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『渋谷金魚』8巻ネタバレ紹介!
渋谷金魚 other sight
土居美樹という女性が、20年前に「喋る金魚を見た」という話から始まります。
具体的な場所や時期は思い出せないものの、「もーちゃん」と呼ばれる親友がその場にいたことは確かなようです。
喋る、というよりは奇怪なうめき声を上げる金魚を囲んで子供たちは盛り上がっていました。
場面は変わり、渋谷のカフェで休憩中の雪野杏子と藤森。
先ほどの話は、交通課の婦警となった土居から杏子が聞いたものでした。
更に土居は、「もーちゃん」が「金魚ってね 人の心を食べるんだって」「じゃあさぁ――」と何かを言っていたが思い出せないこと、そして、それを聞いたときに悲しさと怖さを覚え、それ以来彼女と疎遠になったことも話していました。
杏子はその話や、土居から渡された写真から、「もーちゃん」はかつて縁日で出会った「喋る金魚」について尋ねてきた着物の少女なのではないかと推測していました。
その時、カフェの外から大きな悲鳴が聞こえてきました。
急いで飛び出す杏子と藤森が目にしたのは、空飛ぶ金魚が人間を襲う、地獄絵図と化した渋谷。
3月3日、運命の日でした。
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第29話 手足
初たちが宇田川町に入る前日、薫は金魚の生態、特に「繁殖」について話していました。
メスがオスに腹部を突かれることで産卵し、そこに精子をかけることで卵から稚魚が発生すること。
そして、渋谷の金魚たちはこの孵化と成長、産卵のサイクルが非常に早いこと。
薫はこれを、金魚が突然変異を意図的に起こそうとしているのではと危惧していました。
突然変異によって人間が対応できなくなってしまう可能性があり、「もしこの先金魚に明らかな変化が出始めたらそれは人間に“王手”がかかっているという事」と述べていました。
奇しくも、その懸念は「手足」という変異体の出現により現実のものとなりつつありました。
戦車のある宇田川小学校へ向かう道中、初たちは「手足」に包囲されてしまい、近くにあった商業ビルに逃げ込みます。
小学校に近づくほど明らかに金魚は増えており、さらに「手足」による謎の攻撃、即ち人間の体から突如金魚が噴出して死亡する現象のために身動きが取れなくなってしまいました。
状況を打開するため、壬生は「ここで『手足』の“噴出死”を破って 道を拓く」と決意します。
何か考えがあるという壬生の先導で移動する一行ですが、大きな鞄を抱えた祇園という男は作戦に参加する気はないと騒ぎます。
怪我をしていなかったために数に入れられてしまっただけで、本当なら参加もしたくなかったようです。
そんな祇園と一行のやり取りに、楓香は「無駄話してるなら私一人で行くから」と苛立ちます。
一人じゃ無理だと止める初に、楓香はナイフを突きつけながら「私は“3月3日”からずっと一人で生き抜いてきた……!」「ずっとお友達やア……アリサと一緒だった軟弱者とは違うんだよ……!」と吐き捨てます。
ですが、大柄な外国人男性のアレックスが楓香の手を握り、優しくこれを宥めました。
自分の故郷ではよくハリケーンが起きて大きな被害が出ること、自身もそれで家族を亡くしたことを話し、だからこそ協力することが重要だと説きます。
そして初は再び楓香に「会ったばかりの僕や他の人を……信用できないのは良く分かるよ」「でも……全員の目的は一緒だし ここにいる皆は仲間だよ」「一緒にアリサに……会いに行こう」と語りかけます。
想定外の優しさに触れ、楓香は戸惑いながらも落ち着きを取り戻したようでした。
そしてついに、謎を解くために「手足」と壬生が対峙します。
壬生の分析では、「手足」についてわかっていることは大きく分けて3つ。
