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『渋谷金魚』3巻ネタバレ紹介！
第9話 合流
貂につけられた傷からの出血により、徐々に金魚が集まり始めていました。
立ち去ろうとする貂にアリサは非難を浴びせますが、貂は「俺は正気だよ お前らより遥かにな」「お前らみたいな仲良し集団が結局全員犬死にするんだよ」と意に介しません。
逃げ道も武器もなく、万事休すと思われた二人でしたが、初は咄嗟の機転で警官の遺体から拳銃を回収し、上階にいる貂の背後のガラスに銃弾を撃ち込みます。
これでビル中の金魚が目覚めてしまい、貂も一旦金魚から逃れるため初たちのいる階まで戻ってきてしまいました。
「さぁ……ここで死にたくなかったら」
「お前が 金魚を止めてみせろっ！」
高い戦闘力と自信を持った貂を、初は利用してやろうと考えたのでした。
初の胸には、今まで出会った、そして犠牲になってきた人たちの想いがありました。
貂は初の機転に対し不敵な笑みを浮かべながら数匹の金魚を斬り捨てると、発煙筒を焚いて施設の奥に向けて走り出しました。
煙と匂いで混乱する金魚の群れを抜ける一行。
その道中も片っ端から金魚を打ち倒していく貂に、初とアリサは驚嘆しながらもどうにかついていきます。
そして渋谷の地下鉄構内に出た三人の前に、通路を塞ぐほど巨大な“ピンポンパール”が出現しますが、貂は斧と鉈でこれを一瞬で斬り倒し、非常用シャッターのワイヤーを壊す力業で廊下にシャッターを下ろし、金魚の追跡を逃れました。
難を逃れた一行でしたが、今度は貂が初の首を絞めにかかります。
「なかなか面白い手だったぜ 抜けたツラして大胆な作戦だ」
「それで！お次はどうするんだ？」
狂気と共に笑う貂の圧倒的な力に、抵抗ができない初でしたが、背後のアリサがナイフを構えてこれを止めようとします。
貂が落としたナイフを、いつの間にかアリサは拾っていたのでした。
「悪くねぇ 殺す気で来いよ……！」
挑発する貂でしたが、ここでトランシーバーから通信が入り、貂は初を解放して何やら連絡を取ります。
「今から二人……そっちに連れていく」
「少しは『計画』の役に立つだろ」
そう意味深なことを伝えた貂は、二人にペットボトルの水を投げて寄こしました。
気が変わった、という貂は、二人を自分たちの本拠地に案内すると言い出します。
初とアリサの見せた機転や気迫に、貂も少し興味を持っている様子でした。
貂に案内されてたどり着いたのは、線路上に放置されたままになっている地下鉄の車両でした。
中には年齢も性別も様々な人たちが。
数日ぶりに新たな生存者に出会った初とアリサは少し安堵を覚えます。
そこに声をかけてきたのは、熊のような大柄な体躯に髭面の男性。
貂がやり取りをしていた「デンキヤ」でした。
デンキヤは貂に「大先生がお呼びだ」と言い、貂は二人を連れて奥の車両に向かいます。
「絶対ノックして下さい」と張り紙のされた扉を開くと、中ではなんと多くの金魚が解剖されており、初は絶句します。
その部屋の主こそ、メスを握り柔和な笑みを浮かべた美女、「大先生」こと弓岡知花でした。
第10話 計画
地下鉄の線路を歩く、生存者の一行。
貂の語る「計画」というものに賛同できず、独自に脱出を目指して行動している集団のようです。
その中には「みおっち」と呼ばれる、いかにも渋谷のギャルらしい少女の姿がありました。
3月3日の金魚が現れたその日、彼女が遅刻したことで渋谷に取り残されてしまったのだ、と一緒に遊びに来ていた友人から叱責されていました。
一方、電車のほうでは弓岡知花が、「エラの構造や内臓など、やはりその身体は普通の金魚と同一」と語りながら、いかにも楽しそうに解剖をしていました。
