今回紹介するキャラクターは、主人公坂田銀時の恩師である吉田松陽（よしだ しょうよう）です。
物語序盤から銀時や高杉、桂といった主要キャラクターの師であることが明かされていましたが、詳細は不明のままでした。
しかし、連載が進むにすれ物語の最重要人物であることが判明していきます。
吉田松陽は、銀時たちへ影響を与えるほど強い信念の持ち主です。
そんな吉田松陽の魅力を、具体的なエピソードも交えながら解説していきます。
※６０巻以降の重要なネタバレが含まれます。
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吉田松陽とは何者？初登場はいつ？
吉田松陽が初登場となったのは、コミックス１２巻９７訓「備えあれば憂いなし」です。
主人公坂田銀時の旧友、高杉晋助の一味が起こしたテロ騒動に巻き込まれた銀時と桂小太郎。
テロの騒動の中、桂はようやく高杉と相対します。
そこで高杉は「俺達に生きる世界を与えてくれたのはまぎれもねェ 松陽先生だ」と松陽への恩を口にします。
銀時、桂、高杉の３人は、かつて攘夷戦争をともに戦った盟友でした。
銀魂における「攘夷」とは、舞台である江戸に突如宇宙からやってきた天人（あまんと）を排そうとする思想の事です。
銀時たちは、高圧的に開国を迫る天人から江戸を守るため戦いましたが、天人の武力に恐れをなした幕府は勝手に開国してしまい、攘夷志士たちは幕府に粛清されることになります。
攘夷戦争を生きのび、幕府の粛清からも逃れた銀時たちでしたが、このとき、実は戦争の以前から、同じ学舎で学んだ学友でもあったことが明かされました。
その時学舎で、３人を教えていた先生こそ松陽でした。
この高杉のセリフからも、３人にとって松陽という存在がいかに大きいものかがわかります。
吉田松陽の弟子・坂田銀時や高杉晋助との関係は？
先述した通り、吉田松陽は、銀魂の世界の重要人物たちの師です。
本作の主人公である坂田銀時にも、大きな影響を与えています。
銀時と松陽の出会いが描かれたのは、コミックス３０巻２６０訓です。
ある時、松陽は「屍を食らう鬼が出る」という噂を聞いて、戦の跡地へやってきました。
しかし、そこには鬼などおらず、代わりにまだ幼い少年が戦で亡くなった人間から刀や食料を奪って生きていました。
それが幼いころの銀時だったのです。
松陽は、銀時がこれまで振るってきた剣について、「他人に怯え自分を護るためだけにふるう剣」と呼び、それを捨てるよう諭します。
そして、自分の持っていた刀を銀時に授け、これからは「己の魂を護るために」剣をふるうように教えました。
これが、銀時と松陽の出会いでした。
銀時は時折「侍」「魂」という言葉を口にしますが、この考えは恩師松陽の考えに強く影響を受けていることが見受けられます。
では、松陽の考える「侍」とは何か。
それが分かるのが、弟子である高杉、桂との過去の出会いを描いたコミックス５８巻５１７訓です。
その頃、松陽は「松下村塾」という私塾を開き、金もとらずに子供たちに読み書きを教えていました。
高杉と桂は、松下村塾とは別の名門寺子屋に通っていましたが、ひょんなことから松陽と銀時に出会います。
高杉は松陽の異常な強さを見て、松下村塾に道場破りに尋ねます。
しかし、高杉は松陽どころか、弟子の銀時にあっというまに伸されてしまいました。
松陽は、負けてしまった高杉に侍とはなんたるかを問います。
そして、「侍とは、弱き自分を律し、強き自分に近づこうとする意志のことだ」という考えを述べます。
そのため、松陽にとっては、貧しくともまっとうな人間になるため松下村塾に通う教え子たちも、強くなりたいと道場破りに来た高杉も、すでに立派な侍なのです。
これが松陽の考える「侍」であり、銀時や万事屋にも継承されていく、銀魂が描く「侍」の根幹です。
松陽の考えを知った高杉は、家や国のために働いて死んでいく侍の在り方に疑問を抱いていたため、松陽の考え方に惹かれるようになります。
桂もまた、同門の高杉を気にかけつつ、今まで出会ったことのなかった考え方をもつ松陽に興味を抱きました。
