外れて茂みに入った直後のことでした。
突然リュウジの悲鳴が響き渡ります。
驚いて飛び出すと、そこには背中を刺されてうずくまっているリュウジがいました。
フウコはリュウジに駆け寄りますが、もはや手遅れに近い状態です。人を呼びに行こうとしたフウコをリュウジは止めました。
「待てやフウコ…わしを刺したんは鶴見川や…」
なおも助けを呼ぼうとするフウコを、リュウジは再び強く止めます。
「このままじゃお前が犯人にされる言うとるんや!」
リュウジは最近、鶴見川が動物の首を切って殺しているのを見かけてしまったようです。
今日は“人類の敵”に憑かれていたと言う鶴見川と一緒に動物の死体を埋める予定だったのでした。
「必ず仇はとりますので、もうしゃべらないでください!」
そう叫ぶフウコですが、リュウジは冷静にフウコをなだめます。
なんの証拠もない鶴見川の犯行を信じる人はいません。むしろ、最近不仲の噂が流れていたフウコの方が怪しまれるでしょう。
では柊ナナに心を読んでもらったらどうかというフウコに、リュウジは少し頼りないと言います。
「わしはどっちかっちゅうとキョウヤはんのほうが信用できると思う」
リュウジは息を切らせながら喋ります。
鶴見川に一矢報いたいと言うのです。
「フウコ、ワシの首を切れ」
突然の言葉にフウコの動きが止まりました。
首を切った死体を見せればキョウヤが動物殺しの犯人と結びつけてくれるかもと言います。
フウコはそんなことはできないと震えますが、リュウジに宥められます。
結局フウコは、リュウジの最期の言葉を聞き入れて首を切ったのでした。
「その後のわたくしはおかしくなっていました」
遺体を外に放置したままだと誰も見つけてくれないんじゃないか。そう考えたフウコは自然に発見されるように、リュウジを部屋に運びました。
リュウジの部屋が荒れていたのはフウコが遺体を風で浮かせ、窓から運び入れようとしたからです。
「石井の判断は嫌いじゃない」
しかし、その後のフウコの行動が事件をより複雑にしてしまったと語るキョウヤ。
「…信じていただけるんでしょうか」
「信じよう」
キョウヤはキッパリと言い切りました。
「根拠は夕方にお前さんの部屋に忍び込んで見つけたジャージだ」
その言葉にフウコは目を見開き、膝から崩れ落ちます。
能力で返り血など浴びない離れたところから殺すことができるフウコのジャージは血で汚れていました。
キョウヤは、想像するに、と前置きをしてから話します。
「お前さんは石井の首を自ら切った後に抱きしめていたんじゃないか?」
遺体を抱きしめたフウコのジャージは大量の血を吸っています。
フウコはリュウジのことを思い、号泣します。
「鶴見川の様子を見てくれ。俺は柊を探す」
キョウヤはそう言ってその場をあとにしました。
残された鶴見川は、身じろぎもせず見張ってくるフウコを見て考えました。
フウコは窓が閉まっていると能力がうまく扱えないはずです。
鶴見川は霊体を使ってフウコの後ろの窓を触り、物音を立てました。おもわず振り向いたフウコにチョークの粉をかけて目を眩まし、外へ逃げ出し他のです。
外に出た鶴見川はこれからどうすればいいのか、悩んでいました。しかし、野生のウサギを見た途端にそんな悩みは吹っ飛びます。
「簡単だ。みんな汚してしまえばいい」
ウサギに手をかけようとしたその瞬間、背後に橘ジンが現れました。
「弱いものいじめをするなと忠告したはずだがね」
驚いて声も出ない鶴見川をよそにジンは語り始めます。
かつて同級生を大量に殺したジン。もう二度と誰も殺さないと神に誓ったようです。
「しかしその神が今こう告げている。おお橘よ、今一度だけ許す、とね」
ジンの演技がかった言葉に鶴見川は叫びます。
「訳わかんねえこと言ってんじゃねえぞ!」
自分は他のヤツにはできない表現をしているだけなんだと主張する鶴見川に、ジンは言い放ちました。
「では、私の表現も見てもらおうか」
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31話:マインドコントロール
翌日、生徒達は朝から校庭に集められました。偉い人が視察にこられたと担任が叫んでいます。
ずらっと並ぶ軍人に生徒達はざわめいています。
そんな中フウコはキョウヤに話しかけました。
「申し訳ございません。鶴見川には逃げられてしまいました」
謝罪に対し、キョウヤは責めるでもなく説明し始めました。
キョウヤは昨夜あのあと、うなだれたナナとともに森から寮へ戻ったのです。
「その途中森の中で鶴見川が死んでいるのを見かけた」
驚くフウコに、キョウヤは島にはまだ人殺しがいるということだと言い切りました。
これは説明してもらわないとな、と前で整列している軍の方に目を向けます。
フウコはそれを聞き、もう一つ尋ねました。
「あの…柊さんになにが…?」
ナナは人の輪には入らず、一番後ろでぼんやりと地面を見つめていました。
「……すこしそっとしておいてやれ」
そこで担任が喋り始め、会話は終わりました。
なんでも、今日来たのは島の管理と能力育成の最高責任者の一人だそうです。
そうして朝礼台に上がってきたのはなんと、ナナを教育した男、鶴岡でした。