知花は魚類行動生態学を専攻していた大学の研究員で、助手の女性・淀屋橋薫と共に、貂の「計画」に協力して金魚のことを調べていました。
ここで貂は初とアリサに、「計画」のことを話します。
それは、「渋谷にいる金魚を、人間の手で皆殺しにする」という、あまりに破天荒なものでした。
その実現のために、知花は金魚の研究を進めていたのです。
「計画」に参加すべきか戸惑う初でしたが、突然外から響いた悲鳴により会話は中断されます。
飛び出してみると、血まみれの少女がよろよろと電車に向かっていました。
初らが到着する少し前に出て行った「脱出組」の一人、「みおっち」でした。
「脱出組」の一行が地上に出たところで金魚の群れに襲われたと言い、貂に助力を求めて戻ってきたのです。
貂はこれをにべもなく拒否し、電車に戻ろうとします。
しかし、襲ってきたのが「色の無い奴」とみおっちが口にした途端、態度が急変。
例の狂気を宿した目で、貂は「すぐ戻る」と外出の準備をします。
ただし貂は「奴を追うだけ」と、脱出組の救助に向かうつもりはないと断言します。
涙ながらに助力を求めて叫ぶみおっちでしたが、生存者の誰もこれに応えようとはしません。
「ゆいぽが死んで……！なーこまで喧嘩したまま終わりなんて！」
「そんなの嫌なんだよぉおお！」
そんなみおっちに、初とアリサは協力を申し出ます。
デンキヤは呆れながらも、発煙筒とカンテラを持たせてくれました。
発煙筒は1本で30秒間、金魚を混乱・窒息させる煙をまき散らしてくれますが、それが切れたら引き際だ、とアドバイスもくれます。
その頃、東京メトロ渋谷駅の改札で、三人の生存者が息を潜めていました。
一度は地上まで出たものの、金魚に追われて再び地下まで戻ってきてしまっていたのです。
しかも、元の本拠地がある副都心線にもまだ距離があり、身動きが取れない状態でした。
その時、死体の山に紛れていた新たな生存者が、金魚の隙を突いて飛び出してきます。
「奴が見てるっ！」
他の生存者が何かを察知して叫びますが届きません。
それと同時に、突如辺りに煙が充満し始め、初たち3人が救助に駆け付けました。
飛び出してきたのは、みおっちの親友という「なーこ」でした。
思わぬ再開に驚くなーこ。しかし、その背後には既に金魚が迫っていました。
金魚に脇腹を噛まれて倒れるなーこ。
その横に、ひと際異彩を放つ金魚が姿を現しました。
まるで従者を連れたお姫様のように、金魚の群れに囲まれた、真っ白なアルビノの土佐金。
知花らが「白銀のお姫様」と呼び、金魚の生態を解き明かすために必要だと考えている特別な金魚でした。
第11話 救出
みおっちと親友たちの回想から始まります。
小学校から中学校半ばまで犬猿の仲だったみおっち、なーこ、ゆいぽの三人。
しかし、なーこが悪質なナンパに遭っているのをみおっちとゆいぽが助けたことをきっかけに徐々に距離を縮め、いつの間にか親友と呼べる仲になっていました。
舞台は渋谷駅改札に戻り、初は持っていた最後の発煙筒を焚きます。
その間にわずかな生存者を連れて脱出しようとしますが、みおっちはなーこを救出しようとします。
既に深手を負っており長くはない、と説得されるものの諦めきれず、これに同調したアリサと共になーこを担いで運び出しました。
発煙筒の煙が晴れかけ、金魚が三人に迫っていたところで、初が火柱を起こして金魚を牽制します。
手にしていたランタンのガソリンを使う、咄嗟の機転でした。
その火も乗り越えて迫る金魚に、今度は貂が飛び出してきてこれを蹴り飛ばします。
「姫」ことアルビノの土佐金は貂に追われてここまできていたのでした。
