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『魔王城でおやすみ』17巻 ネタバレ紹介!
第209夜「呪われていて引き離せない!」
あくましゅうどうしは手に包帯を巻きつけています。
部屋にノロイダケが生えていて、呪われてしまったからです。
しかも、呪い消しのおふだの在庫が切れていて呪いを消すことができず、仕方なく包帯を巻いているのでした。
「それにこの程度なら、別に誰にも心配はかけないし・・・。」
「レオくん・・・そのケガ・・・」
と姫がものすごく心配そうな顔で震えています。
あくましゅうどうしが姫に呪われたことを伝えると、姫は度肝を抜かれたような表情で固まってしまいました。
あくましゅうどうしが書類整理に向かおうとすると、お化け風呂敷が近くを通りかかりました。
すると姫はハサミを取り出し、お化け風呂敷を刈り取ろうとします。
「急にどうしたんだい姫――――!?」
「今・・・お化け風呂敷の風が、おててにあたらなかった・・・?」
と普段の姫からは考えられないようなレベルでの過保護さにあくましゅうどうしは勘ぐります。
「姫、もしかして何か狙いがある・・・?」
姫は相変わらず、この先マグマがあるから、手すりは危険だから1m離れて、などとかなり警戒している様子です。
あくましゅうどうしが姫に本当に大丈夫だよと諭すと、姫はとてもまじめな顔で、
「・・・・・・別に理由なんてないよ。レオ君は今実際けが人なんでしょ。呪いは軽傷だけど今すぐは治らないんでしょ?」
「それが心配なだけ。だからみてる。」
とあくましゅうどうしの手を取りながら言いました。
あくましゅうどうしはすこし照れくさそうに感謝を伝えると、今日はこれでいいかなと納得しました。
ようやく、あくましゅうどうしにかかった呪いの効果が切れ、呪いは無事に治癒したことを姫が確認すると
「これで安心して眠れる!」
と言い残し、姫は自分の寝床に帰っていきました。
・・・・・・はずですが、姫は余程安心したのか、教会を出てすぐのマグマに転落して“ひめのはか”があくましゅうどうしの元に現れました。
あくましゅうどうしは驚愕のまなざしで姫を蘇生しました。
「いのちだいじにーーーー!!!」
今日の慎重さは何処へと思うあくましゅうどうしだったのでした。
第210夜「パパは小学2,3年生(くらいのサイズ)」
“魔導書鼻炎”・・・それは、ランダムに魔術を発動する病。
先日の一見(16巻第200~204夜参照)では、膨大な魔力を必要とする超高位魔術が発動し、姫たちを巻き込みなんとか被害なく終わった・・・。
かのように見えたが、“魔導書鼻炎”の引き起こす魔術は完全にランダム。
それは、“誰の魔力を利用して発動するのかさえも。
誰かの魔力を吸い取って発動するのだ。
先代魔王ウシミツは魔王タソガレの下を訪れていた。
「数日前・・・何者かがお前の父たるわれの魔力を吸い上げた!」
先代魔王ウシミツの巨体は蓄積する膨大な魔力によって保たれていたので、魔力を吸い取られてしまった今、ウシミツの体は小学2,3年生ぐらいの大きさしかないのです。
ウシミツは魔力を吸い上げられた大本がタソガレの支配する城からだったために、魔力を吸い取った犯人を見つけ出そうと視察しに来ていたのでした。
ウシミツが視察していると、なにやら怪しげな集団を発見しました。
そこにはアイドル風な衣装に身を包んだ“さっちゃん”と“姫”が踊っている様子を、ペンライトを持って応援しているネオ=アルラウネが居ました。
「昔とは明らかに違う動き・・・・・・謎のうねり・・・!あやつが逆賊だ・・・!」
とウシミツが彼女らを捕えに行こうとしたとき、タソガレが引き止めます。
「待ってください・・・。あの・・・あやつは・・・わりとずっとああです・・・」
アルラウネがペンライトをもって応援し始めたのは、姫にアイドルをさせてからです。
ウシミツは少し困惑しながらも、タソガレの言う事に納得しました。
ウシミツはまた怪しげな動きをする魔物を発見しました。
物陰でこそこそしている魔物をとらえようとします。
「やはり何かを秘匿するのは逆賊の常・・・。」
ですが、またもタソガレに止められてしまいます。
