「ガンニバル」は二宮正明先生により描かれていた作品で、週刊漫画ゴラクで連載されていました。
物語の主人公である阿川大吾という駐在は妻子を連れて、「供花村(くげむら)」という村に都会から赴任してきます。
供花村の前任の駐在である狩野治という男は、退屈を持て余しパチンコにのめりこんだ挙句、借金を作り失踪したと、大吾達一家は聞いていました。
さらに狩野治は失踪する直前、「供花村の人間は人を喰っている」と妄言を吐いて村人ともめたと言われていました。
供花村は封鎖的な村で、大吾達の家の情報は筒抜けです。
さらに、「後藤家」という一族が村全体を仕切っており、特に後藤家当主の銀という老婆と、次期当主である恵介という長髪の男が権力を握っていました。
ある日、山中で銀の遺体が発見されます。
熊に襲われたとのことでしたが、大吾は遺体の腕に人間の歯型のようなものを見つけます。
食人の話をすると血相を変える後藤家の様子に、前任の「供花村の人間は人を喰っている」という言葉が頭によぎる大吾。
村を調べるうちに、村で年に1度行われる「奉納祭」で子供を食べていると考察する大吾に対し、村の次期神主である宗近が協力する姿勢を見せます。
一方、大吾の妻である有希は駐在所の柱に「逃ゲロ」という文字が刻まれていることに気付きます。
そして物語が進むにつれて、村の食人が明らかになっていきます。
今回は、大吾の過去や柱に刻まれた文字の意味、最終回の考察などを紹介していきます。
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大吾の過去とは？
阿川一家が供花村に引っ越してくる前、大吾は都会で刑事をしていました。
大吾は優秀な刑事であると同時に、容疑者に対して暴力沙汰を起こす暴力刑事としても有名でした。
ある日、大吾は今野翼という男を逮捕します。
翼は、大吾達の近所の青年であり、大吾の娘であるましろという幼い少女とも知り合いでした。
大吾は翼に対して「近所の気のいい兄ちゃん」という認識でしたが、翼が逮捕された理由は児童にわいせつな行為を行ったからでした。
その後、罪を償い出所する翼。
翼は偶然ましろを見かけ、嬉しそうな表情をします。
後日、なんとましろは、こっそり翼の自宅に遊びに行ってしまいます。
しかし、翼の自宅周辺は刑事達に張り込まれていました。
そのうちの1人の刑事が、「女の子が翼の家に入っていった」と大吾に報告します。
翼の家に入っていった女の子が娘であるましろだと知る由もなく、大吾は翼の自宅へ突入します。
いきなり現れた大吾に翼は驚き、何もしていないと弁解します。
しかし、ましろを見つけた大吾は、翼がましろにわいせつ行為をしたと勘違いし激昂します。
翼を殴りつける大吾ですが、ましろを本気で愛している翼は、ましろと心中しようとナイフを取り出します。
ましろが殺されると思った大吾は翼に向けて発砲し、翼は死亡します。
無事だったましろですが、この事件に精神的に大きなショックを受け、話せなくなってしまったのでした。
毎週水曜はみんな大好き
「#ガンニバル」の更新日ネ！ヤバ展開極まりすぎて何も言えない…
血の味がするよ…トラウマ… pic.twitter.com/Albe0EKcCg— マンガTOP公式 (@mangatop11) September 9, 2020
柱の逃げるな、の文字の意味は？
元々の文字は逃げろ
大吾が供花村に赴任してきたとき、大吾の妻である有希が駐在所の柱に刻まれた「逃ゲロ」という文字を見つけます。
今のネタ見て、中古の物件の柱に『タスケテ』とか『逃ゲロ』とか書きたくなった。
自分が引っ越して、それ見つけたら多分チビるけど。 pic.twitter.com/5uZxaqMvo0
— TAKAHIRO (@endx227) February 7, 2021
この「逃ゲロ」という文字は、後藤家が「あの人」に捧げる生贄を監禁していた地下牢にも刻まれています。
結局誰が刻んだのかは、明らかにされませんでした。
しかし、おそらくこの文字を刻んだのは前任駐在であり、いち早く後藤家の食人に気づいた狩野治ではないかと考えられます。