再び姫は地上に逃げ、貂はそれを追っていきます。
その隙に初たちは全員防火扉の内側まで逃れることができました。
助け出されたものの、もう自分が長くないことを悟ったなーこ。
つい不安からみおっちに当たってしまったこと。
そもそもみおっちが遅刻したのは前日に自分が長電話に付き合わせてしまったせいであること。
謝りたかったことをみおっちに伝えるその様子は、すっかり元の親友同士に戻っていました。
そして「死んじゃダメだよ」と伝え、静かに息を引き取りました。
大声を出すと金魚が来てしまうからと、みおっちは声を押し殺して泣くのでした。
一方、地上では姫が貂の追跡を逃れ、商業ビル「009」に逃げ込んでいきました。
貂から報告を受けた知花は、一匹の個体を集団で守るというのは金魚の習性にはないことを訝しがるのでした。
どうにか生還した初とアリサは、本拠地の電車でみおっちと向き合っていました。
協力を申し出たにも関わらず、あと一歩及ばなかったことに二人は責任を感じていました。
しかしみおっちは「あんがと……！」「アタシマジでチョー感謝してるから☆」と彼女なりの感謝を伝えます。
それは最後に親友と話をして仲直りができたのは二人の協力があったからだという、彼女の偽らざる本心でした。
そしてみおっちは改めて男山美桜という本名を名乗ったうえで、二人にお礼として大量の食糧を差し出します。
驚く二人でしたが、なんとこれは貂の備蓄から美桜がくすねたもの。
そういうことならと、皆は久々のまともな食事にありつきます。
その食事の最中、アリサが高熱を出して倒れてしまいます。
上着を脱がせると、アリサの全身に金魚の斑模様のようなアザが。
そしてそれは、いつの間にか初の右腕にも浮かんでいました。
その瞬間、初は3月6日に、ヘリから飛び降りた後のことを思い出しました。
実は、二人はその時にアルビノの姫と遭遇していたというのです。
第12話 決断
知花はアリサの身体に浮かぶ斑模様について分析します。
症状は発熱、震え、呼吸不全に意識混濁。そして現在も全身に拡大しているといいます。
そして知花によれば、アリサのこの症状は病気ではなく、金魚の分泌した化学物質。
つまり、アルビノ土佐金が金魚を呼び寄せるためにつけた、餌としてのマーキングだというのです。
知花は、光も匂いもない下水道で初たちが襲われたという話から、問題の斑模様が金魚を呼び寄せる性質のあるフェロモンの一種であると仮説を立てていました。
敢えてその場では食わずにマーキングだけして逃がすことで、より多くの餌がある場所まで案内させる目的だというのです。
事実、初もアリサも電車という集団のもとにたどり着いていました。
さらに知花は、同様の症状を呈していた人間が昨日死亡したことを踏まえて、このままでは身体が耐え切れず、明日の夜までにはアリサが命を落とすだろうことも告げます。
初はアリサを助ける方法がないのか知花に問います。
知花は確証はない、としながらも、フェロモンの発生源であるアルビノ土佐金を生きたまま捕らえることができれば助ける方法が見つかるかもしれない、と言います。
その後、初に看病されていたアリサが苦しげに目を覚まします。
無理にでも白い金魚を探しに行こうとしますが、そんな状態では無理だと初に押しとどめられます。
「トップアイドルになるまで死ねないんだから……！」と気迫を見せるアリサでしたが、限界を迎え再び気を失ってしまいます。
その際、うわ言のように呟きます。
「……ごめん……ふうかちゃん……」
「次のイベント……出られないかも……」
こんな状況でも、アリサの中にあるのは何よりもファンへの想いだったのでした。
アリサの意志を受けて、初は一人、貂が集めていた武器を手に姫を探しに行こうとします。