「あいつも・・・その・・・いつも通りです・・・。」
そうタソガレが言うと、今度は困惑した表情で納得しました。
「タソガレ! 今度こそ間違いない!」
ウシミツの指した先にはあくましゅうどうしが居ました。
あくましゅうどうしは石の柱に頭をぶつけています。
「あやつ・・・何かに乗り移られているぞ・・・。」
何故、あくましゅうどうしがそのような奇行に走っていたかというと、姫の着ているアイドル風の服装は刺激が強すぎて冷静さを失っていた為です。
「アイツはほんと・・・ずいぶん前からああです・・・。」
とタソガレが言うと、ウシミツはそうか、と再び困惑し表情で納得しました。
結局丸一日探してみても見つからなかったが、タソガレはしばらくの父との時間がずっと続けばいいのになと考えていました。
「親不孝な吾輩を・・・許してください父上。」
そういっていタソガレは眠りにつきました。
第211夜「勘のいいトリは悲哀だよ」
魔王城は落ち着きを取り戻しました。
のろいのおんがくかはタイムスリップ以来の平穏に酔いしれています。
しかし、のろいのおんがくかは小さくなったウシミツが場内にいるという噂を耳にします。
そこに姫がウシミツを連れてやってきました。
のろいのおんがくかは驚愕します。
「モー太郎だ。」
のろいのおんがくかはありえないくらいの洞察力で余計な気付きを3つしてしまいます。
まず一つ目が
「魔力が誰かに奪われた」
二つ目が
「犯人を捜しているから場内をうろついている」という事。
三つ目が
「超膨大な魔力を溜めておけばすぐにバレてしまう。という事は、魔力を使った。犯人は超超高等魔術を発動しているやつがいる」ということ。
ここ最近で膨大な魔力を使用する魔術を発動した人物はタイムスリップした、のろいのおんがくかと姫です。
先代魔王にばれてしまうと確実に殺されることを確信したのろいのおんがくかは、幸い自分しか気づいていない事を良いことにスルーしようとします。
しかし、姫は枕を作るために羽毛を洗おうとしています。
そこで姫が羽毛の洗い方を調べるために、今回の事件の元凶である“魔導書アラージフ”で調べようと魔王の前で本を出してしまいます。
のろいのおんがくかは悲鳴を上げて、姫に別の本を渡しました。
「セーーーーフ・・・!!」
「あの元凶の本をウシミツ様に見せるのはやばい!!」
ひとまずの関門を乗り越えたのろいのおんがくかですが、またしてもピンチに陥ります。
「そうだ。坊やに最近の冒険のお話をしてあげようか。」
と姫がウシミツに言いました。
のろいのおんがくかはまだあのタイムスリップした話ではないかもしれないと思っていましたが、姫が10年前に・・・と話し始めた瞬間にうめき声を上げました。
そこで機転を利かせて、クローン島に行った時の話が聞きたいと、姫に話を振りました。
「心臓に悪い。 心臓に悪いマジで!!!」
「なんとか別の話になって助かった・・・」
と胸を撫でおろしていると、ウシミツが
「タソガレめ・・・ 戴冠式から成長していないのではないか? どう思う。」
と無理やり戴冠式の話につなげてきました。
この質問に答えられるのは10年前の戴冠式に居た者です。
姫やのろいのおんがくかは本来なら存在しえないですから、答えてしまうと一発でばれてしまいます。
絶対に答えてはいけないと姫に視線を送りますが、姫は
「大丈夫。成長してるって。」
と答えてしまいました。
絶体絶命、確実にバレたと思っていたのろいのおんがくかですが、魔王ウシミツは
「そうか・・・」
と何故かバレることなく話が終わりました。
洗い終わったふわふわの羽毛に飛び込む一同ですが、魔王ウシミツはのろいのおんがくかが一番疲れて爆睡していることに疑問を浮かべていました。
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第212夜「絶対観てくれよな」
「この度!この魔王城をモデルとしたアニメの制作が決定した!」
と魔王タソガレは言いました。
続けて、
「今日は城中を録画している! 今日の映像を元にアニメーションは作成される!!!よって、カメラはあるがいつも通りの生活をしてくれ!!」