やがて彼らは松下村塾の門下となり、銀時と３人、肩を並べて尊敬する松陽のもとで励むようになるのでした。
吉田松陽の最後は死亡？
本作の連載中、吉田松陽は銀時たちの師であることと、死亡しているということは明かされてきましたが、長い間詳細は不明でした。
それが明かされたのは、コミックス５８巻５１９訓です。
松下村塾で、銀時たちは平穏な日々を過ごしていました。
しかしその頃、天人に迎合して開国をした幕府と侍たちは、攘夷戦争の最中でした。
天人は、幕府の内政にすら影響を及ぼすようになり、彼らは「寛政の大獄」という粛清を始めます。
「寛政の大獄」とは、攘夷の芽となりうる危険分子を捕えて始末することで、攘夷の気運を抑えようとするものでした。
そして、松陽もまた、危険な思想を広めようとしている大罪人として捕えられてしまいます。
銀時、桂、高杉は、幕府から恩師を救うため、攘夷戦争に参加することを決めるのです。
しかし、戦争も終盤、桂と高杉は幕府に捕らえられてしまいました。
助けに駆け付けた銀時は、苦渋の決断を迫られます。
それは、仲間か恩師か、どちらかの首を刎ねろ、というものでした。
高杉は松陽をとても尊敬しているため、松陽を助けるように銀時に懇願しますが、銀時は迷わず松陽のもとへ歩を進めました。
銀時の胸には、かつて松陽とした約束がありました。
「仲間を、皆を、護ってあげてくださいね 約束ですよ」
松陽と長く過ごし、彼のなにより大事にしているものを知っていた銀時。
仲間を護れと約束を託した松陽のため、銀時は自ら松陽を手にかける決意をするのです。
松陽に歩み寄った銀時を振り返った松陽は、銀時の想いに気が付いていたようでした。
最期に微笑んで「ありがとう」と言い残し、銀時に首を刎ねられます。
こうして、吉田松陽はその人生に幕を引きます。
その後、恩師を取り戻すという目的を失った銀時たち３人は、散り散りになってしまいました。
吉田松陽と虚の関係は？
しかし、松陽と弟子たちの物語はここで終わりではありません。
とある衝撃的な事実が、コミックス６０巻～６２巻で明らかになります。
攘夷戦争から数年、銀時たちの前に虚（うつろ）という男が登場します。
虚は、天照院奈落の先代首領にして、天道衆の１人でもありました。
天道衆とは、江戸幕府を裏で操る天人の集団。
そして、天照院奈落とは、その天道衆お抱えの暗殺組織の事です。
虚との対面は、政府の敵とされてしまった真選組を、銀時たちが助けた際の出来事でした。
江戸幕府内の勢力争いに巻き込まれ、幕府、そして天道衆の敵となってしまった真選組。
彼らを助けた銀時たち万事屋一行もまた、幕府と戦う意思を見せたことになります。
真選組、万事屋と、それを追う天照院奈落との戦いの最中、虚が姿を現します。
虚はその圧倒的な強さで、戦況を一変させていきます。
虚に対抗できたのは、唯一銀時だけでした。
その理由は、虚がつけていた面が外れたことで明かされました。
虚の素顔は、亡き松陽にそっくりだったのです。
虚の正体は、地球の「アルタナ」と呼ばれる強いエネルギーによって生まれた、地球が在る限り死ぬことのない不老不死の存在でした。
そのため虚は圧倒的な再生力を持ち、どんな傷でもあっという間に元に戻ってしまいます。
彼は、長い時を生きる中で人々に鬼と恐れられ、暴力や殺意の対象にされてきました。
人間に何度も殺されその度に蘇るという苦痛を繰り返し、彼はその苦しみから逃れるため、自分の中にいくつもの人格を産み出します。
松陽とは、虚が生み出した人格のうちのひとつだったのです。
やがて、虚たちは自らがされてきた殺戮を人間に対してするようになります。
しかし、ある時朝廷に捕らえられるとその戦闘の腕を買われ、天照院奈落の首領になりました。
それ以降５００年もの間、その時政治の頂点に立つ者に仕え、仇なす者を殺し続ける人生を送るようになります。
しかし、松陽は延々と続く殺戮の日々に疑問を覚えます。
この日々に終わりを告げようと、松陽は虚たちの人格を抑えつけ、天照院奈落を抜けだしました。
