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『ガンニバル』5巻 ネタバレ紹介!
第39話
「恵介、洋介…よう聞け。昨晩の祭りの最中、ぬしらの母親は姿を消した」
「あの女のことはもう忘れぇ。これよりは裏切り者のゴミ以下やと認識しろ」
まだ幼い二人にそう語り掛ける後藤銀。
洋介はその言葉を受け入れることが出来ません。
そんな洋介に銀はキセルを投げつけ、恵介は洋介をかばいます。
「弟をかばうか恵介…ええ心がけや」
「ただ…覚悟あってのことやろうのう」
そうして恵介は銀からのきつい躾を受けます。
その光景に涙を流す洋介。
そんな洋介を銀は優しく抱きしめてこう言います。
「己を怖がるな。本当は誰よりもぬしらのことを考えとると知っとるはずや。ぬしら兄弟は母親とは違う。全うな人間になってほしいだけなんや」
そう言って銀は洋介に一枚の頭巾を渡します。
後藤家では葬式や祭りのときにその頭巾をかぶります。
それによって、自分が何者でもなく家のために生きる、ということを証明するのです。
そしてこれからは家を…銀だけを愛するよう洋介に言います。
それが出来ればお前は立派な後藤家の一員である、とも。
★
「行くぞ」
洋介は頭巾を取り、洞窟の牢屋から子供を連れ出すのでした。
★
大悟と署長は署に戻ります。
これまで大悟は供花村の出身である署長のことをあまり信用できていませんでしたが、署長が何かを自分に伝えようとしていることを感じ取ります。
会議室に集められた五人のメンバー。
彼らは供花村とは関わりのない、県警本部の刑事たちで、今は大悟と同じように後藤家を探っています。
狩野が殺されたのは、「供花村の人間が人を喰っている」という可能性を探っていたから。
大悟と同じように、署長もまたそのように考えていたのです。
そして署長は狩野が殺されてしまった責任の一端を感じていたのでした。
集められた捜査メンバーは解剖医の中村一の存在を把握していました。
自首する直前の後藤睦夫が大悟の携帯を使って中村医師に接触しており、これから自首しようという人間が隠そうとした事実の裏には何かがあると考えて間違いない。
狩野の遺体にはいくつかの歯形が残されており、そのすべてが同一人物のものであると判断されていることからも、狩野が誰かに喰われたと考えることは出来る。
捜査メンバーはそのように考えていました。
それを聞いた大悟はもう一つの、後藤家が隠そうとしている事実について言及します。
大悟の額に傷をつけた、“あの人”と呼ばれる男。
2mを優に超える大男で人間をおもちゃのように投げ飛ばし、かつ後藤家にとって絶対的な存在。
この事件の核心が恐らくはその男にあるであろうことを、大悟は捜査メンバーたちに話すのでした。
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40話
「“あの人”と呼ばれる男?」
捜査メンバーは怪訝な表情を浮かべます。
供花村の出身である署長もそれについては聞いたことがないと言いますが、後藤家の葬列でいつも先頭に居たのは2mを超える大男出会ったことは覚えていると言います。
それがもう五十年ほど前の話。
生きていればかなりの高齢であろうということも付け加えます。
しかし当主直系の血筋に該当する人物はいないようでした。
後藤家にとって血は絶対的なもので在り、直系以外の誰かであるということは考えられないようでした。
現時点で後藤銀の跡を継ぎ、次の当主になるのは後藤恵介。
本来次の当主になるはずだったのは銀の長女の後藤藍でした。
しかし彼女は18年前に失踪。
署長は後藤藍も殺されているかもしれないと考え、彼女の行方を追った方がいいと言います。
大悟はもう一人、あの「顔を喰われた男」を育てた女性が供花村から失踪しているはずだと考えますが、事実として後藤藍以外に失踪者、それどころか転出者もいないということでした。
だとすればその後藤藍が、顔を喰われた男を救ったのかもしれない。
大悟はそう考えます。
★
洞窟の牢屋。
「行くぞ」
子供を助け出す決意を固めた洋介ですが、どうやってここを出ればいいのかはわかりませんでした。
出口には見張りが付き、得意の銃もない。
それでも
「やらないかんのや」
洋介はそう声に出してつぶやきます。
「何をや、洋介」
「おまえか、密告したんは」
岩男が洋介の前に現れます。
「駐在とか…熊ん時からしゃべってもないわ」
洋介はそう答えますが岩男は
「じゃあ狩野の時はどうや」
洋介が狩野と親しくしていたこと。
狩野が子供が監禁されているこの場所までたどり着いたのは洋介が手引きしていたからではないのか?