ナナの目が驚愕で見開かれます。
「諸君らの活躍は聞き及んでいる」
鶴岡は台の上で話し始めます。
しかし、亡くなった者への敬意を表し、健闘を祈ると一言残しただけで台から降りようとしました。
殺人事件の説明についてはなにも触れませんでした。
そこでキョウヤがたまらず叫び始めます。
「ふざけるな!お前さんがたは本当に島の現状を把握してるのか!?」
キョウヤの言葉を皮切りに、生徒達から文句が飛び出します。
しかし鶴岡は何も言い返さず、無視し続けます。
やがて生徒達のヤジがやみ、静まり返りました。鶴岡がやっと話はじめました。
「貴様らがその口を閉じるのに十分もかかった」
鶴岡が大勢送りだしてきた能力者達の中でも無能どもだと吐き捨てます。
仲間が殺されても怒りもしない腰抜けだとまで言う鶴岡に、痺れを切らした郡セイヤが壇上へと上がりました。
「その態度どうにかならないかな?」
能力者である自分たちは頼まれて島にやってきており、能力者でなかったら“人類の敵”とは戦えないだろうと言います。
そんなセイヤの鼻先に、鶴岡は銃を突き付けます。
次の瞬間、発泡の音が校庭に響きました。ギリギリのところでセイヤは避けましたが、へたり込んでしまいます。
「これが脅しだ。普通の人間流の、な?」
静まり返った生徒達を見渡しながら、鶴岡は壇上から降ります。
「諸君らの不安は察する」
次々に死人が出る状況は、それほど戦況の悪さを意味すると語りました。
「…んなこと言ったって、俺たちにはどうしようもないじゃん」
モグオをはじめ、生徒達からも不安が漏れ出ています。しかし鶴岡は語るのをやめません。
「なかには能力があるがゆえに世間から迫害された者もいる」
それでもここに集まったのはなぜか、と問います。
「守りたいものがあるからではないのか!?」
誇りや友、自分との約束。鶴岡が次々と挙げていく言葉に徐々にみんなの顔つきが変わっていきます。
「その志を今一度思い出せ!」
鶴岡は声を張り上げたあと、話は終わりだと静かに歩き出します。
「俺は戦うぞーっ!」
残された生徒達は鶴岡の言葉に胸を打たれ、やる気に満ち溢れていました。生徒達は口々とその決意を表しています。
そんな中、キョウヤは叫びます。
「あいつはなにも説明していない!なにもしないと言ってるんだぞ!?」
しかしその言葉も、鶴岡の言葉に心酔している生徒達には届きません。
名前を呼びながら鶴岡の周りに集まる生徒を見ながらナナはなにもできず、立ち尽くしていました。
その後、ナナは指導室にて鶴岡と向かい合っていました。
「リーダーに話があると言う建前で呼び出したのはお前がなにか言いたそうだったからだ」
鶴岡はナナに全てを教えました。人の操り方や嘘のつき方、毒物の取り扱い。
訓練を終えたナナは『なにが能力だ』と言ったのです。普通の人間でも空は飛べるし銃弾を扱えば念動力よりも早く殺せる、と。
「その考えに変わりはないか?」
うなだれたナナはぽつりぽつりと話し始めます。
「わたしは…今、自分の心がわかりません」
鶴岡に育てられたナナは、鶴岡の考えに反対するという選択肢はありません。
「ですがミチルちゃん…犬飼ミチルは…」
本当に“人類の敵”だったのか。
静かに尋ねたナナの動悸は次第に大きくなっていきます。
こんな口をきいて許されるわけがありません。死を覚悟しました。
しかし、返ってきた言葉は予想外のものでした。
「それでいいんだよ」
優しくかけられた言葉にナナは驚きます。
両親の死から心が凍っていたナナが人並みの感情を持てたことに嬉しく思うと言います。
「涙が枯れるまで泣いてその後に想像してみろ」
今ナナが苦しんでいるほどに犬飼ミチルを殺そうとした男は苦しんでいたか。
友人の死に涙するナナは立派な人間だと言います。
「だがやつらはどうだ?笑っていなかったか?」
鶴岡はただ一言、憎めと言います。
憎しみこそが原動力なのだと語る鶴岡に、ナナは誰を憎めばいいのかと問います。
「おれでいい」
鶴岡は答えます。
ナナの上官である鶴岡の命令には逆らうことができません。今ナナが戦わねばならないのは自分のせいだと話します。
その言葉に、ナナは思わず涙をこぼしました。
「まだやれるな?」
「はい……」
鶴岡は素直に返事をするナナに、褒美を二つやると言い出しました。
「まず犬飼ミチルの体は我々が預かる」
どうやら、蘇生の力を持ったミチルの体は心臓は止まっているものの、体温は低下していっていないようなのです。
「お前の友人だったというのなら手を尽くして助けてやりたい」
そんなことが許されるのかと尋ねるナナに、敵を許すのも人間が持つ強さだと言い切る鶴岡。
その言葉にナナは号泣してしまいます。
「ありがとうございます!ありがとうございます!」
ナナの頭はミチルが助かるかもしれないという希望でいっぱいになりました。
「もう一つはお前に助手をつけてやる」
同じ訓練を施した後輩だと言います。
ナナはミチルのためにも“人類の敵”を倒すと決意を新たにしました。
一方、海岸ではある女の子がミチルの体を黒い袋に入れています。
そこに鶴岡が歩いてくるのを見て、女の子は鶴岡の名前を呼びながらすり寄ります。
