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『ガンニバル』12巻 ネタバレ紹介!
102話
惠介の視点から始まります。
「撃てよ」
「この距離、この角度からなら当たる」
村の祭りを終わらせようと、惠介は阿川の後ろからあの人を撃とうとします。
「何を迷っとるんや、俺は」
だが、今まで村の守り神として崇めるよう教えられできた「あの人」を撃てるのか迷いが生じます。
主人公、阿川は「あの人」を庇う娘に立ち塞がれ撃てません。
「どけ、ましろ」「どけっつってんだよ」
再び惠介は撃とうとします。
「トドメ刺すんは今しかないやろ」
迷いを感じつつ惠介は撃ちます。
惠介は祖母、銀の血に影響されるように阿川巡査の腕を銃撃します。
惠介は食人鬼である「あの人」を神と敬うように教えられ、土壇場で教えを破れない事に絶望します。
そして主人公・阿川はあの人に地面に叩きつけられ、気絶させられてしまいました。
その頃、阿川と賢介の居場所を知る神主、宗近は後藤家に尋問され、阿川巡査のもとへ案内させられていました。
そして後藤家の面々が到着します。
後藤家は生贄を阿川の娘にし、食人の祭りを開始しようとします。
その時、後藤家の1人が慌てた様子で駆けつけ話します。
「とんでもない事になってきたわ。来る途中警官隊を見た。いや、あれは警官隊というより軍隊や。」
「見たのは俺だけではない、俺たちは囲まれとるんや」
後藤家の一人も驚きながら返します。
「なんやと、この場の周り囲まれとるいうんか!?」
軍隊を見たという後藤家の一人は話します。
「違う、友花村全体や」
ここまでの話ですでに警官隊が20人余り殺害されているため、国も本腰を入れて対応しに来たようです。
途中から来た後藤家は話します。
「この村は戦場になる。国との喧嘩の始まりや。」
これから後藤家は、この村はどうなってしまうのでしょうか。
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103話
場面は変わり、村を包囲する自衛隊に移ります。
隊長らしき人物は言います。
「躊躇するな」「向こうに抵抗の意思ありと判断すれば、即座に反撃せよ」
すでに警察官20人以上が後藤家との争いで犠牲になっており、怒りを隠せないようです。
隊長は続けます。
「いいか、奴らは獲物だ」「巻狩の要領で広範囲に敷いた包囲網を縮めていく」
どうやら、包囲網を縮め散り散りになった所を一網打尽にするようです。
「いいか、これは戦争ではない」「国に喧嘩を売った少数を圧倒的な力でねじ伏せる」「獣相手の山狩りだ」
そう隊長は締めました。
いくら後藤家に力があろうとも、自衛隊に勝てるわけがありません。このまま潰されてしまうのでしょうか。
場面は変わり、後藤家の面々が話し合っています。
軍隊が包囲されていることを知っても、後藤家の岩男はまだ戦い続けるようです。
岩男は言います。
「上等やないか」
それに対し、神主の宗近は言います。
「まだ続けるんゆうんか岩男!!」
「死人が増えるだけやろ!」
ですが岩男はこう返します。
「だからなんや」「死ぬことなんぞ問題やない」
まだ戦い続けるのかと問われますが、自分が死んでも問題ないと言います。
岩男は続けます。
「俺らがいくら死んだところで、女子供まで皆殺しにされることはない」
たとえ警官殺しに関わった後藤家の男が死んだところで、女子供までは皆殺しにはされません。
「種さえその種がまた増えて植えて、新たな後藤家が生まれる」
「死に様こそ生き様」「そう思うやろ惠介」
後継者という「種」は残るため、あえて負け戦でも戦い、生き様を魅せるため戦って死んでいくという考えのようです。
惠介は答えます。
「ああ、祭りを続けるぞ」
後藤家党首、恵介も祭りを続ける腹積もりのようです。
果たしてこのまま祭りが続けられ、阿川巡査の娘が生贄に捧げられてしまうのでしょうか。
その時失語症だった阿川の娘、ましろが言葉を発します。
「お母さん」「お父さん」
後藤家党首、惠介はそれを聞き、自分の妻と生まれたばかりの子供を想起します。
場面は変わり、供花村を脱出した阿川の妻や惠介の妻、惠介の母に移ります。