魔王タソガレはいつも通りの生活とは言ったが、一応城内をチェックして回ることにしました。
映像制作会社は魔界きっての「動画魔工房」ということで、よい資料映像を送らなければな!と意気込んでいると、魔物の悲鳴が聞こえてきました。
魔王が慌てて様子を見に行くと、アニメに出ようと必死の魔物たちがカメラの前で演技をしていたのです。
「オレ・・・この戦いが終わったら結婚するんだ。 がくっ。」
「バカ「「がくっ」」は口で言うな!」
魔王は呆れています。
「日常の捏造が始まっている・・・」
レッドシベリアン・改が恐らくアニメは魔王様主役の戦記物になるだろうからほっておきましょうというと魔王は納得し、偵察に戻ります。
しばらく偵察していると、
「私 ネオ=アルラウネ!! 恋も仕事も一生懸命!!」
という声が聞こえてきました。
様子を伺いに行くと、ネオ=アルラウネが主役の座をかっさらおうとせん勢いでカメラにアピールしています。
「はあ・・・そこの角を曲がったら運命の出会いがあったらいいのに——-・・・!」
その瞬間、姫が壁を突き破って出てきました。
「壁じゃまぁ。」
通常営業は姫だけかと魔王が言い、あくましゅうどうしを呼んで監視を増やそうと彼に会いに食堂へ行きます。
すると普段は無いはずの屋台が食堂で展開されており、そこにはあくましゅうどうしが哀愁を漂わせて座っていました。
レッドシベリアンと魔王は驚愕のまなざしで彼を見つめます。
「魔王城の片隅・・・ひっそりと佇む隠れ家と、うまい飯・・・」
とおじさんがご飯を食べる系ドラマみたいなシチュエーションで主役を取りに来ました。
しっかりと独り言が多い要素も忠実に再現されています。
そのほかにも様々な魔物たちが主役を取りにこようと演技しています。
「くそっ・・・どいつもこいつも!!」
と魔王が嘆いていると、ポセイドンが慌てた様子で走り去っていきました。
「あれは・・・ポセイドン!!」
「お前も見たのか!? 城中みんなが・・・。」
そう魔王が声をかけると、ポセイドンは
「・・・・・・このままじゃダメだ・・・・・・。」
「サッカー部がっ・・・廃部しちまう!!!」
そうです。ポセイドンも主役の座を取りに来ていたのです。
「ああもう・・・いつも通り過ごせと言ったのに・・・」
そういいながら姫の牢まで来ると、平常運転の姫を見て
「いつも通り過ごしているのは・・・姫だけではないかーーーー!!!!!」
魔王タソガレは最終手段で以前とった映像を制作会社に送ることにしました。
動画魔工房では送られてきた映像に監督が目を通しています。
その中に映っている姫に目を付けてタイトルは「魔王城でおやすみ」となりました。
第213話「姫にだけわからない」
魔物たちは訝しんでいます。
そう、姫が最近睡眠と関係ない行動をとってばかりだからです。
魔物の中にはたまたまだろと考える者もいました。
姫はいつも針とげマジロの棘を抜きますが、今回は抜こうとして抜かないという行動に出ています。
やはり変だ、と姫は何か恐ろしい狙いがあるに違いないと姫をさらに観察することにしました。
今度は姫がダンベルを持って針とげマジロに近づきます。
魔物たちは今度こそ暴れるつもりなんだーー!と警戒しますが、姫はおもむろにスカーフの上にダンベルを置き、ダンベルの周りをなぞってスカーフにダンベルの柄を描きました。
「・・・・・・?」
一方で針とげマジロはダンベルで殴打されると思ったのか、意気消沈状態になっています。
姫はスカーフを器用に切り取り、手ぬぐいを作成しました。
それを針とげマジロに渡すと、物陰で観察している魔物たちに近づいてきました。
しかし、針とげマジロは姫を呼び止めます。
「姫、これミノタウロスと使えってどういう・・・。」
物陰で観察していたミノタウロス一同は驚愕の顔を浮かべています。
「君たち今日、口ゲンカしてたでしょ。」
「だから、仲直り用に。ほら、お揃い。」
そう言うと姫は踵を返して去っていきました。
「待ってくれ! 姫は何の目的でこんなことまで・・・・・・!?」
そう魔物が問うと、姫は振り返り
「君たちが仲良くしてないと寝覚めが悪いの。 なんか最近こういうこと多くて・・・」
疑問の表情を浮かべながら、自らの寝床に帰ろうとする姫に魔物が呼び止めて言います。