1つ目はシチュエーション。“噴出死”が起こるのは「手足」と出会って数秒から数十分後。
しかし直接触れられた初が生存していることから、何らかの条件を満たさないと発生しない。
2つ目は距離。
一定の距離が「手足」から空いていると発生しない。
3つ目は時間。壬生が車を爆破してすぐに「手足」を吹き飛ばしたときには“噴出死”は起きなかったので、「手足」が攻撃を仕掛けるには数秒から数十秒ほど時間がかかる。
壬生はその上で、これまで視界の悪い夜にしか「手足」と出会っていなかったことに注目し、そこら中からかき集めたライトで自分の周囲を照らさせていました。
自ら囮となり、敢えて「手足」に攻撃させてその正体を見極めようというのです。
命を懸けた博打に、戦闘狂の壬生は奮い立っている様子でした。
その時、金魚の群れが壬生に突進をしかけます。
しかし、その中に「手足」は一匹だけ。
どこかに消えた残りの「手足」を警戒するよう壬生は叫びます。
それと同時に、天井の通気口から大量の「手足」がなだれ込んで来ました。
標的は、物陰でライトを構えていた楓香。
楓香はこれを迎撃しようとしますが、いざというときに身体が竦み、ナイフを落としてしまいます。
その瞬間に、横から飛び出してきたアレックスが金魚を殴り飛ばして楓香を助けます。
そしてアレックスは金魚と格闘しながら、ライトで自分を照らすよう叫びます。
明かりの中で、小さな「手足」数匹が、大きな「手足」の身体を叩いているのを見た初は、以前に薫が話していたことを思い出し、何かを掴んでアレックスと楓香に駆け寄ります。
ライトを構えていた婦警の烏丸は、光の中に黒い蒸気のようなものが立ち込め、初たちに襲い掛かるのを目にしました。
そして楓香が見たその黒い蒸気の正体は、米粒よりも小さな金魚の群れだったのです。
悲鳴を上げ、極小の金魚を振り払おうとする楓香でしたが、そのとき自分の顔がビニール袋で覆われていることにかが付きます。
それは、初が咄嗟に被せたものでした。
初は薫の話から、「手足」による“噴出死”の正体を、「オスがメスに産卵を促し、極小の金魚を生んで口や鼻から入り込ませ、体内で成長させている」のだと見破ったのです。
そして壬生が閃光手榴弾で金魚を無力化し、その隙に初はメスの「手足」の心臓をナイフで貫くのでした。
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第30話 観月楓香①
観月楓香は、両親を事故で亡くし、親戚夫婦に引き取られた少女でした。
その家では楓香の養育費を巡って口論が絶えず、学校では「親がいない」ことを理由にいじめられ、教師も事情を酌もうとはしてくれません。
楓香はいつでも一人でいることを望むようになりますが、ある日道端で一枚のチラシを受け取ります。
駆け出しのアイドルによるライブの告知で、特にすることもなかった楓香は何となくそのライブを見に行きます。
するとライブ後、あの時チラシをくれた本人が楓香に駆け寄り、来てくれたことへの感謝を述べます。
本当に自分のことを覚えていて待っていたのだと、楓香は衝撃を受けました。
これが、碓氷アリサとの出会いでした。
そして、ある日楓香が手作りのシュシュをアリサにプレゼントすると、アリサは「アイドル活動の時には必ず着ける」と言います。
流石にこの言葉は信じていなかった楓香でしたが、雑誌でもテレビでも必ずそのシュシュを身に着けているアリサを見て、「自分に嘘をつかない人」に出会えたことに感動するのでした。
場面は渋谷に戻り、初と壬生によって辺りの「手足」は皆倒されていました。
「手足」は傷を負ってもすぐに治癒するはず、と困惑する烏丸に、壬生は「コイツらは『代謝が異常に早い金魚』なんです」と説明します。
傷の治癒から孵化・成長までが異常に早く、そのため寿命も短くなるため、以前「手足」が突然全滅したのも急激な老化と考えられました。