「私が話せることは全て話します」「だからどうかあの子を、惠介をっ…」
「女は無力なのでしょうか」「夫と娘が死ぬかもしれない時に、ただ待つしかできない」
それに対して、側の警察官は言います。
「今はただ祈りましょう、二人が帰ってくることを_」
無事に帰ることができるのでしょうか。
そして食人鬼であり供花村の現人神である「あの人」が阿川の娘をまさに喰おうとしているところで103話は終了します。
104話
場面は過去、阿川巡査は家族団欒中です。
阿川はましろに言います。
「食わねえんなら食っちまうぞ」
「いいのか、ましろー」
失語症になってしまったましろを前に、阿川は悩みます。
ましろは過去に目の前で父が人を射殺する場面を目撃してしまい、そのせいで失語症になっていました。
「やっぱり離れて暮らした方がいいのかな、俺がいなくなりゃましろもまた…」
そんなことを考えている阿川を妻が励まします。
「ばーか、何言ってるの」
「ほら見てみなよ良い景色じゃない」
阿川が周囲を見回してみると、自然豊かな情景が見えます。
「ここで生きていくよ。きっと大丈夫。すべてうまくいくから」
妻はそう続けます。
そんな暖かな雰囲気にましろも一瞬笑みを浮かべます。
阿川の妻はそれに気づいた様子で話します。
「笑った。今笑ったよねましろ。」
ましろもきっと良くなる。そんな思いでいました。この時は
「目開けろ。駐在」
気絶から目を覚ました阿川巡査、目の前には後藤家当主の惠介がいました。そしてこう続けます。
「お前も食えや」
そう言われ、阿川はひとつまみの生肉を目の前に差し出されます。
祭囃子と太鼓の音が阿川の耳に響き渡ります。
そんな中で惠介は話します。
「狩野の言った通りや。俺たちは人間を」
阿川はましろを助けようとするも、手足が縛られて動けません。ましろはいけにえに捧げれられ、喰われてしまうのでしょうか。
食人鬼「あの人」、ましろをにかぶりつこうとします。
ましろは言います。
「泣かないで」
なんと「あの人」から大粒の涙がましろの頬におちています。
「あの人」が言います。
「カアチャン」
「あの人」は思い出します。これまで人間を肉として、餌として食べてきました。そんな人間にも一人一人の考えがあり、想いがあったのだと。
それに気づき、嘔吐する「あの人」
その時銃声が鳴り響きます。惠介が「あの人」を撃っていました。
105話
惠介の独白から始まります。
「俺はもう…誰も抱きしめられねぇ」
後藤家当主、惠介は「あの人」を銃撃します。
「あの人」は左側頭部を撃たれてしまいました。
その様子を見て、惠介は回想します。
「あんたの本当の名前、ばあちゃんから聞かされていた」
「”あの人”なんかやない、(名前は)白銀」
「そして俺の」
どうやらあの人には白銀という名前があり、惠介の父親でもあったようです。
惠介は思います。
「なぁ、アンタも気づいてもうたんやろ、食ってきたものが只の人間やったと」
「もっと早くこうするべきやったよな…」
「せめてこの娘だけは」
供花村は既に何十年とこの祭りを繰り返してきています。いったい何人が犠牲になったのでしょうか。
「せめてこの娘だけは」
「この場の全員を…」
そう思いつつ、惠介は周りに立ち並ぶ後藤家に銃を向けます。
祭りの主役、神となった白銀が銃撃され、後藤家の面々と惠介は互いに銃を構えます。
そんな中、死んでいなかった白銀は言います。
「ヤメロ」
白銀は後藤家と惠介との衝突を止めます。頭を撃ち抜かれても生きているようです。
「あなたの頭撃ち抜いとんですよ」
後藤家の一員はそう言います。ですが白金はこう返します。
「生キル」
その様を見て前神主の政宗は話します。
「自分は死なない…生き続けてゆく、ゆうことやないか」
「惠介君の中で」
白金は息も絶え絶えになりながら話します。
「殺スナ、殺サナイデ…」
惠介と白銀は血縁関係です。神である自分の血が流れているから、惠介を殺すなと言います。
政宗は話します。
「惠介を殺すな、それが最後の言葉。遺言や」
その様に後藤家の面々は手が止まります。
そして、白銀は自らの口の中を指で確認し、これまで食べてきた獲物と同じ人間だと確認します。
次の瞬間、白銀は娘を食う代わりに自分を腕を噛みちぎって食っていきます。