「“人類の敵”の死体を収納しました!モエがばっちり袋に詰めておきました!」
「真壁モエ…」
鶴岡は銃を取り出しました。
「おれはだに囚人に穴を掘らせ、その穴を埋めるような命令を下す」
鶴岡はミチルの体を銃で二発、ためらわずに撃ちました。これにはモエも驚きます。
「今柊ナナにさせているのはそういうことだ」
わかるな?と睨む鶴岡はに、モエは元気よく返事をします。
「ナナしぇんぱいが裏切ったら殺す、です!」
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32話:マインドコントロールVS適者生存
「もう行ってしまわれるんですか?」
鶴岡の見送りにクラス全員が校門に集まっています。
みんなが涙ながらに見送るなか、キョウヤは腕を組み難しい顔をしていました。
「どうも見捨てられている気がするんだが?」
結局鶴岡から具体的な指示は出ていません。
不満げなキョウヤにモグオやセイヤは怒ります。
「小野寺キョウヤ。貴様の求めるところは保護と安全だな?」
「それとあんたらへの信頼」
そう答えるキョウヤに、鶴岡は、これから生徒達を撤退させるよう上に申し出るつもりだと言います。
移動先は本土に近い場所であり、実戦はまだ早いと判断したとのことです。
「満足か?」
キョウヤは黙り込みます。
その様子を見て、鶴岡はナナを前に出しました。
「リーダーの言うことをよく聞き、みなで力を合わせるのだ」
ナナは拳を掲げ、元気な笑顔で言いました。
「みなさん!がんばりましょう!」
昨日までの落ち込んでいた様子から一変したナナを見て、キョウヤはますます困惑しています。
海岸に停めていたヘリに戻る鶴岡を、ナナが代表して見送ります。
「あの…犬飼ミチルのこと、どうかよろしくお願いします」
「見送りのていで念を押しにきたのか」
そういうわけではない、と焦るナナ。
そこに、一匹の蝶が鶴岡の首元に飛んできました。
「ちょろちょろと人のあとをつけるな」
「もうしわけ…」
ナナが慌てて謝ろうとした声を遮り、鶴岡は首元の蝶を手で払いました。すると蝶は真上に飛び立ちます。
鶴岡は空に向かって二発銃を撃ちました。
「草花も遠い波打ち際に蝶がなんの用だ」
いつのまにかナナの横には橘ジンが座り込んでいました。鶴岡はジンに話しかけます。
「我々のあとを追うつもりだったのだろうがフナムシにでも化けたほうが良かったのではないか?」
ジンはニヤリと笑います。
「私は見た目を気にする方でね」
ジンは鶴岡の部下に銃を突きつけられるも、動揺を見せません。
「五年前の生き残りか…」
呟く鶴岡に、ナナは常につきまとってくる男なのだと訴えました。
「柊はもう戻れ」
「ですがこいつの能力はとても危険です!あらゆる能力者の能力を…」
必死に伝えるナナの言葉を遮り、鶴岡は睨みます。
「だからおれが相手をしてやる」
そんな鶴岡を見て、ジンはナナに語りかけました。
「ナナ騙されるな」
鶴岡はナナに聞かれたくない話をしたいだけだ、とこの場にとどまることを促しました。
「柊…!」
「は、はいっ!どうかご無事で!」
しかし鶴岡がナナの名前を呼ぶと、びくりとはねて学校の方に戻っていくのでした。
ナナが走っていくのを見て、ジンはまたフラれたと冗談めかして言います。
「おれは強者には敬意を払う」
鶴岡は話し始めます。
「おれに忠誠を誓え」
知りたいことの全てを教える、とジン方へ手を差し出しました。
「…せっかくの申し出だが」
断ろうとしたジンの言葉に被せ、鶴岡が再度話し始めます。
「すでに貴様の能力の特性を二つ見抜いている、と言ったら?」
ジンはここで初めて動揺を見せました。
鶴岡はそのまま語ります。
ジンは先ほどは蝶に化けてヘリに潜り込もうとしましたが、踏まれたり吹き飛ばされたりするリスクを考えると鶴岡の部下に化けて潜り込むのが最善策のはずでした。
「貴様は動物や昆虫、能力者には化けられる」
鶴岡はじりじりとジンとの距離を詰めていきます。
「だが、普通の人間には化けられない…」
ジンは黙り込みます。
しかし鶴岡はこれは弱点とも言えない、と話しました。
ジンはもう一つの推理を話すように促しました。
「弱点だ。それも致命的と言っていい」
それを聞いたジンはにやりと笑って言いました。
「おもしろい」
一方ナナは夕暮れの道を歩いている途中、ある女の子に声をかけられました。
「ナナしぇんぱい!」
驚いて振り向くと、ニコニコと笑う女の子がグイグイと距離を詰めて手を握ってきました。
「初めましてモエです!しぇんぱいのことは教官から聞いています!」
「ああ、あなたが…」
ナナはモエの勢いに押され、若干引き気味になります。
「とっとと“人類の敵”をやっつける!です!」
ナナの腕をつかんではしゃぐモエを見ながら、ナナは少しばかり不安を感じました。
ナナは寮に戻ったあとも眠れず、門の前に座り込んでいました。
夜風にあたりながらミチルのことを考えていたところにやってきたのは橘ジンです。
「ちょうど君を訪ねようと思っていたんだ。隣いいかね?」
「怪我をしているみたいですね」
どうやら鶴岡のところから命からがら逃げ出したようでした。
痛がるジンを見て、ナナはその傷口を思い切りにぎりしめます。