「それがはっきりするまでここから一歩も出さんぞ洋介」
岩男は洋介にそう言い放ちます。
★
大悟は岩男に、後藤家の中の誰かを疑うよう故戸部で誘導していました。
疑念を持った岩男が真っ先に向かうのはおそらく一番疑わしい人間の所か、裏切られていた場合、一番厄介な人間がいる場所。
つまり子供達が監禁されてる場所。
そして阿川がそれをついに見つけます。
そのことはメールで大悟に知らされ、大悟はすぐにその場所へと向かうのでした。
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41話
顔を洗い、頭を冷やす大悟。
いつものように無鉄砲に飛び出し、子供たちが監禁されている場所へ向かおうとしたのを署長に引き留められたのでした。
「君はなぜそんなにまで危険を冒して事件を追うんだろうね」
署長は大悟にそう問いかけます。
「なんで?決まってるでしょう。俺はただ子供を…」
そこまで答えた大悟を署長は「そうだね」と遮り、会議室へ戻ります。
会議室に戻ると署長は子供たちの救出に向けた本格的な作戦の説明を始めます。
子供たちを救出できるとすれば明日の早朝。
例年通りなら後藤家も含めた供花村中の人間は一度来乃神神社に集まります。
神社から子供たちが監禁されているであろう場所までは距離があり、気づかれたとしても対処は遅れます。
その隙に子供達を奪還する、という作戦でした。
後藤家には猟銃を主事するものが複数檻、出来ることならSITに出動してほしいが証拠が少なすぎるという署長に対し捜査メンバーの一人、金丸豪はSITへの説得をしてみると言います。
残りの捜査メンバーである神山と椎名は引き続き後藤家の調査を。
菊田と千堂は失踪中の後藤藍を追う。
そして阿川は金丸の部隊に加わり、子供たちを奪還します。
「いいの?それで」
「君はここで降りて家族の元に帰ることも出来るはずだよ」
「それでもまだ、君は事件を追うのかい?」
「後は僕らに任せて、二人の元に帰ってあげなさい」
「君は役目を果たしたんだ阿川くん」
署長は大悟にそう言います。
考える大悟。
そして宇多田からの電話が入ります。
「何とか生き延びましたよ。でも僕が出来るのはここまでです」
深い感謝を示す大悟。
なぜここまでしてくれたのか?
大悟が尋ねるとその答えはこうでした。
「興味本位、記事の為ですよ。ただ…それだけじゃ命は賭けられなかったでしょうね。案外純粋に子供を助けたかっただけかもしれませんね僕は」
すべてが解決した後での再会を誓い、電話は終わります。
自分はどうなのか?