その様を見て、政宗は言います。
「病を克服して、本物の神になったんやな」
白銀は幼少期から人肉を食ってきたため、それ以外は食えない体質になっていました。
それ以外の物を食べられる事で、人肉食という『人』がかかる病を克服し、『神』になったと捉えられたのでしょう。
その様に後藤家は平伏します。
これで丸く収まるのでしょうか。
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106話
自分の腕を食い尽くし、白銀は倒れます。
それを見ていた先代神主・正宗が言います。
「見事や白銀。美しい最期や」
阿川の娘、ましろは泣き出します。
そして後藤家元党首、惠介は言います。
「お前らにはこの娘が何に見えとる」
「後藤家のみが人間?そうやないやろ」
そう言う惠介の脳裏には過去食われてきた人間が回想されます。
地下牢に囚われ、食われるのを待つだけだった子どもの目。
前の駐在であり、後藤家に表立って反抗した駐在。
そしてこう続けます。
「誰も、誰も死ぬ必要なんぞなかった」
「皆が人間やったと最期にあの人は、父は罪に気づいた」
「この娘を食わなかったことこそが己が父の最期の意志」
「この娘は生かす」
「この先も生きていく」
惠介はさらに続けます。
「お前らも生きてみせろや、戦って死ぬ事なんぞ簡単すぎる」
「罪背負ってでも生きていく姿、子供らに見せていこうや」
「皆で投降するぞ」
投降する意思を見せる惠介。それを見て後藤家の面々は平伏します。
象徴である白金は天に登り、その意思は元当主に引き継がれました。
『これで終わったか?』
そう思う前神主・正宗。前当主の、銀が残した忌まわしい風習を断たれていくのかと思いきや、違うようです。
その雰囲気の中、惠介の腹心である岩男が口を開きます。
「見事や、惠介」「戦って死のうなんぞ浅はかすぎた」
「お前は俺たちに答えの先を明示してくれたんや」
その様を見て、前神主はひとりごちます。
『こいつは違う、はなから白銀を神と見ていたはずがないんや。こいつの中の血は…』
その脳裏には一人の男が浮かびます。
どうやら、後藤家も成り立ちからして一枚岩ではないようです。
そして岩男は阿川巡査を見て、こう続けます。
「こいつだけは殺さんとのう」
「お前を散々たぶらかしてきた悪魔や、お前だけは許さん」
107話
岩男の回想から入ります。
『惠介、俺はお前だけを見てきた婆さんに言われたからなんかやない。お前を守ることが俺の』
幼き日、後藤家当主の惠介の頭に包帯がまかれているのを見て、岩男は言います。
「どうしたんやその傷」
惠介は言います。
「なんでもないわ」
岩男は返します。
「んなわけないやろ」
惠介は傷の理由を隠そうとしますが、岩男はこう話します。
「お前が傷つくとこなんぞ見とうない」
「なんでも言うてくれ、俺はお前を守ることが…」
ですが、惠介にこう返されます。
「やめてくれ、そうやない」
「友達やないか。お前が守ってくれるゆうなら、俺もお前を守る」
岩男はそれを思い出し、こう思います。
『あの時そう言うてくれたよな、やのにお前は…』
場面は変わり現代、阿川巡査は頭部を怪我した岩尾に追い詰められています。岩男は言います。
「お前のせいか?惠介を散々誑(たぶら)かしてきたかしてきた お前だけは許さん」
岩男は阿川に会ってから変わってしまった惠介を見てきて、阿川を許せなくなったようです。
岩男は頭を踏みつけようとして、阿川に避けられます。
その時阿川を縛っていた紐が両手分だけ切れます。
紐を切ったのは神主の宗近です。
その様子を見て岩男は言います。
「大人しく死んどけや阿川」
それに対して阿川は、縛られていても激しくののしります。
「おめえこそいつまで生きてんだよ、決着つけるぞ後藤岩男」
岩男が言います。
「両足縛られたままでか?」
阿川も負けじと言います。
「知るか、殺すっ」
お互いがののしり合い、つかみ合い争おうとしますが、岩尾の腕が撃たれます。
撃ったのは惠介です。
岩男は信じられない様子で話します。
「いたいぞ、これは何かの間違いやんな、惠介」
岩尾は惠介が阿川を庇うようになった心変わりが信じられないようです。
惠介は言います。
「もうやめてくれ岩男」