痛みにうめくジンの口を押さえ、ナナは話し始めました。
「すみません、わかってしまったんです」
昼間、鶴岡が手を振り払った時蝶に変身していたジンは真上の空に逃げました。
結果、太陽の光で蝶の姿は見えなくなったのです。
「つまり…どういうことか…ね?」
余裕のないジンに、ナナは微笑みます。
「あなたはこのまま変身もできず、殺されるということです」
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33話:適者生存PART4
「先輩は人の目があるところでは変身できない」
ナナはジンの口を塞ぎ、傷口を押さえ込んだ状態のまま語ります。
「あなたは変身できなければただの人です」
違うのか、と問いかけるナナに、ジンは悔しそうにうめきます。
「どうしたんです?」
モグオでもキョウヤでも、誰でもいいから能力者に化けて反撃すべきだと笑うナナ。
傷口を握る手にさらに力を加えます。
ジンは苦しそうにしながらも口を開きました。
「ミチルちゃんの危機を教えてあげたじゃないか」
その言葉にナナはハッとし、ジンの傷口から手を離します。
ジンはなおも話し続けました。
「ならばミチルちゃんを助けてくれても良かったんじゃないかと言いたいのだろう?」
ジンは薄く笑いながら言いますが、ナナの表情は曇りました。
「私はね、いつだって君の味方を…」
そこまで言ったところで、ナナは叫びました。
「黙れ!」
ナナは勢いのままジンの首を掴み、絞めあげます。
「わたしは“人類の敵”を倒すんだ!ミチルちゃんのためにも!」
ギリギリと力を込めるナナでしたが、途中から何故か震えが起こり、ジンの首から手が離れます。
それどころか、ナナの体は宙に浮き、身動きの取れない状態になってしまいました。
「正解だよナナ。シャイな私は人に見られていると返信できない」
その言葉とは裏腹に、どう考えてもジンの能力によってナナの体が浮かされています。
「なぜ、なんで…!?」
混乱するナナを見ながら、ジンは指をパチンと鳴らしました。
その瞬間、ナナはものすごい勢いで林の中へ吹っ飛ばされます。
ジンは倒れ込むナナのもとまで歩み寄ります。
「念動力だよ。単純だが使い方次第ではかなり心強い能力だ」
ナナはかろうじて上体を起こしますが、なぜ変身していないジンが能力を使っているのか、全くわからないのです。
「そんな…ま、まさか…」
ナナは一つ、全ての辻褄が合うことを思いついてしまいました。
「ずっと…化けていた?」
ナナの呟きに、ジンは笑って自分を指さします。
「そう、これは本当の私ではないのだよ」
今のジンの姿は念動力を持った別の『橘ジン』の姿と能力を借りているということです。
ナナはその事実を知り、ジンの掌の上で踊らされていたことに絶望します。
ジンはゆっくりとナナに近づきました。ナナは死を覚悟して目をぎゅっとつぶります。
しかし、聞こえてきたのは予想外の言葉でした。
「ミチルちゃんのことは謝罪する」
ジンはしゃがみ込み、うずくまってるナナと目線を合わせました。
ナナがミチルとの付き合いでどう変化するのかを試したと言います。
「だからあなたを殺そうとしたわたしも許してくれると?」
その問いには答えず、ジンはナナの耳元に口を寄せて言いました。
「君に非常な命令を下しているかの鶴岡先生は、私を仲間に誘ってきたんだ」
ナナは目を見開きます。
鶴岡はナナにそのことをよく考えるように言うと、静かに立ち去りました。
鶴岡が“人類の敵”であるジンを仲間に誘った。
ナナの頭の中には中島ナナオや、渋沢ヨウヘイ、これまで殺してきた能力者達の姿が甦ります。
自分のしてきたことはなんなのか。ナナは自分の手を見つめ、呆然と立ち尽くしました。
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34話:重力操作PART1
薄暗い部屋の中、鶴岡は何者かと話しています。
「能力者どもを島から移送すると?」
何者かは能力者が本土に近づくことで近隣住民に被害が出ないかを心配しています。
しかし鶴岡はひるまず言いました。
「被害が及ぶから良いのではありませんか?」
何者かはその言葉に困惑しますが、鶴岡は冷静です。
住民を巻き込んだ殺戮が起きようとも、現政権の責任になると言います。
「野党のあなた方はそれを国会で糾弾すればよろしい」
鶴岡はさらに、国民は“人類の敵”の存在に疑念を抱いているとつけ加えました。
相手の政治家はことが露見したら自分の首一つでは済まないと焦ります。
「ならば先にあなたが真相を暴露してはどうか?」
鶴岡は“人類の敵”などはいない、本当の“人類の敵”は能力者のことだと国民に話した上で表立って能力者の弾圧をはじめればいいと語ります。
「そしてあなたは新時代の首相になる」
相手の政治家はその言葉ににやりと笑います。
「すべて鶴岡さんに任せるよ」
その頃、ナナは教室でぼんやりと空を眺めていました。
「平和だな」
話しかけてきたキョウヤに目だけ向けて返事をします。
「以前は毎日のように殺人が起こっていたのにと?」
「犬飼が亡くなって以来ぱったりだ。殺人鬼が喪に服しているのかな」