大悟は自分に問いかけます。
そして・・・
★
「俺も行かせてください。こんなとこで降りれるかよ」
大悟は決意を固めます。
「本当にいいんだね?最悪殺し合いになるかもしれないよ?」
署長は大悟にそう忠告します。
大悟の答えます。
「元より覚悟の上です。俺はアイツらが、子供を監禁してるような奴らが・・・」
「許せねぇんだよ」
42話
「かっかっか!あの阿川ゆうのは実におもろいですなぁ」
金丸は豪快に笑い、阿川を気に入ります。
「危ういとも…思うけどね」
そう答える署長に対し金丸は「命張れるモンは道を切り拓くいうことですわ」と返します。
当の大悟は自らの志願により、子供の救出に動くまでは現在保護している解剖医の中村医師の警護にあたることになっていました。
それには、自らの失態で巻き込んでしまったという負い目があるのかもしれませんでした。
そして署長は供花村の最年長である自身の祖父から後藤家と“あの人”について直接調べてみると言います。
それらを受け、金丸は言います。
「何せ阿川のおかげで動き出しましたなぁ。子供を救い出せたら、大規模に操作も動き出す。したら後藤家やら何やら、事件に関わった人間は皆終いじゃ」
★
「お久しぶりです…俺のせいで…」
ふたたび対面する大悟と中村医師。
自らの失態で巻き込んでしまったことを詫びる大悟に対し「アナタのソレもやられたんでしょう、同じじゃないですか」
さらにそのことから「責めるつもりはありません、むしろ信用できる。狩野さんのように」と続けます。
そして、狩野が殺害される以前に何を調べていたのか?そのことについてまずは信用できる大悟に話したかったと言います。
★
署長は供花村の最年長である祖父の元を訪れます。
「後藤家?あいつらと関わるなと言ってきたじゃろ」
そう言う祖父に対し署長は「そこなんだ。なぜ関わるなと言い始めたのか、そのきっかけが知りたい」と答えます。
祖父は答えます。
「昔、人を喰っとるという噂があってのう」
昔は地主として権力を持っていた後藤家を恨むものがいて、そういったものが言い始めたのだろうと祖父は続けます。
そしてどこから知られたか、噂をした人間は皆痛めつけられたと言います。
そしていつからか噂をするものはいなくなり、“畏れ”だけが残ったのだと言います。
それは署長の世代には伝わっていない話でした。
祖父はさらに、
「わしらの頃は、あの家の人間は病に冒されてると聞かされとったぞ」と続けます。
「その病気になったものは、ずっと笑っとるらしいわ」
「たしかその病気は、こなして呼ばれとったのう」
「狂い病」
★
狩野は中村医師の元を訪れていました。
後藤銀を連れて。
その時の後藤銀の病状は思わしくないものだったと中村医師はいいます。
すでに歩行は難しく、手足は震えて、病的に笑っていました。
「笑っていたと思った次の瞬間暴れだしました。ですが筋力も衰えているので容易に制すことは出来た」
そして後藤銀の病状がある病気と非常に類似していることが分かったと言います。
それはクール―病。
パプアニューギニアに実在したフォレ族の間で流行していた風土病で、その原因はその部族に会った遺体を食すことで死者を弔うという食葬文化にあったとされています。
「僕が何を言いたいのか…わかりますよね」
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43話
供花村ではそれは「狂い病」と呼ばれていました。
狩野が後藤家と揉め始めたのは、狩野が銀を病院に連れてきたことが発端でした。
それまでの狩野と後藤家、そっして供花村の人々の関係は良好でした。
しかし銀の病状を見かねた狩野が隠れて銀を病院へと連れ出してから、狩野に対する村八分が始まりました。
病気のことを知り、疑念を抱いた狩野はますます捜査にのめり込んだ。
そして狩野は殺され、後藤銀は死んだ。
そもそも後藤銀はホントにクマに殺されたのか?
後藤銀も、誰かに喰われた?
ではそれはいったい誰なのか?