また、だからこそ代謝も何も関係なくなるよう、一撃で心臓を狙ったのでした。
この異常な速度の代謝を、初は「突然変異種を生み出すため、サイクルを早めようとしている」と危惧します。
改めて、薫の持つ「切り札」を完成させるためにも宇田川町を出ようと考えたその時、壁を突き破って巨大な金魚が顔を覗かせました。
それは、人間の髪を生やした、全く新しいタイプの金魚でした。
一同は逃げ出しますが、楓香を庇って初は負傷してしまいます。
何故そこまでするのかと聞く楓香に、初は言います。
「……僕ら二人とも……!“アリサの友達同士”だろ……!?」
「『一緒に会いに行こう』って 言ったじゃないか……!」
髪のある金魚は「手足」同様に口から人間の手を伸ばし、初たちを追います。
追いつかれる、というその時に、吹き飛ばされたと思われていた壬生が現れ、烏丸に全員を連れて先に逃げるよう言います。
一人で残ろうとする壬生を初は止めますが、「やっと歯ごたえありそうな奴が出て来て エンジンかかって来たんだ」「市民を守りながらじゃ本気を出せないんだよ」と壬生は返します。
それを受けて、初たちは出口に向かい走り出しました。
一同が逃げおおせた後、壬生は髪の生えた金魚と対峙しながら、その口から伸びた手に着目していました。
ゴツゴツした男性の手でも、しなやかな女性の手でも、年季の入った老人の手でもない。
「手足」の金魚から生えているのは、いずれも小さな子供のもの。
「それ誰の?」
「っていうかおまえら誰だ?」
壬生が問いかけると、髪の金魚は呟きます。
「……ぼ 僕は」
「私は……?俺は……?ワシは……?」
「だ だだだだ」
「誰だっけ?」
金魚の目からは、涙のようなものが溢れていました。
一方、初たちは目的地の宇田川北小学校まで300mのところまで来ていました。
全員ビニール袋を被り、最後の直線を駆け抜ける作戦です。
異常に成長が早い「手足」は、その分大量に栄養も必要になるため、人間に寄生できなければすぐに死んでしまうと初は睨んでいました。
その読み通り、人間に追いつけなかった極小金魚は次々に墜落していきます。
全員が力を合わせる様子に、楓香は「どうして他人なのに」とずっと疑問を抱いていました。
アリサのライブのために渋谷に来た3月3日から、色んな人間に見捨てられ、邪険にされ、アリサだけを頼りに一人で生きてきた楓香にとって、初たちは今までにない存在でした。
そして、アリサがかつて言っていたことを思い出します。
「世の中にはいい人もいっぱいいるわよ!」
「きっとこれから 沢山出会うわ」
今まで蓋をしてきた思いが溢れ、本当は一人ぼっちは嫌だと、歳相応の少女として涙を零しました。
その時、ついに傷の具合から限界を迎えた初が倒れてしまいます。
楓香は初に駆け寄り、早く逃げろと言う初に対し叫びます。
「助けられるばっかりなんて!私のプライドが許さないんだよ!……私だって……」
「私だって 仲間なんだろぉ!」
次の瞬間、辺りの金魚が銃弾に貫かれて次々に倒れていきます。
「絶対学校で……会えると思ってたよ……」
銃弾の飛んできた、小学校の方を見つめる初と楓香。
「ええ!待ちくたびれちゃったわ!」
そこには自衛隊の銃を構えたアリサと、多くの生存者たちがいたのでした。
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第31話 観月楓香②
ずっと願っていたアリサとの再会に、楓香は涙を流して駆け寄ります。
アリサは楓香が渋谷にいることに驚きますが、自分のライブのために来てくれていたと知り、楓香を優しく抱きしめました。
初も、美桜や薫らと無事に再会を果たします。
すると突然、金魚たちが突如として奇声を発しながら渋谷の各地で暴れ始めました。
アリサによると、少し前から宇田川町全体の金魚に奇妙な傾向が見られるため、一刻も早く脱出すべきだといいます。