しかし、そこを貂に見つかってしまいます。
道具を貸してくれるよう貂に頼む初に対し、貂はこれを拒否しますが、一本のナイフを初に放ります。
なんと、「自分にかすり傷でもつけることができれば初に協力する」と言うのです。
初は人間同士で争うことに難色を示しますが、これは貂の気を逸らすための演技でした。
密かに握っていた小石を貂に投げつけ、ナイフで貂を突こうとします。
ですが、圧倒的な戦闘力の貂には難なく捌かれ、逆に胸倉を掴み上げられてしまいます。
「お前金魚に食われにいくのか」貂は冷たく言い放ちます。
初は貂の腕を掴み返し、「大事な友達が目の前で死ぬのを……！黙って見ているなんてもっとできない……！」
「死ぬ気なんて無い！どんな事をしてもアリサを助ける為に 僕は行く！」
渾身の力で貂に突きを繰り出します。
しかし、貂はこれをギリギリでかわします。
万策尽き、諦めを見せる初でしたが、貂の反応は予想外のものでした。
「『アルビノ土佐金』は『009』にいる」
「大体5～6時に出て16時前には戻る」
「他の金魚が少ない時を見極めて潜入する」
貂は、電車にいる全員でアルビノ土佐金の捕獲に乗り出すつもりだ、と言うのです。
「口だけじゃないと証明してみせろ」
初にスタンガンを渡して立ち去る貂の腕には、初に掴まれた部分に血がにじんでいました。
初は、貂の出した課題を達成していたのでした。
電車に戻り、生存者全員に009への潜入作戦を明かすと、ほとんどの人間は猛反対します。
貂はそんな一同に、冷徹に突き付けます。
「やる気の無い奴は来なくていい ただその場合……電車から降ろす」
「ここは俺の場所だ 行動も選択もできない奴など『渋谷』では邪魔だ」
そして、初と美桜のほか、なーこの一件で救出した3人など合計で12人が参加することになります。
別の作業のために電車に残ったのは、知花と助手の薫、そしてデンキヤ。
デンキヤは先刻までの貂とのやり取りを回想しています。
外出準備をする貂の身体は、想像を絶するほど傷だらけの状態でした。
無数の傷口を、雑に縫合している酷い状態です。
そんな貂に、デンキヤは声を掛けます。
「この渋谷で……一人で金魚に対抗できる奴は他にいないだろう」
「ヤバくなったら最悪……一人でも帰ってこい お前がいれば……手はまだ打てる」
そして「俺はお前がこの渋谷の……救世主になると思ってる」ですが、それを聞いた貂は大笑いしながら「救世主か……死んでもご免だ」と返すのでした。
009に出発した一同を見送った知花と薫。
「全員……無事に帰ってくるよね？」と不安げな薫に、知花は静かに言います。
「薫ちゃん」
「それは無理よ」
渋谷金魚 other sight
今ではないいつかの、どこかでの物語。
どこかの企業で、部長の男性が部下のミスを叱責しています。
しかし、その様子は明らかに常軌を逸しており、内容も支離滅裂。
他の社員も不思議に思うとともに不気味にも感じていました。
そんなとき、部長の落とした携帯電話を拾ったOLが、妙にリアルな金魚のストラップを付けているのに気が付きます。
すると部長は「それに触るなぁぁ！」とOLの顔面を殴り飛ばします。
唖然とする社員たちでしたが、そこに“医者”と“水族館の者”を名乗る来客から呼び出され、部長は退出してしまいます。
その3時間後、部長が戻らないことを心配していた社員たちに、恐るべき一報が舞い込みます。
地下の駐車場で、殺人事件があったのです。
傷が酷く、被害者が誰なのかも判然としません。
野次馬的にその様子を見に来た社員たちがオフィスに戻ろうとしたとき、エレベーターのドアの隙間から一瞬、大きな金魚が顔を覗かせていました。