狩野治が供花村の食人を疑い始めた行動に対し、村八分に遭ってしまい精神を病んだ妻の幸子も、入院している精神病院で「逃ゲロ」と連呼しています。
そのため幸子の可能性も考えられますが、駐在所と後藤家の地下牢の両方に行ったのは、狩野治だけなのです。
おそらく、自分と同じように食人に気づき真相を確かめようとする駐在に対して、狩野治は「この村から逃げろ、危険だ」というメッセージを伝えたかったのでしょう。
逃げるなの文字の意味は？誰かが書き換えたの？
最終回ではなんと、駐在所の「逃ゲロ」という文字が「逃ゲルナ」に書き換わります。
ガンニバル最終巻よみました。
最後は自衛隊との激しい銃撃戦を期待していたが、なかった。
ラスボスの倒し方も普通だった。
最後の彫ってあった文字が変わったが読めない。#ガンニバル pic.twitter.com/nmKb5BLgmD— パッショーネ79@ニコ生 (@Rinrin_Kinkin) March 5, 2022
この文字を見つけた有希は恐怖の表情を浮かべます。
おそらく、「逃ゲルナ」と書き換えたのは村人でしょう。
大吾が食人を疑い、どんどん真相に近づくと同時に、村中は大吾に引っ掻き回されていきます。
そして後藤家と警察が全面対決し沢山の人が亡くなるという事件にまで発展しますが、事件が終結したため、大吾が村を去るのではと考えた村人が書き換えたという可能性が考えられます。
村を滅茶苦茶にしたのだから、逃げずに最後まで責任を取れ、という意味が込められているのでしょう。
実際に生き残った後藤家の1人から、「逃げんと責任もてや」と大吾は言われています。
もしくは食人に関係している村人が、大吾達を食べるために「逃ゲルナ」と書き換えたのかもしれませんね。
ガンニバルの最終回はどういうこと？
後藤家と警察との全面対決、そして村人からの報復も終結し、わずかに生き残った後藤家は逮捕されます。
数か月後、供花村で起こった事件は死者80名以上と、戦後最大の死者数を出したとして連日ニュースに取り上げられていました。
大吾はというと、最後の仕事として村中を自転車で走り抜けています。
すると村人に、「どうでしたか、供花村は」と尋ねられます。
「誰もあんたを恨んでいない、おかげで村の癌が消えた」と言葉を続ける村人。
場面は変わり、大吾の元へ後藤家次期当主であった恵介の弟の洋介が現れ、「なに終わったみたいな顔しとんや」と告げます。
狩野治が残した言葉は「この村の人間は人を喰っている」です。
つまり、後藤家ではなく、村全体を指しています。
「何も事件は解決していない、逃げんと責任を持て」と叫ぶ洋介に、「逃げるつもりはない」と不敵な笑みを浮かべる大吾。
大吾と話し終えた村人へと、また場面は変わります。
そしてなんと、大吾に話しかけた村人の口から人の指が出てきます。
ガンニバル最終回
めちゃ面白かった！！！！ pic.twitter.com/5Slj67VEcW— りひと (@R_hitotlol) November 26, 2021
謎めいた笑みを浮かべた大吾と、「この村はどうでしたか？」と読者に語りかけるような言葉で物語は終わります。
謎を残したまま、なんとも不気味な余韻を残した幕引きでした。
大吾は人を食べていたのは後藤家と考えていましたが、最後の描写から、おそらく村全体が食人の狂気に染まっていたということでしょう。
洋介もおそらく、村全体が食人の狂気に染まったと気づいていたのです。
後藤家の問題は解決したものの、供花村全体が食人文化に浸食されていたということまでは、大吾は気づけなかったということが示唆されているかのようです。
しかし、「逃げるつもりはない」と大吾が話していたことから、大吾も洋介と同じように村全体の狂気に気づき、今後も供花村の調査を続けていくと考えられます。
ガンニバル最終回の考察
後藤家も逮捕され、大吾も村人から感謝され、丸く収まると思った最終回ですが、村人の口の中から指が出てきて終わるという後味の悪い結末でした。
村の呪いは後藤家が起こしたと考えられていましたが、実は村人たちも食人を行っており、村の呪いは何も終わってなどいなかったと考察できます。