一同は自衛隊が置いていった戦車のある、グラウンドへ向かって走ります。
徐々に学校中が金魚に包囲されていくなか、とうとう戦車にたどり着いた初たちでしたが、既に乗り込んでいた別の生存者が「操作方法がわからない」と言います。
初が仲間に自衛官がいることを皆に告げ、彼が来るまで持ちこたえようと呼びかけたその時、壬生その人が丁度学校に到着します。
戦車の操縦席に座りながら、髪の生えた巨大金魚について「そこそこ楽しめましたかね」と事も無げに語る壬生。その金魚は、炎に包まれて絶命していました。
戦車を動かせる人間が来たことで、ついに生存者たちは宇田川町を脱出することにします。
戦車に乗り込みながら、楓香は初の顔を見ずに「ありがとな」と一言呟きます。
不器用な少女が見せた、精一杯の感謝の気持ちでした。
街を走り抜けながら、壬生の指示により初は機関銃、美桜と薫は戦車砲で担当することになります。
その間にも、生やした手足で身体を掻き毟ったり、仲間の死体を食い破ったりと、金魚の異常行動は極まっていきます。
そして街を抜けようとするアリサに、初は街の南側に仲間を置いてきたこと、助けに戻ると約束したことを告げます。
アリサは「それを早く言いなさいよ!」と快諾。
そのまま西大寺たち待機組を助け出します。
宇田川町の出口が近づくと、そこには初たちを阻むかのように金魚の群れが壁となっていました。
主砲を撃って突破しようとする壬生ですが、戦車の後方からは再び髪のある金魚が迫っていました。
そして、口から伸ばした手で戦車を掴み、無理矢理止めようとしてきます。
これを機関銃で引きはがそうとする初の脇腹に、中型の金魚が食いつきます。
アリサはその光景に絶叫しますが、初はこの金魚にナイフを突き立てて倒し、力強く吼えます。
「止まれ……ないんだよ……!」
「皆で……日常に戻るんだ……!たとえ……金魚達の正体が何であっても……!」
「人間は 負けないんだよぉぉ!」
渾身の機関銃で追いすがっていた金魚を蹴散らし、初はそのまま気を失ってしまいます。
戦車から投げ出されそうになった身体を、アリサがしっかりと掴みます。
そして主砲で金魚の壁を突破、生存者たちは宇田川町を脱出したのでした。
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第32話 幕引
無事金魚を退けて宇田川町を脱出した初でしたが、受けた傷は深く、意識混濁の状態にまでなっていました。
一旦、立体駐車場に隠れて応急処置をすることになりますが、折れた骨が内臓を傷付けているかなりの重傷で、心得のある壬生でも「どうにもならない」と言います。
泣きじゃくる美桜やアリサに何かを言おうにも上手く声が出せないまま、初の意識は闇の中に落ちていきました。
そのとき、初は不思議なものを見ます。
雪野杏子や弓岡知花ら、今まで犠牲になってきた人たちの姿です。
彼女たちは、初に呼びかけます。
「ここまで“皆で繋いできた人の輪”は決して無駄ではないわ……」
「その“人の繋がり”が力になる 今までも……これからも」
「きっとあなた達なら『最後の戦い』も乗り越えて 望む未来に辿り着けるわ」
「頑張って……!」
初が意識を取り戻すと、黒服の生存者・祇園によって治療が進められていました。
彼の正体は闇医者。今までずっと持ち歩いていた鞄の中身は医療器具だったのです。
こんな状況下で医者だと知られると面倒だということで、ずっと隠していたのでした。
祇園は「普段の客に比べたら仕事のうちにも入らない怪我」としながら、治療のために輸血が必要だと言います。
生存者たちは、こぞってこれに協力します。
全員の胸の内にあったのは、本当に困ったときに助けてくれた初への感謝。
まさしく、夢の中で杏子の言っていた「人の繋がり」の力でした。
そして2日後、何とか初は回復しました。
一人でどこかへ消えていった祇園を除き、残る生存者たち全員で代々木の八景大学病院へ向かうことになります。