大悟の中に次々と疑念が沸き上がります。
★
「最後に一つだけ・・」
署長は祖父に尋ねます。
「後藤家に居るはずの、“あの人”って誰だかわかる?」
そして署長はその人物が当主筋の誰かであり、高齢で戸籍がない人物であることを付け加えます。
「あ~」
「銀は戦争中、何処オルカわからん時があったのう。何をしとったかだれも知らんが、後藤の土地のどっか、匿われとるゆう噂があったわ」
「そん時にでも生まれた銀の子ちゃうか」
祖父はそのように話すのでした。
★
古いカルテには、過去に似た病状の患者が供花村に居たことが記されていました。
その患者にも戸籍がなく、戦後すぐの1951年。
当時6歳の少年だったと言います。
それは“あの人”の推定年齢にも一致します。
中村医師は「クール―病は死に至る病であり、根本的な治療はなく、今生きている可能性は0だ」と言います。
しかし「”狂い病”がクール―病とは違った形で進歩していたとしたら、どういう経過をたどっていくのか、本当のところはまだ誰にも分からない」
中村医師はそう付け加えるのでした。
44話
顔を喰われた男はベッドの上で目を覚まします。
「また嫌な夢を見たよ」
「僕を欲しがるように、がりがり、がりがりと。今でもあの音が耳にこびりちゅいて離れない」
あの頃感じていた恐怖。
そこから救ってくれたのが“母しゃん”でした。
★
後藤藍。
1964年、後藤銀・忠男の長女として生まれ、23歳で長男の恵介を、31歳の時洋介を出産。
そしてその3年後に失踪。
その後の足取りはわかっていません。
★
大悟の電話が鳴ります。
相手はあの“顔を喰われた男”でした。
「待ってたぜ。状況は変わった。出てきて知ってること全て話してくれ」
大悟だけでなく、県警本部も動いていること。
もう隠れて動く必要はないこと。
大悟は男にそう伝えます。
「証明出来ましゅか」
男はそう大悟に返します。
それに対して大悟は「信じてくれ」と答える以外にありませんでした。
安全は必ず保障するから協力してくれ。
大悟は懇願します。
今は男からの情報に全てがかかっているのでした。
大悟は自分がすでに「子供が監禁されているであろう場所を見つけた」ことを伝え、男の育ての親が後藤藍なのではないかという考えを話します。
「残念ながら僕はホントに、何も聞かされていないんです」
男はそう答え、自分が慎重になっているのは決して自分の為でなく、「母が生きているから」であることを大悟に告白します。
母が自分に名前をくれたこと。
あの場所から救い上げ、自分が人間だということを教えてくれたこと。
血のつながりが何だというのか?
自分にとって他の誰より大切な人であり、母に何かあれば自分には耐えられない。
けれども、母を守ると同時にあの日の自分も守ってあげたいのだと、男は大悟に言うのでした。
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45話
★
裏切り者は誰なのか?
そもそも大悟が持っている情報は何処から来たものなのか?
岩男は怪しいのは洋介だと考えているようですが、供花村を失踪した恵介の母親にも疑いがあると言います。
「俺を疑っとると言いたいんんか?」
恵介は怒りをあらわにします。
★
「話があるんだ、母しゃん」
「いや…後藤藍…しゃん」
顔を喰われた男、母によって京介と名付けられたその男は母にそう語り掛けます。
「すべて話してほしいんだ。後藤藍としてのしょの過去を」
警察に信用できる人がいるから、その人に全てを話してほしいと、京介はそう母に頼みます。
「母しゃんは僕を救ってくれたじゃないか」
京介はそう母に対して訴えます。
「あんた何もわかってない、私はそんな人間やない」
そう返す母に京介は「かばおうとしてるのか?本当の子供たちを」と投げかけますが、母の答えはこうでした。
「かばう?その逆よ」
「かばわれてんのはアタシ」
「たった今、この瞬間でさえも」
46話
「こっからおまえはコレをかぶれ、恵介」
恵介は銀から頭巾を渡され、それを被ります。
銀は檻の中の子供たちを前に「あの女がおらんようなった今、これからはおまえがコイツらの面倒をみる」