「お前を守るためなんやぞ、約束がちゃうやないか」
岩尾は怪我でふらつく頭でそう話します。対して惠介は言います。
「俺もお前を撃ちたいわけあるかぁ!今もお前は頭をやられて」
惠介が説得しますが、岩男は聞こうとしません。
「お前は俺を裏切ったああぁぁ」
岩男はそう言うと、視界が暗転します。
「岩男?」
惠介は問いかけます。
対して岩男が言います。
「誰やお前」
再び視界が戻った時、惠介との記憶は消えていました。
惠介が不思議がり話しますが、岩男は知らないといいます。
「気安く話しかけてくるのぉお前、知らんぞ」
その様子を見て後藤家の一員が言います。
「ふざけるなよ、俺らが後藤家の当主やろが」
後藤家の面々も問いかけますが、惠介への記憶だけすっぽり抜け落ちてしまったようです。
岩男は続けて言います。
「婆さんは死んだやろ。そいつが当主や騙ってるゆうんかあ」
岩男の豹変ぶりに後藤家も動揺を隠せません。
その様子を見て阿川は言います。
「今のうちにましろを連れて逃げんぞ。手伝ってくれ」
この隙に縛られている娘を解放して、阿川は逃げようとします。
前の神主・正宗は考察します。
『頭のダメージか、裏切られたショックからか、この男の中で惠介君の記憶が消えとる!?』
岩男は惠介に手を出そうとしますが、神の子息である惠介に手を出すことを周囲の後藤家の一団に止められて言います。
「神、これのことか?」
そう言って今まで祀られてきた白銀の頭を潰します。そして続けます。
「こんなものが神であるものか。たかが気まぐれに拾われた赤ん坊やろ」
「いつまでババアに洗脳されとる。この世に神なんぞおらん。血と肉があるのみ」
「血と肉は誰が植えたものか。よう思い出してみぃ」
その様子を見て前の神主・正宗は思います。
「こいつは全て知っとる、コイツは似とる。まるで生き写しや。あの男に」
あの男とは、いったい何者なんでしょうか。
108話
前神主、正宗の回想から始まります。
正宗は言います。
「後藤家にも育ってきましたね」
「僕らの作る供花村で育っていく、子供達が」
正宗は続けます。
「一度この村は終わった。この子らが生きてくんはしがらみのない世界や」
満足そうにする正宗。しかし子供達の母親である女性がいない事に気付きます。
そこで銀が言います。
「お前は相変わらずやの。ついてこい、見せたいもんがある」
銀にそう言われてついていった先には、地下牢がありました。
「ここが白銀のいる地下牢ですか」
正宗が銀に問いかけます。
「一番奥におるわ」
正宗は奥に行こうとしますが、急に横から聞こえてきた声に呼び止められます。銀は話します。
「見せたかったんは白銀やない、コイツじゃ」
「助けて」
そこには牢に入れられた大勢の女性と、乳飲み子がいました。銀は正宗に言います。
「正宗よ、こいつらが何者かわかるか?」
「あの子供らの、母親じゃ」
赤ん坊が泣き叫び、母親らも牢の中から手を伸ばし叫びます。
「出せコラ!」
困惑する正宗ですが、銀曰く乳飲み子のうちは乳が必要なため、ここで育てさせるとのこと。
また、女であるうちは死ぬまでここで子を産ませ続けるようです。
「こんな所に閉じ込めて、子供達には母親が必要でしょう!?」
正宗は銀にそう話しますが、銀は聞き入れません。
銀は自分と正宗がしてきた悪事を知っている彼女らは、後藤家を作るのには邪魔になりるといいます。
何も知らない赤ん坊だけいれば、都合のいい事を吹き込めるということです。
後藤家を再び作るには人手が欠かせません。
「こっからみんなを出さんか!!やないとこの子を殺す!」
牢の中の女性に子供を殺すと逆に強迫されますが、銀は涼しい顔をして話します。
「殺せるならとうにやっとろうが、自分の子供を」
それを聞き、嘆く女性たち。正宗もこの光景に動揺を隠さず言います。
「こんなん何で今さら僕に…」
正宗は銀にそう問いかけますが、
「おまえのにやけヅラ見とったらムカついてしまってのう」
銀のその言葉を聞いた正宗は耐え切れなくなり駆け出します。ようやく作ったと思っていた後藤家はとんでもないものだったのです。
「僕が作りたかったのはこんな世界やない…」
正宗の前に先代の岩男が現れ言います。
「銀、あの場所を見せたのか」
銀は返します。
「何か問題でもあるんか」