「変じゃねえよ・・・それ。」
「姫は気付いてないっぽいが・・・いつの間にかオレたち・・・大切にされてたってことだな!!」
魔物たちは恥ずかしいから直球で言うのやめろ!と赤面しながら言います。
手ぬぐいを貰った針とげマジロとミノタウロスはとても嬉しそうに二人でニヤニヤしていました。
第214夜 「ゾンビちゃんの性」
あくましゅうどうしは何度も死ぬ姫を蘇生することは日常茶飯事です。
今回もまた姫を蘇生しようとしましたが、あくましゅうどうしは多忙であるため、姫の蘇生が先延ばしにされていきました。
出張から帰ってきたあくましゅうどうしは棺桶から出てくる“姫ゾンビ”に驚愕の眼差しで硬直しています。
姫はおもむろに立ち上がると、アンデッドの住処へ行くと言い出しました。
「今なら味わえると思うの・・・ 私が何度も挫折したアンデッドたちの寝床・・・!!」
そういうとあくましゅうどうしの説得もむなしく、歩いて行ってしまいました。
大丈夫と言いながら姫はゾンビ特有の肉食と食欲を抑えられずにミノタウロスを食べようとします。
慌ててあくましゅうどうしが引き戻すとごまかして去っていきました。
しかし姫はゾンビらしからぬ軽やかな動きで針とげマジロの方へ向かっていきました。
針とげマジロのおなかがもちもちでおいしそうだからです。
そこに運よくでびあくまが現れて、姫ゾンビは動くものに敏感なのででびあくまのことを追いかけていきました。
でびあくまをはむはむして食欲を紛らわしながら、何としてもアンデッドの寝床で寝る為に墓地へ向かいます。
姫は墓を掘り起こし、自らが中に入り上から土をかけてくれとあくましゅうどうしにせがみます。
そこに先ほど姫に噛まれたためにゾンビになってしまったでびあくまが大群になってやってきました。
それを見たあくましゅうどうしが悲鳴を上げると姫ゾンビは悲鳴が大好きなので、子守歌となり眠ってしまいました。
第215夜「お着換えアリ地獄」
魔王城に不法侵入してしばらくたったが一向に魔王に会えないことに憤りを感じているゼツラン。
明日はハロウィンということで、仮装し、周囲にバレずに近づこうとしています。
そして、ゼツランの仮装服選びが始まりました。
「なるだけ隠密性の高い服を・・・!」
と出してきた衣装はロリータファッションの様なフリルのついた服でした。
姫協力の下、姫が選んだ衣装を着ていきます。
サンドドラゴンは複雑な心境です。
正直かわいいからです。しかし、これは魔王に近づくための仮装ということで心を鬼にして限りなく地味な服を選ばせようとします。
次に着てきたのは、くのいち姿です。
それを見たサンドラは衝撃を受け、よろめきます。
「かわ・・・」
しかし、もっと布面積を増やせという意味で
「ダメです・・・ 布面積を・・・!」
と言ったのですが、次はもっと布面積の少ない“おどりこ”の姿で出てきました。
それをみたサンドラはまたしても動揺。
姫に今回の仮装の目的を理解しているか尋ねました。
姫はしっかりと目的を把握しています。
「しょうがないな・・・ じゃあもっとバレにくい服装で・・・」
メイド服で出てきました。
「なんじゃ、ちょっとハズいのぅ。」
と少し照れくさそうな表情を浮かべながらドレッシングルームから出てきました。
サンドラはあまりの可愛さに魔王が惚れてしまうのではないかと危惧しています。
姫はサンドラがコーデを気に入らない理由を知りたくて問いました。
「ねぇ・・・?」
サンドラはものすごくか弱い声で
「かわいすぎるから・・・ダメです・・・。」
そういうと、姫はめちゃくちゃ大きい声で復唱しました。
サンドラはゼツランに聞こえないように言ったのに姫が大きな声で言い直すから、焦りながら部屋の隅で体から砂が大量に出ています。(サンドラは感情が高ぶると体から砂が出る。)
ゼツランと姫は砂におぼれそうになっています。
「サ~ン~ド~ラ~!! こんな砂まみれじゃ明日出歩けないではないか!!!」
結局、サンドラとゼツランの距離が近くなっただけでなく、ハロウィンも部屋でやることになりました。
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第216夜「学校へ行こう!」