その時、金魚の大群が現れますが、生存者たちを無視して飛んでいきます。
不審に思った一同が見つめていると、金魚の向かった先は、渋谷を覆う「金魚鉢」の縁。
なんと金魚達は、渋谷の外に出ようとしているのでした。
一方、初たちと別れた祇園は、美竹通り裏の自宅に向かっていました。
運よく金魚にも遭わず、17日ぶりの帰宅を果たそうとしたその時、室内に上がり込んでいた何者かに引きずり込まれます。
「久しぶりだな“腐れメガネ”……!」
「さぁ とっとと治療してもらおうか もちろん無料でな!」
それは、渋谷09以来消息を絶っていた「渋谷の貂」でした。
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第33話 幕開
何故か自宅に上がり込んでいた貂に、祇園は驚愕します。
おまけにその風貌は、左腕がなく全身傷だらけで生きているのが不思議なほど。
今まで貂に散々脅されてタダ働きさせられてきた祇園は、隙を突いて逃げ出しますが、家を出てすぐに「手足」の群れに見つかってしまいます。
貂は喰われそうになっていた祇園を助け、タダで治療することを無理矢理約束させます。
その時、一番大きな「手足」が黒いモヤを吐き出しました。“噴出死”を起こす極小金魚です。
パニックに陥る祇園ですが、一方の貂は全く動じません。
すると貂はスタンガンを取り出し、自分の身体に押し当てます。
自分で電気を流して、体内の金魚を殺すという滅茶苦茶な方法で貂は極小金魚を対策していたのです。
「ただの皆殺しじゃ もう済まねぇぞぉ!」
ボロボロの身体でありながら、大暴れしてあっという間に「手足」の群れを全滅させる貂。
その様子を目の当たりにし、祇園は思い出します。
「この渋谷には 人喰い金魚が現れる前から……」
「化物が棲んでるんだった……――」
祇園にもスタンガンを押し当てて体内の金魚を駆除した貂ですが、その頭上を金魚の大群が飛び去って行きます。
同じ光景を、地下鉄で別れたデンキヤ達や東寺秋・春姉弟、そして初たちら渋谷中にいる生存者が目撃します。
その金魚は金魚鉢の縁に取り付き、外側へ這い出ようとしたところで、自衛隊の武装ヘリによって撃墜されます。
それを受けて、集まっていた金魚達は各々別の方向へ散っていきました。
初めての光景に混乱する一同に、壬生は「3月3日から渋谷の金魚は徐々に外に出ようとしている」ことを明かします。
最初の頃は金魚鉢の真ん中辺りまでしか飛べなかったが、日に日に高く飛べる個体が出てきたこと、ついに今回縁にまで到達する個体が出てきたこと。
そして、恐らく1週間程度で大量の金魚が「鉢」を乗り越えるだろうことを告げます。
壬生自身も、打開策を見つけるためにやって来た自衛隊唯一の生き残りであり、明確な解決策は何も見つかっていない状態でした。
渋谷の外に出られれば元の生活に戻れると信じていた生存者たちはショックを受け、一様に押し黙ってしまいます。
重苦しい空気の中、初は夢で出会った犠牲者たちの言葉がよぎります。
「きっとあなた達なら “最後の戦い”も乗り越えて」
「望む未来に辿り着けるわ」
そして初は決意し、皆に言います。
「金魚が外に出る前に!渋谷にいる僕達が――」
「この渋谷の惨劇を終わらせる!」
初の言葉に、生存者たちの心に再び火が灯ります。
帰るべき場所を、大切な人を守るために戦うという意志を胸に、生存者は立ち上がりました。
デンキヤ組に東寺姉弟、そして祇園を連れた貂もまた、それぞれ代々木に向かうのでした。
壬生の提案で、初たちは代々木までの通り道にある原宿に一度立ち寄ることになります。
壬生によれば、そこは自衛隊も本来調べる予定だった場所。
地面に大穴が開いており、3月3日に初めて金魚が湧き出した場所だと言うのです。
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