キョウヤと話していると「しぇんぱーい」と呼ぶ声がしました。
「野外訓練の時間ですよ!早く行きましょー」
元気よく叫ぶのはナナの後輩として送り込まれた真壁モエです。
キョウヤはナナを先輩扱いするモエを不思議がりますが、ナナはリーダーだからかもと興味なさそうに答えます。
「なにか気になることでも?」
「いや、すっかり愛されキャラでうらやましいなと」
その言葉の通り、モエはすでにクラスメイトと打ち解けてわいわいと喋っていました。
「ナナしぇんぱい〜」
訓練をしているクラスメイトを見ながら、モエはナナにひたすら話しかけていました。
「どうして誰も殺さないですか?」
「今考えているところなので」
それを聞いたモエは拳を震わせて顔を輝かせました。
「モエにすべて任せてくれるということですね?」
「そんなことはひとことも言ってないですけど…」
的外れな言葉に困惑するナナをよそに、モエは携帯端末で祖母にメールを打ちはじめます。
それを見てナナはあることを思いつきます。
「ちょっと聞きたいんですが」
ナナは能力者の推定殺害人数の画面を開いて見せて、モエの端末にも『犬飼ミチル』が入っているか聞きました。
「もしかしたらなにかの間違いということも…」
しかしモエはキョトンとした顔で言いました。
「なんですかソレ?」
モエの端末には推定殺害人数を見る機能が入っていなかったのです。“委員会”から与えられている情報が、ナナとモエで異なっていました。
黙るナナに、モエがささやきます。
「もしかして使命が嫌になったですか?」
いきなりの言葉にナナは背筋が凍ります。
ナナが何か返そうと口を開いた瞬間、先ほどまで鉄棒で回っていたモグオの子分が空から落下してきました。
あまりに突然の出来事にナナもモエも動くことができません。
しかしナナとモエに直撃する寸前、なぜか落下の勢いが弱まり、モグオの子分はゆっくりと地面に落ちました。
「た、助かったぜヒカル…!」
ヒカルと呼ばれた少年はにっこりと笑いました。
「うまくできてよかったよ。力の調整が難しいんだよね」
「そういやヒカル、お前いまだに山籠りしてるのか?」
モグオに聞かれたヒカルはうなずき肯定します。大雑把な能力であり、寮で暮らすと迷惑がかかる可能性があるというのです。
モグオ達の会話を聞くに、どうやらヒカルの能力は重力を操れるというもののようです。
そのやりとりを見て、モエは小声でナナに話しかけます。
「どうするですか?モエは早くしぇんぱいよかっこいいところが見たいです」
モエに急かされるものの、ナナは気乗りしない様子で黙るのでした。
その日の夜、橘ジンがナナの部屋を訪ねてきました。
「思うに」
ナナの端末に表示される“推定殺害人数”はナナにとっての十字架なのではないかと言います。
ナナが殺人に罪の意識を覚えた時は端末にすがるだろうと予想され、支給されていたということです。
「つまり、でたらめだと?」
ジンの言葉で悩むナナですが、そこでモエがバタバタと部屋に乱入してきます。
ジンは一瞬で猫に化けてナナの隣に座りました。
「しぇんぱい、まだですか?」
モエはナナをじとっと見つめ、このままなにもしないなら鶴岡に報告するしかないと脅してきます。
「待ってください!それだけは…!」
焦るナナに、モエはさらに追い討ちをかけます。
「犬飼ミチルちゃんもきっと助けてもらえないです。それでもいいですか?」
睨み合うモエとナナ。根負けしたのはナナの方でした。
「…わかりました」
モエは顔を輝かせ、重力の能力者・ヒカルの住処へと向かいます。ナナは仕方なくついていきますが、もう少し慎重になるよう訴えました。
「重力操作の能力の詳細がわかってないからです」
能力者を相手にするときは仮説を立て、弱点を探し、能力を使わせない状態を作って初めて自分たちが有利になると言います。
しかし、モエはナナの話を聞いても笑顔を崩しません。
「しぇんぱいはいちいちそんな手間をかけてたですか?」
モエはそんな面倒なことはしないで、寝込みを襲えばいいと言います。
「クラスのみんなと離れて一人で暮らしているのが狙い目なのです」
そう言うとモエはポケットからワイヤーらしき線を取り出しました。これを使い、相手を絞め殺すと言うのです。
モエはヒカルが住んでいる小屋のドアに手をかけます。
「いくですよ…」
「待て、鍵もかかってないのが妙だ…」
ナナの静止を聞かず、ドアを開けるとそこには部屋のありとあらゆる家具が宙に浮かぶ、無重力の空間が存在していました。
【206ページ、207ページ見開き挿入】
「逃げるぞ…」
ここに踏み込む勇気はない、と呟くナナ。しかしモエと2人小屋に背を向けた瞬間、ヒカルが起き上がります。
「誰…?」
35話:重力操作PART2
「ナナさん…?」
ナナはゆっくりと振り向き、笑顔でこたえました。
「こんばんは」
見回りをしていたというナナに、ヒカルは納得したようです。
「…これは重力で?」
家具が全てあちこちに浮いている部屋を見渡し、尋ねるナナに、ヒカルは肯定します。
「“人類の敵”が寝込みを襲ってきても、ふわっと浮いちゃうだろうね」
ナナはその答えを聞き届けてから、笑顔で別れの挨拶を告げ、小屋のドアを閉めました。