銀は続けます。
「うぬにはコレが、人間に見えるか?」
「俺には…ただの家畜に見えるわ」
銀はまだ少年の恵介にそう言い放つのでした。
★
顔を喰われた男への電話は繋がりません。
後藤藍を説得してくれるいう話だったのですが。
★
祭りの前日。
前夜祭に浮かれる供花村の人々。
そんな喧騒をよそに恵介と宗近は二人きりで話していました。
「二人で話がしたかったんや」
恵介を呼び出したのは宗近でした。
「俺達二人で祭りを終わらせんか?」
「知っとるぞ祭りの夜、後藤家で何が行われてるか」
「俺達が協力すれば、子供たちを解放できるはずだ」
宗近は恵介にそう訴えます。
「駐在に協力しとったんはおまえか?」
恵介は宗近に詰め寄りますが、この話は聞かなかったことにすると言って話を終わらせようとします。
「待てよ恵介」
宗近は猟銃を恵介に向け、ここで話をつけるよう迫ります。
恵介は一瞬で宗近を制圧しますが、それでも宗近は訴えます。
「なんで子供達を犠牲にし続けられるんだ?伝統か?家か?血か?」
「恵介、それは呪いやぞ」
しかし恵介にそれらの言葉は届きません。
「それでも俺は、やらないかんのじゃ」
恵介の意思もまた、揺らぐことはないのでした。
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47話
「この村は狂っとる…そう思わんか恵介。いつか大人になったら、俺達の手で変えていこう」
まだ少年だった頃の宗近は同じくまだ少年の恵介にそう語り掛けます。
表面だけを取り繕い、裏ではビクビクと探り合う村の大人たち。
そして彼らが何か隠し事をしていることも宗近は気づいていました。
「気に入らんならお前が出ていけや」
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「嫌じゃ。それでも俺は生まれたこの村で生きていきたい。変わってほしいだけなんや」
「いつか好きな子が出来て子供も出来て、その子供のために村を良くしときたいんや」
宗近はそう答えます。
★
「くだらん」
過去を一蹴する恵介。
「この村は変わることはない。
その為にも、手ぇ打っていかんとのう」
村人たちを前に、恵介はそう言うのでした。
★
「一人でも行く…か。やっぱおまえ、狂っとるのう」
そう言う金丸に対し大悟は「止めても無駄ですよ」と答えます。
「そんな気あるかぁ、乗り込んでこい」
「おまえならやれる。おまえしかおらん」
金丸はそう言って大悟を後押しします。
署長からは大悟が勝手な行動をとらないよう見張っているように言われていましたが、金丸にそんな気はさらさらありませんでした。
金丸は命知らずな大悟のことを「最高だ」と言いますが、「…命は惜しいですよ。家族がいますから」
大悟はそう答えます。
ただ同時に焦りもありました。
後藤家の人間たちが、いつ警察が動いていることに気づくか分かりません。
むしろすでに気づいていると考えた方が良さそうです。
そうであった場合、彼らは真っ先に証拠を消そうとするはず。
その証拠とはつまり「監禁されている子供たち」です。
「そうなる前に子供がホンマにおると、確信できるモン掴んでこい。掴めれば、SITが動ける」
金丸は大悟にそう言うのでした。
★
「なんやおまえ震えて…さむいんか?」
子供の様子を見た洋介は「何か温いもん持ってきたるわ」と言って動き出し振り返ると、そこには恵介をはじめとする村の大人たちでした。
「…何の用や、兄ちゃん」
恵介はその問いに答えることなく、洋介と子供を睨み続けます。
★
金丸の元へ署長が戻ります。
「すんません、止められませんでしたわ」
金丸は大悟がひとり乗り込んでいったことを、どこか他人事のようにあっさりと署長に伝えます。
「そんなっ…なんで追わないんです!」
焦る署長に対して「どうです…この際阿川に任せてみるゆうのは。アイツなら一気に解決してくれるかもしれませんよ」
「ただ万が一殺されてもうたとしたら、いよいよ警察も踏み込まざるをえんでしょう」
金丸はそう答えるのでした。
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