魔族の世界にも学校は存在し、その中でも特に名高く魔王の権限によって創立された学園、王立魔族学園に視察に行くことになった魔王ですが、なにやら難しい顔をしています。
「どうせなら、生徒として潜り込んだ方が正確に視察できるのではないかな!!」
かのように見えましたが、わくわくしている様子を隠しきれていません。
しかし、魔王一人ではなく最低もう一人は欲しいな、だれか適任がいればいいのだがと話していると、どこからともなく姫が現れて連れて行ってほしそうな眼差しで見ています。
「行きたい。」
そう姫が口にすると、一同は声をそろえて
「ダメ!!!!」
しかし姫も折れません。折れるはずがないのです。
姫は王族として種族は違くとも民の生活はこの目で見たいとそれらしい文言を口にします。
そういいながら、大量の付箋が張られた制服カタログにお弁当二つ、それに漫画やゲームまでカバンに詰め込んでいます。
姫はまたもっともらしい文言を言うと、魔王たちはそこまで考えていたのかと感心の眼差しを姫に向けます。
「でもダメだぞ?」
魔王が無慈悲にもそう告げると姫は
「じゃあ、自分でいくね。まず脱獄用ボムのテストから。」
魔王たちは大慌てで連れていくことを承諾しました。
姫は学校へ行く準備を済ませて、ドキドキに胸を弾ませて睡眠につきました。
第217夜「魔族学園の不適合者」
のろいのおんがくかは王立魔族学園に特別講師として招かれていました。
学生時代のなつかしさを思い出しながらいい講義にしないとな、と意気込んでいると最後列に見覚えのある魔王と人質が居ました。
のろいのおんがくかは吹き出し、頭を回転させ、何故二人がここにきているのかを必死に考えました。
視察しにきたのかと考えていると、魔王と姫はものすごく楽しんでいる顔で座っていることに気が付きました。
気にしていても仕方がない、講義をすればいいだけだと考えた呪いの音楽家は講義を始めました。
「では、テキストを開いてーーー。」
そういうと、姫はテキストの代わりに弁当を開けました。
そして、魔王と卵焼きをシェアして食べています。
講義を行っているのろいのおんがくかに紙飛行機が当たります。
「今日の鳥ボーイ決まってるう」
「様になっているぞ!」
視察を忘れてないかと純粋な疑問がのろいのおんがくかの中で回り始めます。
急にシュウマイの匂いが立ち込めます。
加熱式弁当を加熱してしまったことにシュウマイの匂いが立ち込めたのでした。
のろいのおんがくかは機転を利かせて自分の弁当が後ろのロッカーにあって、その匂いが漏れているのかもしれないということにしました。
しばらくたったのち、また紙飛行機が飛来しました。
「初の学校で浮かれちゃって、授業中の居眠りにあこがれていて最初から寝るつもりだったけど、先生の話が面白くて楽しく聞けたよ。」
それを見たのろいのおんがくかが姫の方を見やると、姫は静かに寝ていました。
のろいのおんがくかは思いました。
初めから寝ていてほしかったと・・・。
第218夜「学生寮のつかいかた」
魔王と姫は放課後の時間つぶしの方法について悩んでいました。
「友達なんて一日でできるわけないし、虚無・・・?」
のろいのおんがくかは視察という目的は果たせたと思うからかえっていいんじゃ・・・
と提案すると、魔王と姫が憧れのスクールライフが達成できていなかったのです。
もう帰りますよとのろいのおんがくかは言いましたが、魔王たちは生徒が反対方向に歩いていることに疑問を覚えました。
「ああ、あっちには学生寮がありますからね。」
魔王と姫は学生寮という言葉を聞くと、そこに青春があるに違いないといった表情で胸を躍らせています。
魔王は学生寮のような共同生活にあこがれている様子です。
しかし、のろいのおんがくかは魔王城と変わらないのではと伝えると、魔王は納得しています。
「それに・・・いい職場だと思いますけどね魔王城。」
そういうと魔王はキョトンとした表情を一瞬浮かべ、それから嬉しそうな表情に変わりました。
魔王と姫は満足げに魔王城に帰りました。
二人は帰るまでが遠足と言わんばかりの様子で安眠しました。
第219夜「ただしトニカワは映る」