ドアの影に隠れていたモエは全く怪しまれてなかったとご機嫌です。
「甘い人です」
「どうかな?」
ヒカルはナナを見ても能力を解除しませんでした。
しかしモエはそれをナナが怪しまれているからだと言い張ります。
「作戦を考えたです」
それは疑われているナナが目を引いているうちにモエがやっつけるという作戦でした。
「つまり…好き勝手にやりたいということですね」
翌日、モエは朝から階段でヒカルを待っていました。
モエはヒカルが階段をのぼってくるのを確認すると同時に、自分で階段から転がり落ちます。
いきなり落ちてくるモエにヒカルは手を出して能力を使おうとしますが、発動しなかったのかモエはそのままビタンッと踊り場まで転げ落ちました。
「ご、ごめんね。急なことで助けてあげられなかった」
ヒカルはそういって手を差し出します。
モエは頭を押さえながらもその手を取り、ヒカルに保健室へ連れて行ってもらいました。
ヒカルと仲良くなるきっかけを作ったモエの行動を見ていたナナは呆れ気味になりながらも考えます。
モエが階段から転がり落ちるのは、校庭でモグオの子分が落下してきた時とさほど状況は変わらなかったように思えます。
ナナはモエの影に隠れて観察していくことに決めました。
それからモエは夜までヒカルと遊んだり、落としかけた弁当を浮かせてもらったり、モエ自身を浮かせてもらって遊んだりしました。
ナナはそれらを全てノートに書き留めます。
数日が経ち、モエがナナの部屋に倒れ込んできました。
「しぇんぱいー」
「てこずっているようですね」
なかなか隙が見えないようです。ナナはその日の、ヒカルがモグオとセイヤの喧嘩の仲裁を頼まれても入らなかったことをノートに書き留めながらモエの話を聞いていました。
「なんの成果もないとおばあちゃんが困るです」
モエの祖母は病気を患っており、鶴岡に面倒を見てもらっているようです。
しょぼんとしていたモエでしたが、次の瞬間にはまた顔をあげていました。
「こうなったらもうちょっと仲良くなって直接弱点を聞くです」
「わたしも考えておきます」
そう言ったものの、ナナはこうやって能力者の殺害方法を考え続ける今の時間に疑問を持ちはじめていました。
夜、モエとヒカルは一緒にご飯を食べていました。
「ヒカルくんは謙虚で立派です!」
ニコニコと褒めるモエに、ヒカルは困ったように笑いました。
「僕は立派じゃない。罪深い人間だよ」
子供の頃、実家の近くで友達の女の子が行方不明になったと語ります。
「実家はお寺でしたっけ?」
モエの問いにヒカルはうなずきます。
女の子が行方不明になった日、ヒカルは境内で夜遅くまでその子と遊んでいたのでした。
どうして彼女を送っていかなかったのか、今でも後悔しているようです。
過去を語るヒカルとそれを聞くモエの姿に、ナナはいつしかの中島ナナオと自分の姿を重ね合わせます。
ナナの体は、自然と震えてしまっていました。
36話:重力操作PART3
日差しが降り注ぐ海の中、生徒達は海水浴を楽しんでいました。
「聞いたかいナナちゃん、僕ら本土に帰れるらしいよ」
「らしいですね…」
笑顔で話しかけてくるセイヤですが、ナナは気のない返事です。
そこにキョウヤとフウコがやってきます。
「お前ら鶴岡が来た時はあんなにやる気だったのにもうだらけてるのか」
「まあまあ、今のうちに島の海を楽しんでおこうよ」
そういうキョウヤも、人殺しが起きなくなった今は何もしていません。
“人類の敵”の声は聞こえているのかと聞くフウコに、ナナはここのところぱったりだと答えます。
「それより、私たちはもうすぐ本土に戻されるそうですがキョウヤさんはそれでいいんですか?」
なぜ?と問うキョウヤに、ナナは言葉を重ねます。
「妹さんを探しに島にやってきたのでは?」
その言葉にキョウヤはハッとした顔をしますが、ナナの問いに応える前にセイヤが騒ぎ出しました。
「あれ、指輪がない!」
どうやら、彼女にプレゼントしようとしていた指輪を無くしてしまったようです。
慌ててみんなに協力を仰ぎますが、波にさらわれたかもしれない指輪を見つけるのは困難です。
「いちおう、探してみましょうか…」
そう言ってナナは荷物置き場の方を探しにいきます。歩きながらナナは、鶴岡がなぜ能力者を本土に戻すのか考えていました。
この島に閉じ込めて抹殺していくのが“委員会”の目的であったはずです。
悩んでいたナナの背後から、突然悲鳴が聞こえました。
慌てて振り向くと、先ほどまであった海の水が全て引いていたのです。セイヤは今のうちに指輪を探してくれとみんなに頼んでいます。
その様子をヒカルは微笑んで見ていたのでした。
「今夜しかけるです」
キリッとした顔でモエが報告してきました。作戦があると自信満々ですが、ナナはため息をつきます。
「わたしは彼の能力は時間に関係していると思っています」
「なにを言うですか!彼は昼も夜もあの能力を使ってるです」
しかし、厳密には日によって使っている時間帯は違います。ヒカルには重力を使えない時間があるとナナは主張しました。
しかしモエはナナの話を聞かず、とにかく今夜しかけるのだと走って帰ってしまいました。
ナナは再度ため息をつきました。