そう言われた岩男は、いきなり銀を殴ります。
「問題ない、お前に縛られてるコイツには何もできん」
「だが勝手な真似はするな」
岩男は、山での約束があったから銀を生かしていると言います。
そして、白銀を神として崇める神話を必要としている事が分からないと言います。岩男は続けて話します。
「神なんぞいないと思わないか」
「男は兵隊、女はそれを産む肉塊」
この世に血と肉があるのみと続けます。
場所は現代、岩男の意思も受け継がれていました。現代の後藤家腹心・岩男は言います。
「髪なんかいなくても俺たちの衝動は血と肉に刻まれる」
「人間を殺し、それを喰い尽くす」
「それが俺たちの本能やろが」
場の空気が変わろうとしています。
109話
『人を殺し、喰い尽くす』
『それが俺たちの本能』
岩男の言葉が後藤家の一団に響きます。
当主・惠介は岩男を止めようとしますが、銃口を逸らされ殴られてしまいます。
そのまま岩男は話します。
「お前らいつまで呆けとる」
「目の前に死体(にく)があるんぞ、食わんかぁ!」
そう言って後藤家の一人に肉を食わせます。そして言います。
「散々銀に吹き込まれてきたんやろ。食う事で弔うんやと」
それ惠介は見て、銀との思い出を回想します。
過去の銀は話します。
「食うとらんわ」
「たしかに後藤家はかつて口減らしの人間を食ろうたかもしれん」
銀は白銀のみが後藤家の人間の亡骸を食ってきたと言います。
弔うのはただの屁理屈で、祭りと己の行いを正当化するための方便であったと。
「やが奴らは違う」
「彼奴(きゃつ)等は山で生き、人間を狩っとった」
どうやら岩男の祖先は代々、山に入った流れ者を獣の如く狩っていったとのこと。
銀が山で生き延びてこられたのは、時代的に限界を迎えていた彼らに定住先を示すことができ、取引できたからだといいます。
「やないと己も喰い殺されとったわ」
今の後藤家はそいつらの子孫だと銀は言います。銀は人を喰った時の味が忘れられず、その末裔も同じであると。
『喰らわば想起する』
『血と肉に刻まれた、己の正体を』
肉を食わされた後藤家の一員も、食人鬼の出会ったことを思い出します。
そして岩男は続けます。
「山を駆け回り、獲物を捕らえた興奮を」
「それをさばき開いた時の温度を」
「全身で噛み締めた時の歓喜を」
「人を喰うて何が悪い、俺たちは食人族や」
その声に呼応するように、白銀の死体を後藤家が食い散らします。
どうやら次の獲物は阿川親子のようです。岩男は言います。
「あの男さえおらなんだら、誰も死ぬことはなかった」
元当主、惠介の静止の声も聞こえません。
本能に従った後藤家の面々を止めることができるのでしょうか。
110話
阿川の独白から始まります。
『喰ってやがる』
阿川のこれまで求めてきた光景が目の前にありました。
「なんてことはねぇ、はなからこれがてめぇらの正体じゃねぇか」
ましろを縛っていた縄は切れますが、後藤家の面々が襲いかかります。
双方の間に惠介が止めに入りますが、後藤家は止まろうとしません。
前の神主・正宗はその光景を見て思います。
『いかん…もう終わりや。血と肉に刻まれた本能が呼び覚まされよったんじゃ』
正宗はその光景をただ見ているしかありません。
後藤家の面々は惠介の腕にも噛みつき、喰いちぎろうとします。
食われつつ惠介は思います。
「もう届かんのやな、俺の声は」
銀が嘘の歴史で押さえ込み、現代で生きていけるようにした化けの皮が剥がされてしまいました。
「なんでこうなるんじゃ、阿保お」
「俺はもうお前らを殺すなんぞできん」
「だけどせめて」「せめて」
追い詰められた惠介は、せめて阿川親子を逃がそうとします。
『ばあさん、今ようやくわかったわ。俺の命の役割が』
『コイツらを逃がす、それを果たすだけの命でいい』
『ごめん母ちゃん、ごめんすみれ。もっかい抱きたかったわ』
惠介は命がけで後藤家を止めようとします。
ですが「まだ死ぬには早えぞ馬鹿野郎」
主人公、阿川が後藤家をほとんどのしていました。
阿川は話します。
「まだ何も終わってねぇ」
「帰りを待っている人がいるんだろうが、お前にも」
「帰るぞ」
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