魔王城では、魔王城をモデルとしたアニメ「魔王城でおやすみ」が放映される瞬間を今か今かと待ちわびていました。
しかし、問題が発生します。
「このビジョン、「「魔王城でおやすみ」」映りません・・・!!」
その知らせを聞くと、魔物たちは絶望の表情を浮かべています。
原因は、先代魔王がアニメチャンネルの加入は必要ないとのことで加入していなかった為でした。
魔王タソガレは今すぐ加入しようと伝えますが、アニメチャンネルを映すためのアンテナの設置が必須で、最短でも翌日の取り付けになるようです。
「くそっ ほんとにうつらねぇ」
そういいながらポセイドンがチャンネルを回していると、姫が映っているチャンネルを発見しました。
姫は魔界アンテナを代用部品で作ろうとしていたのでした。
まず城内踊り場を土台として骨組みには鳥獣エリアのかごの上を使います。
骨組みの上にお化け風呂敷を敷き詰めて、それらをメデューサに固めてもらいます。
そして、中心部分のパーツはアメノムラクモを使用します。
こうして疑似アンテナを作成したことにより魔王城にアニメが映るようになりました。
姫、並びに魔物の皆さんは大満足の様子で、アニメを楽しんでいました。
ですが、仕事中にアニメを見る魔物が急増したそうです。
第220夜「はばたけ!鳥ガール」
魔王城は魔族にとってあこがれの勤務場所です。
よって魔族の中でもエリートが勤務していることが多いのですが、そうじゃなさそうなものもいます。
姫は鳥ガールことハーピィの羽で昼寝する為にハーピィを呼ぶと物陰から顔を出しました。
「呼びましたか?姫っ」
ハーピィはもうすぐで仕事が片付くので少し待っていてくださいと言うと、コケそうになりながら仕事に戻っていきました。
戻っていく最中に何か落としたことに姫が気付いて、声をかけようとしますが落とした物を見てみると驚愕しました。
「精鋭軍入隊推薦状 ハーピィ殿」
普段の鳥ガールからは考えられない内容の手紙です。
「私弱いのに変ですよね~ 以前いた砦の先輩が何故か送ってきて・・・。」
姫が戦闘以外の役職について考えていると、あることに気が付きます。
ハーピィから全く足音がしないのです。
そして時折歌っていた鼻歌は、他人に自分の存在を気付かせるためだと判明しました。
しかし、偵察任務に就くとしても、無音だけでは務まりません。
しっかりと敵の情報を把握し伝達しなければなりません。
するとそこに蝙蝠の大群が押し寄せてきました。
ハーピィはその大群を一目見て
「あ、なーんだ大丈夫! 1543匹中1525匹が穏やかな種です!」
その晩、姫はハーピィにこの手紙の主は本気で推薦してくれているという旨を伝えました。
しかし、ハーピィは姫の悲哀に満ちた表情を見ると嬉しそうな顔をして
「いきません! 絶対行かないって返事します!」
と姫を抱きしめました。
第221夜「すべてが姫になる」
ある日の勤務終わり、あくましゅうどうしは疲れています。
そこで一緒に食事をとっていた魔物が癒しの薬を渡してきました。
しかし、効果の説明を聞く前に飲んでしまい、周りの見た目が全員姫になってしまいました。
あくましゅうどうしは目の前に起きていることが理解できません。
いったん部屋に帰ろうとしますが、如何せん全員が姫に見えているので、話しかけられるだけで動揺しています。
周りの魔物たちはあくましゅうどうしがおかしくなったと大慌てです。
あくましゅうどうしは落ち着いて考えました。
「慣れてくればこっちのもんだぞ・・・?」
姫に耐性が付いたんだと確信したあくましゅうどうしは姫の姿をした魔物に
「お詫びといってはなんだが、肩をもんでやろう」
そういわれ、快諾しました。
あくましゅうどうしはお返しにもんでやると言い、肩をもみ始めました。
が。
「ん~・・・ レオくん上手!」
その言葉を聞いた瞬間あくましゅうどうしは固まりました。
レオくんの愛称は姫が使用している愛称だからです。
それと同時に薬の効果も切れてしまい、普通の視界になりました。
あくましゅうどうしはこの一件以来、さらに姫への耐性がなくなってしまいました。
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