そこで彼は銀時と出会い、松下村塾を開くことになるのです。
その後、松陽は銀時に首を刎ねられますが、彼の不死の身体は死なず、虚という人格を伴って復活しました。
それが、銀時たちの前に立ちはだかった虚だったのです。
復活した虚もまた、自分の永遠に続く命に嫌気がさしていました。
自分が死ぬ方法は、命の源である地球のアルタナが消えること以外ありえません。
そこで虚は、地球をアルタナごと消滅させることで、自らの命を絶とうと考えました。
彼は持てる力と権力を使い、地球を破壊しようと企みます。
もちろん、銀時たち万事屋や、真選組の面々、かぶき町の人々などは、大切な人たちが生きる地球を壊させるわけにはいきません。
こうして、自殺のために地球もろとも破壊しようとする虚と、大切な人たちを護りたい銀時たちの最後の戦いが始まるのです。
虚は死亡したのか？最終決戦の結末は？
虚は、地球を滅ぼすため、地球と宇宙の星々に戦争を起こさせます。
銀時たち地球人の奮闘や、かつての敵の協力もあり、彼らは虚を追い詰めることに成功します。
しかし、虚を倒す一歩手前で、虚は自らアルタナの中に身を投げ、消えてしまいました。
虚は、ここで死亡したかに思われました。
しかし、それから2年後、再び物語は動き始めます。
銀時は最後の戦いのあと、万事屋を抜け、1人で旅に出ていました。
目的は、復活するであろう虚の捜索。
虚は不老不死で、アルタナから生まれた存在です。
アルタナの中に身を投げても、再びアルタナから生まれると予想したのです。
そして、その予想は当たり、虚は赤ん坊の姿でアルタナから再び生まれます。
まだ誰の人格も持っていないその子供と、銀時は共に旅をします。
その子供は一言も話しませんでしたが、ある時突然話し始め、自分を「無数の古い名から松陽の名だけは思い出した……そんな存在」と言いました。
その話し方はまさしく松陽そのものに思えます。
しかし、子供姿の松陽は、虚を取り戻そうとやってきた天道衆に攫われてしまいます。
天道衆は、虚の血を使って自分たちも不老不死になろうと考えていました。
彼らは虚の血を取り込みましたが、不完全に不老不死の力を得たため、死ねないまま肉体は腐っていくという悲惨な状態になってしまいます。
彼らは真の不老不死の力を得たいばかりに、子供姿の松陽にアルタナを流し、研究のため復活させようとしました。
しかし、天道衆は虚の血を取り込んだことにより、血に含まれていた虚の因子によって、虚に操られることになってしまいます。
一方、アルタナを流されていた子供は、松陽に限りなく近い人格を持って復活しました。
こうして、天道衆を操る虚は引き続き地球を破壊するため、松陽はそれを止めるために動き始めます。
虚の因子を持つ天道衆たちは、銀時や高杉、桂によって倒されて行きました。
しかし、最後に残った虚の因子は、高杉の中にありました。
高杉との因縁じみた最終決戦を戦い、銀時たちは、ようやく虚のすべての因子を排除することが出来たのです。
しかし、時はすでに遅く、地球のアルタナは暴走しかけていました。
暴走を止めたい松陽は、万事屋たちの力を借り、アルタナの放出する穴へたどり着きます。
松陽は自分の中に残ったアルタナを全てぶつけ、エネルギーを相殺して地球を護ろうとしていました。
松陽は、最後の力を振り絞り、万事屋や銀時の仲間たちの手を借りてアルタナの暴走を止めようとします。
銀時もまた、困難を乗り越え恩師のもとへ駆けつけました。
松陽は、銀時の成長をその目で見届け、アルタナとともに消えていきました。
こうして、松陽は最期に教え子である銀時に会い、地球を護ることが出来たのです。
まとめ
吉田松陽は、作中様々な人たちに影響を与えました。
銀時や、高杉、桂の考え方の根本は、松陽から学んだことでもありましたので、銀魂という物語には欠かせない人物であることに間違いありません。
最終決戦で復活した際には、万事屋の面々とも出会い、志村新八と言葉を交わしています。
ようやくひたすらに長く苦しい人生に幕を閉じた松陽。
しかし、最期に愛弟子たちの成長を見届けることが出来て、幸せに逝けたことでしょう。