「モエちゃんはなんで特別僕にかまってくれるのかな」
ヒカルは一人、山の小屋の中で考えました。しかし、すぐに人と繋がりを持つ資格なんてないと頭を振ります。
「ヒカルくん」
しかしその時、一人であるはずの部屋の中で声をかけられました。ヒカルはびっくりして跳ね上がります。
よく見るとモエが棚の上に乗っていたのでした。
「いつからそこに!?」
ヒカルを待ってたと言うモエ。
「ヒカルくんは今何を考えてたですか?」
モエは当ててみせると笑い、手でワイヤーのようなものを引きます。その途端、首に巻かれたワイヤーが締まり、ヒカルは息ができなくなります。
「どうして、僕は今からモエに殺されるのか?です!」
【267ページ2コマ目挿入】
モエは息も絶え絶えなヒカルに近づき、真後ろに回りました。
「これで重力はつかえないです。こうして密着していればヒカルくんだって巻き込まれるです!」
モエは、ヒカルの能力は指定した範囲の空間に重力場を作れるものだと語ります。
同じ重力場にあるものはなんでも巻き込まれる。モエはそう言うとワイヤーを絞める力をさらに強め、落としにかかりました。
しかし、そこでヒカルの手がモエの体に触れました。
その瞬間、モエの体がフワリと宙に浮いたのです。
「たまたまだよ…」
モエに巻かれたワイヤーを外しながらヒカルは話しはじめます。
「モエちゃんはたまたま見たことなかっただけだよ」
触れることさえできれば対象を選んで重力を操ることはできるのです。
「キミが“人類の敵”だったのかい?」
そう聞かれたモエは歯を食いしばり、叫びます。
「モエをどうする気ですか!?」
その問いにヒカルの顔は穏やかになり、突然謝りました。
「…嘘ついてごめんね」
「は?う、嘘はモエがついてたですが!?」
しかし、ヒカルが謝りたいのはそんなことではないと言います。
実は、前にモエに話していた行方不明の女の子の話は嘘だったのです。
本当はその子は境内にある木から落ちてしまい、すぐに死んでしまったのです。そのときのヒカルは、女の子の死が自分の責任になるのが怖くて焦っていました。
「だから、死体をこっそり処分することにしたんだ…」
今のモエのように、女の子の体を空高く飛ばしたのです。
「それはとてもとても神秘的な光景でね」
夜空に浮かぶ月のようだったと語ります。
「だから僕は今も一人で暮らしてたんだ」
自分がいけないとわかっていると語ります。
ぶるぶると震えていたヒカルはしかし、顔を上げ、モエに向かって叫びました。
「あの感動が今も忘れられないんだ!」
モエは恐怖のあまり悲鳴を上げます。
そこに、扉を乱暴に開けながらナナが小屋に入り込んできました。
「ナ、ナナさん…今の話聞こえた?聞いていた?」
ナナはヒカルの問いには答えずに眉を寄せます。
「複雑な気分だ。お前が多少なりとも悪人であってくれてホッとしている」
そう言いながら小屋の中にゆっくりと踏み入れます。
モエは目を潤ませながらナナの助けを喜びます。
「ナナさん落ち着いてほしい。モエちゃんが僕を殺そうとしたんだ」
「だから夜空に浮かぶお星さまにしてやるんだろう?」
そう言い返すナナにヒカルは言葉が詰まります。
ナナは気にせず語りはじめました。
ヒカルは階段から転がるモエは助けましたが、ケンカの仲裁は頼まれてもしませんでした。その一方でモグオの子分や落としかけた弁当箱は浮かせたりもしています。
モエと夜まで遊んでいた時もあれば昼に急に帰宅していた日もありました。
決定的なのは、指輪をなくしたセイヤのために海水を引かせた時でした。そこでナナは思いついたのです。
潮の満ち引きをもたらすものの動きと能力が発動していた時間帯が合致していたことを。
「月だろう」
ヒカルの顔は険しくなります。
「お前の能力は月の引力に関わるものだ」
月の出入りは日ごとに時刻がずれます。一見昼夜問わず能力を使っているように見えても、実は日によって使えたり使えなかったりしたのです。
「…なんなの!?ナナさんも“人類の敵”だったの?」
心を読めるならそんな観察みたいなことはしないと叫ぶヒカルに、ナナは否定しませんでした。
代わりに、ヒカルを煽るような言葉を並べます。
「今日はもうじき月が海に沈んで、お前はただの無能者になる」
ナナは馬鹿にするように笑いました。
「その前にわたしも夜空に浮かべてしまうか?感動したいんだろ?」
その言葉を皮切りに、ヒカルは叫び、ナナを重力で浮かそうと追いかけました。
「うるさいっ!!!」
ナナの逃げ足は速く、すぐに見失ってしまいます。しかし、時間はありません。
ヒカルは、山全体に能力を使うことにしました。
37話:重力操作PART4
ヒカルはなんと、能力を使い山ごと動かそうとしています。
ナナはどんどん浮かんでいく木の合間をぬい、逃げ続けていました。
月の入りはもうすぐなはずですが、計算が正確だったかどうか、確証が持てません。
実際に目で月が沈んでいるところを確認するのが一番です。
「そして…」
ナナは自分がどうすればいいのか、迷っています。ヒカルが極悪人かどうか、分からないのです。
少なくとも普段のヒカルは温厚な人物でした。
考えている間にも重力の能力は続きます。岩を登ってみたところ、ヒカルの姿が見えました。