村の呪いの原因は、本当に後藤家だけのせいなのでしょうか。
村を支配し、生贄として人間を捧げさせてきた後藤家が悪者というように感じますが、村人も同じように呪いを引き起こした一因だと思い読み返すと辻褄が合うかもしれませんね。
供花村自体も昔から乗っ取り、乗っ取られてきた歴史が呪いのようにある村であったことも判明しました。
食人の狂気に抗えず、お互いを犠牲にし続けた後藤家と村人の確執が、呪いの連鎖の原因であったのではないでしょうか。
村の呪いがまだあると考えれば、逮捕された後藤家の代わりに、新たな一族が現れて再び歴史が繰り返されていく可能性も否定できません。
また、大吾の娘であるましろの名前自体も、銀、白銀、真白(ましろ)と後藤家と繋がりがあるかのようにも思えます。
ましろが「逃ゲルナ」と刻まれた柱で指を怪我し、流れた血を眺めて舐めるシーンが意味深に描かれています。
このことから、ましろは既に食人の狂気に染まっている可能性も考えられます。
大吾は村の駐在は辞めても独自に調査を進めると思われます。
しかし、食人に染まった村人が多い中で、大吾が無事でいられる保証もありません。
もしかしたら大吾自身も食人の狂気に染まってしまうのかもしれませんね。
正宗や宗近は最後どうなった？
後藤家の食人を疑う大吾に協力し、村の次期神主である宗近。
宗近の父親が正宗です。
正宗は若かりし頃、銀に執心し、体を重ねていました。
若い頃の銀はかなりの美人で、色香で男を屈服させてきたのですが、正宗もその1人です。
当時の後藤家当主の妾の子であった銀は、後藤家だけでなく村人からも虐げられていました。
そこで自身の身を守るため、銀は正宗を誘惑し、ついには妊娠します。
妾の子である銀と、次期神主である正宗が結ばれることを、村人は許さず、銀は生贄として捧げられてしまいます。
しかし、銀は捧げられた山奥で出産し、山中に来る村人を食べることで生き延びていました。
ガンニバル、若かりしころのサイコな後藤銀がめちゃくちゃタイプだわ笑笑https://t.co/4gkiIDcyvh
— . (@drdrdr1012) January 21, 2023
一方、村では当時の後藤家の横暴さが原因となり、後藤家と村人が全面対決することになります。
そこへ後藤家を壊滅させたい銀が送り込んだ野盗グループにより、後藤家も村人も殲滅されます。
後藤家本家は全滅し、野盗グループと銀が後藤家を名乗るようになったのです。
そして生き残った銀と正宗は、後藤家当主と神主という立場を手に入れ、村を支配することになりました。
銀の産んだ子供に、「しがらみのない世界で生きていけるように」という願いを込めて、正宗は白銀と名付けます。
銀と正宗が村を支配したにも関わらず、人を食べることで育ってきた白銀は、人しか食べません。
苦悩する銀と正宗ですが、白銀を生かすため、村人に「奉納祭」で後藤家に生贄を捧げるよう説き伏せ、子供を捧げさせ続けることを決めます。
その後、高齢となった銀は、後藤家を恨む村人に殺されます。
さらに後藤家の食人を突き止めた大吾は警察に協力を仰ぎ、後藤家と警察の全面戦争になります。
銀の訃報を聞き悲しむ正宗は、銀と自分が行ってきたことが間違いだったと気づき、「誰かこの呪いを解いてほしい」と願います。
また、宗近も過去から受け継いだ伝統と血脈で生きている後藤家も村人も「呪いと同じ」と考えており、呪いを断ち切り村を変えるために大吾に協力していたのです。
しかしながら、後藤家と警察の全面戦争は大量の死者を出して終結したものの、今度は後藤家に今まで受けてきた屈辱を晴らすため、生き残り少数となった後藤家に村人が襲い掛かります。
正宗も理性を失った村人に襲われます。
正宗は、近くにいた宗近に逃げるように伝えますが、父親を置いていけない宗近はその場にとどまります。
逃げずに側に居続ける宗近の様子に、「ええ息子や」と正宗は宗近の決断を受け入れます。
そして、「銀さん、僕の人生は最高やった」と最期まで銀を想い、そのまま正宗は村人に喰い殺されます。
その後、宗近もおそらく、正宗と同様に村人に食い殺されたと考えられます。