ひとまず岩陰に隠れるも、そこから飛び出せば見つかってしまいます。
そう考えていたナナが座っていた地面が、重力の能力の影響で割れはじめます。とうとう時間がありません。
「ナナさーん」
そこで、ヒカルがあたりに向かって呼びかけはじめました。
「僕もどうかしてた!話し合いの余地はないだろうか!?」
いるなら出てきてほしい、と叫ぶヒカルをナナはいぶかしみます。
能力を使えなくなったから命乞いをしようとしているのか、ナナを誘き出す罠なのか。
ナナは再度時間を確認します。
「ナナさんお願いだよ!僕を信じて!」
その言葉に、ナナはヒカルに賭けてみることにしました。
岩陰から出てヒカルの元に向かいます。
「ナナさん!」
緊張しながら向かうナナでしたが、ヒカルはホッとして微笑みます。
「生きててくれてよかったよ」
月はまだ出ており、ヒカルの能力は使えると言います。しかし、ヒカルとナナが殺し合う必要はなく、我に返ったのだと語りました。
「どうかナナさんも落ち着いてほしい」
「どうしようというんです?」
問いかけるナナにヒカルはお互い頭を冷やすために少し歩こうと手を差し出しました。
「…脅されては仕方ありませんね」
その言葉にヒカルは手をサッと引きます。
「ご、ごめん。つい…」
二人は崖まで歩き、海を眺めました。
「まずは謝るよ。僕はとんでもないことをしてしまった」
波の音とヒカルの謝罪を聞きながらナナは、嫌な場所だとつぶやきます。
「え?」
聞き返したヒカルには反応を返さず、ナナは最初に殺した相手である中島ナナオを思い浮かべていました。
「彼は本当にミチルちゃんのように善良な人間だったのかもしれない」
つぶやき続けるナナに、ヒカルは時間稼ぎをしているのかと尋ねました。
月はまだ見えていますが、ヒカルの能力は月が沈むまで使えます。
「そうだとしても僕はナナさんを信じる!一緒に“人類の敵”と戦う友達だって!」
そう言いながらヒカルは握手を求め、手を差し出しました。
ナナはそのヒカルの姿にあの日のナナオの姿を被らせます。
しかし、ナナはヒカルの手をひき、崖の方に押し出しました。落ちかけたヒカルでしたが、かろうじて崖に捕まります。
「お前は中島とは違う」
「ひ、ひどいよ!」
ヒカルは、自分はナナを殺す気ならいつでもやれたのに裏切るなんてひどい、と叫びます。
「嘘をつくな」
「嘘じゃない!まだ月は出ているじゃないか!?」
しかし、ナナはキッパリと否定しました。
「もう沈んでいる」
ナナはヒカルの能力の発動条件は月が見えているかどうかではないと推理しました。
「気づかないとでも思ったか?」
ナナの言葉にヒカルの体はびくりと揺れます。
実は、月の光は大気で屈折しているのです。今見えている月が沈もうとしているとき、実際の月はすでに沈んでいる時間なのでした。
「なにがいつでもやれただ」
とっくに能力が使えなくなっていたのに、ヒカルはナナを騙し、崖の方に誘導しました。
そして、和解の握手を求めた反対の手にはモエが使っていたワイヤーが握りしめられていたのです。
「隙を見てわたしを殺す気だったからだろう!?」
何も言い返さず、能力も使わないヒカルにナナはため息をつきます。
「わたしは本当にお前が改心した可能性に賭けてしまっていた」
ナナはそう言いながら足を上げ、ヒカルの手を踏み、崖に落とそうとしました。
「しょせんは“人類の敵”だった」
ヒカルは死の恐怖から泣き叫びます。
【311ページ挿入】
しかしナナはヒカルを落とさず、そのまま崖の上に引き上げました。
ヒカルは口が震え、何も話すことができません。
「今夜のことは忘れろ」
ナナは静かに口を開きました。
「そうして怯えたまま一生を送る限り、お前の罪をばらさないでおいてやる」
余計なことを話したり裏切ったりすれば今度こそ殺す、と脅してからナナはその場を去りました。
ナナはヒカルの小屋に戻ってモエを起こします。
モエは急に重力が解けた際に頭を打ち、気絶していたようです。
「さすがしぇんぱいです。あいつも討伐したですね?」
キラキラした目を向けてくるモエ。しかしナナはそれを否定します。
「殺したくはなかったんです。二度と誰も殺さないとは言いませんが、今回は嫌だったんです」
その言葉に、モエは絶句します。
「つ、つつつ、つまり裏切るですか?」
「…どうとられてもかまいません」
俯くナナを見て、モエはナナのポケットから携帯端末を出し、ヒカルの推定殺害人数を見せつけます。
「使命を思い出すです」
ナナは顔をしかめます。
「それにミチルちゃんはどうなるですか?助けてもらえないですよ?」
何も言わないナナに、モエは携帯端末を手に握らせます。
「さ、しぇんぱい。ヒカルにとどめを刺しに行くです」
くるりと背を向け、小屋を出ようとしたモエですが、ガシャンという破壊音が聞こえ、あわててナナの方に振り向きます。
そこにはナナに床に叩きつけられて壊れた携帯端末がありました。
「ミチルちゃんがわたしにくれた一番大事なものは、自分と…」
自分の本心と向き合うということだ、と語ります。
ナナは拳をギュッと握り締めました。
「わたしはもう、誰かの言いなりにはならない」